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夜国 終わりに向けて

 私がアーヴェントルク皇王家にまずお願いしたのは、『精霊の間』に入れて舞を捧げることを許して欲しい、ということ。

 アーヴェントルクの『精霊神』ナハトクルム様と約束したのだ。

 封印を解きに行くと。


「それは、賠償にはならぬな。むしろこちらからお願いしたい」


 皇帝陛下はそう言って、許可を下さった。

 アーヴェントルクの神殿は、今、大! 人員入れ替え中なんだって。

 神官長をしていたのは皇帝陛下の庶子で、ヴェートリッヒ様とアンヌティーレ様の異母兄弟。

 アンヌティーレ様に暗示のようなものをかけられて言いなりだったらしいけれど、今は正気に戻っているという。


「まあ、それでもアンヌティーレびいきではあるけれど。

『精霊の間』の片付けと清めを行わせておくよ」

「儀式の段取りその他はお任せする」

「ありがとうございます。

 アルケディウスや他国で行ったのと同じ手順でやらせて頂きたいと思います」


 実際のところ、清めや衣装や手順はそんなに意味がないと言っていた。

『精霊の間』で『聖なる乙女』が踊って力を捧げる。

 それが重要。

 後は異空間に呼び出されて、異空間に行って封印を解くだけだ。


「僕も立ち会ってもいい?」


 そう私達に問いかけてきたのは、ヴェートリッヒ皇子だ。


「僕達の祖『七精霊』が実在しておられるなら、ぜひお会いしたいんだ」


 昨日の『降臨』の場にもいたし、興味があるって言ってたもんね。


「儀式の立ち合いは大丈夫だと思います。

『精霊神』様の元に行き、ご尊顔を拝する事は難しいと思いますが、儀式を見ているだけなら」


 異空間に入れて貰えるか、貰えないかは『精霊神』様のご判断なので、何とも言えないけれど。


「解った。それでいいよ。

 君の奉納の舞をもう一度見たいというのもあるし」

「私も興味はあるが、流石に無理だろう。

 ヴェートリッヒ。

 しっかりと儀式を取り仕切り、神殿の者から姫君を守るように。

 儀式が成功したら何があったか、しっかりと報告すること。良いな」

「かしこまりました」


 皇帝陛下の命令に頭を下げる皇子。

 お二人の関係も、少しは改善したのかな?

 だと、いいけれど。


『精霊神』復活の儀式は明日、行われることになった。

 アーヴェントルク最終日の晩餐会は、一日後ろにずれる。

 もう晩餐会のメニューはできているし、準備も終わってるから問題ない。


「残りのご要望は?」

「当面、今後も継続していくアーヴェントルクとの貿易を優遇して頂く事。

 それから、子どもの保護、です」

「子どもの……保護? とな?」

「はい。奴隷扱いされている子ども達をお願いしたく存じます。

 私は今は皇女として遇されておりますが、一時期誘拐され、奴隷扱いされてたのです。

 あの時の苦しみを覚えているが故、同じ待遇の子ども達を少しでも救いたいと思っています」


 私も諸国巡りの間に、色々と学習した。

 子どもが邪魔もの扱いされる世界で、不遇の子ども達の保護を求めるのに、ただ


「子どもは大事な『星』の宝です!

 護って下さい!」


 と力説しても、共感はされにくい。

 でも、


「自分が元奴隷で辛い思いをしたから、同じ立場の子ども達を助けたい」


 と言えば、なるほど、と思って貰えるようだ。

 ついでに、私みたいなのを拾えるかも、と思って貰えればシメたもの。


「なるほど、アンヌティーレにさせたいというのはそれかい?」

「はい。法律上は罪にならないのは存じていますが、アンヌティーレ様はどうやら多くの子ども達を殺めてきておいでのようです。

『精霊神』様が一番お怒りであったのもそこであったので、アンヌティーレ様に、罪滅ぼし、ではないですが――

 児童保護を担って頂けないかな、と」


 アーヴェントルクの皇女、アンヌティーレ様は、私の誘拐を実行に移した結果、全てを失った。

 己の拠り所だった『聖なる乙女』も、アーヴェントルク第一の女性の地位も、自分を(間違っていたとはいえ)大切にしてくれたお母さんも。全部失った。


「今、アンヌティーレ様はどうなさっておいでなのですか?」

「宮からの外出禁止、監禁状態だ。

 一時は大暴れだったが、今は落ち着いているらしい。

『精霊神』が罰を下され、不老不死が剥奪された以上、我々が更なる罰を与える必要も無いだろうと考えている。

 無論、被害者である姫君が厳罰をお望みならそうするが?」

「いいえ、望みません。ただ、そういうことなら何か『聖なる乙女』に代わる役割を与えられた方が良いかと存じます」


 でないと、絶望の果てに自ら死を選んだりしそうで怖い。

 そんなことになったら、優しい『精霊神』様は嘆かれるだろう。


「解った。その件に関しても、姫君のお望みどおりに」

「ありがとうございます」


 とりあえず、明日の儀式を無事終える事に専念。

 他の事はその後、改めて、ということで話を終えた。


「あ、そうだ。皇子のお話、というのはいつ時間を取ればいいです?」


 皇帝陛下との謁見の後、私はヴェートリッヒ皇子に聞いてみた。

 確か、謝りたい事と話したい事があるとおっしゃっていたから。

 でも皇子は首を横に振って微笑する。


「明日以降でいいよ。

 僕も、ちょっとやりたいことがあってね」

「解りました」

「明日は世話になる。

 エスコート役は君の少年騎士かい?」

「多分そうなると思います」

「そうか。君の勇者によろしく。

 アーヴェントルクでの滞在もあと少しだから、お互いに悔いを残さないようにしよう」

「はい。頑張ります」


 儀式への激励として受け取ったこの言葉。

 皇子がどんな思いを込めて言ったのか、この時の私は理解してはいなかった。



 その日の夜。


「……久しぶりだな。いつから気が付いてたんだ?

 ヴェートリッヒ」

「最初からにきまっているだろう?

 アルフィリーガ」


 五〇〇年ぶりの邂逅も、気づく事無く。

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