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地国 野菜パーティと新しい仕事

 翌日の調理実習の昼餐会。

 第一王子スーダイ様の要請を聞いてか、本当に大王陛下がお出ましになることになった。

 第二王子グアン様もいらっしゃるという。


 三人がお揃いになった最初の昼餐会は大騒ぎになってしまったので、今回はスーダイ様の名誉回復の為に、スーダイ様が発見して下さった新しい野菜をメインにしての料理にしてみようと思った。


 前菜はカボチャと鶏ひき肉のそぼろあんかけ。

 スープはシンプルなお吸い物風味だけれど、サヤインゲンとキャロの花形人参で見栄え良くしてみた。

 メインは大根と鶏肉のステーキ。

 肉の油をダイコンに染み込ませると、ダイコンの水気と合ってとても美味しい。

 葱とホワイトソースのグラタン。ベーコンを使うとグッとコクが出る。

 エルディランドは牛乳が入手しやすくて助かる。

 ご飯はグリーンピースの混ぜご飯で、デザートは梅ジャムと米粉のシフォンケーキにした。

 梅干しは作るのに時間がかかるけれど、こちらの方が簡単で万人向けだと思う。

 完熟した赤みの濃い梅を一晩凍らせておくのがポイント。

 ジャムを煮込む時間を短縮できる。


 料理が運び込まれる度、卓上の空気が少しずつ華やいでいくのが解る。

 野菜中心の献立は、この国の上流の常識からすれば少し珍しい筈だ。

 けれど香りが立てば、それだけで期待は膨らむ。


「これは素晴らしい!」

「野菜など肉の添え物だと思っていましたが、それだけで十分な主役となりうるのですな?」

「父上、これはどれも私が領地で見つけて来た新しい食材なのです!」


 胸を張るスーダイ王子。

 ちょっと調子に乗ってるな、とは思うけど。今日の所は持ち上げておこう。 


「はい。今回の料理は野菜を中心にしてみました。

 どれもスーダイ王子が森や山を調べ、見つけ出して下さったものです。味付けには醤油と酒を使わせて頂いています。

 二人の王子様の合作、共同作業でできたとも言える料理です」

「変な言い方をするな! グアンと力を合わせた覚えなど無い」

「口を慎みなさい。姫君は褒めて下さっているのです。

 お前達二人の力があれば、これほどの美味が作られるのだ、と」


 ふてくされるスーダイ様を大王陛下は諌めるけれど、その眼差しは優しい。

 叱る声色の奥に、期待と安堵が混じっているようにも見えた。


「そう言えば、昨年姫君が作られた食品図録にも色々と野菜類が載っていましたね。

 小麦、パータト、キャロ、シャロなどは、こちらでも少しずつ見直されております」

「覚えていて下さったのでしたら光栄です。

 国に戻りましたら新しいものを作りたいと考えています」


 グアン様は印刷製紙の責任者だから、去年私が大貴族向けに作った食品納入基準と食品図録を覚えていて下さったようだ。

 プラーミァの香辛料にエルディランドの野菜、新発見がたくさんあったし、キノコなどは正し言い見分け方を覚えないと危険が多い。

 海産物編もできれば作りたい。


「しかし、見直しましたよ。スーダイ。

 姫君に無礼をちゃんと謝罪し、国の役に立つ新たな発見を成し遂げたとは……」

「とても感謝しております。スーダイ様の恵みを見出す目は確かですね」


 大王陛下に久しぶりに褒められて、照れた笑みを浮かべるスーダイ様を、私は畳みかけるようにさらに持ち上げる。

 承認欲求を満たしてあげるのは大事。


 スーダイ様が拗ねてダメ王子してたのは、グアン様などカイトさんの一族の有能さに押されて仕事が奪われたからだと思う。

 でも、グアン様やカイトさん達は超有能なSSRカードかもしれないけれど、スーダイ様だって絶対に大事に育てればハマって強くなるSR以上のカードだし、どんな子どもも人も育て方と才能と、それを伸ばす環境次第で変わるのだから。


「ぜひ叶いますなら今後エルディランドには野菜類の栽培などをお願いしたく。

 ネギ、サヤインゲン、ダイコンなどは難しいかと思いますが、カボチャ、ウメ、そしてもし思う通りであればなのですがサツマイモなどは保存が効くので、アルケディウスに輸出して頂きたいくらいです」


