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皇国 私の側近達

 皇女となった私に、新しく三人の女性が仕えてくれることになった。


 侍女にして女官長。ミュールズさん。

 長く皇王妃様に仕え、王宮の女官を管理監督していたバリバリのキャリアウーマンだ。

 大聖都での旅でもお世話になった。

 御主人は皇王陛下の筆頭側仕え。お子さんは男二人で、どちらも第一、第二皇子に付いて、代々皇王家の側仕えを務めているという。

 筋金入りの皇王家の側近一族だ。


「不老不死になってからは家族で過ごす機会も殆どなくなりましたが。

 子育ても終わりましたし、必要ありませんし」


 一応下賜された家はあるけれど、ほぼほぼ戻っていないとおっしゃる。

 休みがないわけではないということだけれど、なんだか寂しい。

 私の侍女になることが決まって、第三皇子家に部屋を賜ることになって、セリーナの指導と、第三皇子家の侍女たちの監督を任されることになった。

 今までミーティラ様が担当していた使用人頭を譲られる形になるけれど、ミーティラ様は


「私はティラトリーツェ様のお側に仕えられればそれでいいのです」


 と拘りはないそうだ。

 むしろ全体的な指揮から離れて、ティラトリーツェ様のお手伝いができる時間が増えると喜んでいた。

 実際、第三皇子家のやり方には基本的な口を出さず、常にお母様を立て。

 でも皇家の女官長として、引き締めるところは引き締める強さがあって、流石だなあと思う。


「女の子をお育てする、と言う事はありませんでしたので、色々と新鮮な事が多くて楽しいですわ」


 とおっしゃって頂けるのは、良いのか悪いのか。

 多分良いと思っておこう。

 ……うん、きっと。


 


 文官のミリアソリスさんは、私の秘書官のようなことをして貰っている。


「ソリスと、気軽にお呼び下さいませ」


 彼女には最初に私の仕事に一週間ついて貰ったのだけれど、


「子ども、というものに間近に接するのは本当に何百年ぶりですが、これは皇王妃様が心配なさるのも道理ですわね。

 侯爵よりもお仕事、多くありませんか?」


 そう言って、一通りの仕事を覚えてからは積極的に事務仕事、計算仕事の削減に着手して下さっているのがとてもありがたい。

 計算がお得意で事務仕事がかなり楽になった。

 ついでにビックリしたのは顔がとても広い事。

 皇王妃様のお抱えであるガルナシア商会だけではなく、シュライフェ商会とも顔見知りだし、貴族の顔と名前と関係性と、仕える部下なども記憶している。

 まだ、私は十七人の大貴族とその伴侶、領地で手いっぱいなので、側で記憶してフォローして下さる方がいるのはとてもとても助かっている。


 一方で、私の料理レシピ、美容品のアイデア、衣料品のアイデアなどには目を剥いていた。

 いつの間にか結構な量になっていたからね。

 私の秘書になるのなら、覚えておいて貰った方がいいと思って全公開した。


「なるほど……シャンプーはこのような仕組みでできていたのですか…」

「シュライフェ商会と契約が済んでいますから、他所に持ち出さないで下さいね」

「承知してございます。ですが、当たり前のものの組み合わせでこのような事ができるとは……。姫様の知識には驚かされますね」


 全ての技術とレシピの権利はゲシュマック商会に委託してある。

 ガルフはゲシュマック商会に全委託してあった私の料理、美容品のレシピの売却とそれにまつわる利益を全て私名義の別口の口座に貯金してくれていて、今はお父様が管理している。

 皇族になって事業が拡大されているので、その金額は去年の春からの約一年間で金貨千枚を軽く超えていた。

 日本円にするなら億?

 自分で言ってて結構怖いな。


 ちなみにこの金額、孤児院と魔王城の為にしか使ってないから脹れ上がる一方。

 自分の服くらい自分で買うと言っているのだけれど、その辺はお母様達のプライドもあるようなので


「子どもがそんなことを気にしないの!」


 と言われてしまった。

 今度から側近の方達への給料は私が払うので、少しは減るかな?

 いずれ孤児院はもっと増やしたいし、今後の為に使いどころには惜しまない予定だ。


 


 不老不死でちょっとだけいい点があるとすれば、一時の金銭目当ての詐欺などがとても少ない事があるだろうか?

 終わりがないので恨みも永遠、憎しみも永遠。

 目先の利益に目が眩んで人を裏切っても、その罪がずっとついて回ると思うと、人を裏切ったり契約を破ったりすることは得策とは言えない。

 なので本当に、裏切りや契約違反は滅多に起きないのだという。

 下剋上やのし上がりなども起きにくい世界でもある。


「今後、新しいものを作ったりする時の契約の管理は貴女を通しますので、管理をお願いいたしますね」

「お任せ下さい。世界で一番に新しいものを見る船の舳先、誰にも渡しませんわ」


 目をキラキラさせて、シュライフェ商会との交渉などをしてくれるミリアソリスさんは本当に頼もしい味方になりそうだ。


 


 そして護衛士のカマラ。

 まだ騎士試験を受けてない特別措置の準貴族だから『護衛士』だけれども、


「今年の秋の騎士試験では必ず合格して御覧に入れます。皇女様の護衛が無冠ではいられませんもの!」


 とやる気満々。指導をしているリオンも


「一気に優勝、騎士は無理でも、予選抜け準貴族くらいまではいけるんじゃないか」


 と言っていた。

 訓練で外出する時以外はほぼずっと一緒にいるので、ちょっとした合間に話し相手にもなってもらっている。


「私は孤児で、行き場の無い所をエクトール様に拾って頂いたんです。エクトール蔵の蔵人のうち三分の一くらいはそういう存在です」


 とにかく早く大人になりたくて、焦るな、というエクトール様の反対を押し切って最速で不老不死になったのだという。

 童顔の女と男達の油断を誘う役にも立っている、と聞くと、不