「本格的に物を調査して、他に生えている所は無いかなどを調べて、その後栽培をさせて、となると時間は多少かかるでしょうが……」

「構いません。『新しい食』に農業の復活は必須です。リアやソーハと合わせて、大地の恵みはエルディランドを必ず豊かにしてくれると存じます。

 いずれ安定したらでかまいませんが種や苗を分けて頂ければアルケディウスでも栽培を試みたいです」


 ふむ。

 と大王陛下は頷くとスーダイ王子を見た。


「スーダイ。

 農業関連を纏める気はありますか?」

「父上?」


「グアンには印刷業や関連などやるべき事が多くあります。

 リアやソーハの栽培加工をするグアンの一族を見本に、新しい『野菜類』の栽培、流通などを指揮することができるなら、任せますが?」

「……やります」


 逡巡の時間はごく僅か。スーダイ王子は顔を上げて、真っ直ぐな視線を大王様に向ける。


「グアンの一族を手本に、というのは癪ですが、民に仕事を与え、国を豊かにさせる為なら学んでみせます。

 そして必ずやエルディランドを世界に関する農業国にしてみせましょう!

 この国は私の国。グアンよりも私は絶対に上手くできますから!」

「だそうですが、良いですか。グアン?」

「……王子が我が一族の功績を奪うことなく、力を貸して下さるというのであれば異はございません。

 元より我らは、エルディランドの王家に仕える臣下にございますれば」


 グアン様も笑って頷いて下さった。

 第二王子と言われても最下級の子どもから引き上げられた人だ。

 自分が大王になって王族を蹴落とし成り代わろうとか考える方じゃない事は、ここ数日の言動や、一族を見れば解っている。

 

「ならば決まりですね。しっかりやりなさい。スーダイ。期待していますよ」

「必ずや、ご期待に添って見せます!」


 よし、やる気になった。

 なんだか目の色も変わっている感じがする。

 気持ちを入れ替えて、王子が頑張ってくれる気になればきっと成果は着いて来る。

 これならきっと大丈夫。


 

「大王陛下 そういう事情なので、明日一日、私も森の探索に行かせて頂く事はできないでしょうか?

 スーダイ様の才覚は信頼できるものですが、私もご同行させて頂き、新しい食材が無いか探したいのです」


 多分、小麦などのように野菜の残滓が残っているところは在ると思う。

 雑草扱いされている野菜類があったらぜひ、回収し生かしていきたい。


「構いません。

 ただ、近年エルディランドは魔性が出没することが少なくないので、護衛としてユンとその一団をお連れ下さい」

「私にも護衛はおりますし魔術師も連れていく予定なのでそんなに危険はないかと思いますが」

「姫君の護衛を信頼しない訳ではありませんが、第一王子とアルケディウスからお預かりしている皇女。

 そのどちらも傷つけさせるわけにはまいりませので」

「魔性が?」


 首を傾げる私に、ええ、と第二王子が大王様の言葉を受け継ぐように呟き、頷く。

 

「リアとソーハの畑を復活させてから少しずつ増えて、今年に入ってからは特に多いですね。

 人を襲う事は稀ですが、注意された方が良いでしょう」

「そう言えば、森から帰る時にも空に変なものが飛んでいた気がするな。

 まあ、エルディランドの騎士は基本優秀だ。プラーミァとだってそう力負けしない。

 魔性程度怖れるに足らんぞ」


 スーダイ様は胸を張るけれど……魔性が増えた為、畑などを守る為に、第二世代、つまりカイトさんに直接拾われた訳ではないユン君達の世代には騎士や戦士を目指す者が増えたというグアン様の話を聞くと、考えてしまう。

 

 この世界の魔性は精霊を喰うものなので、人間はほぼ襲われない。

 ただ、精霊を喰われると畑の実りは失われ、枯れなくても味などが損なわれる。

 喰った魔性を倒せば、精霊は復活し、ゆっくりと実りは復活する。と以前に聞いた。


 ということは、農業などを復活させることは魔性を引き寄せることになるのだろうか?

 アルケディウスやプラーミァに連絡しておいた方がいいかも。


「解りました。ありがとうございます。

 お言葉に甘えます」


 大王様のご許可と心遣いに、私は感謝し頭を下げた。


「スーダイもしっかりと姫君の護衛と案内をするように」

「心得ております」


 

 かくして、私達のエルディランドフィールドワークが決定した。

 ずっと王都から出られないと思ったから、ちょっと嬉しい。


 サツマイモが見つかったらスイートポテト作りたいな。

 私はこの時、完全に芋ほり遠足の気分になっていた。


 私は。

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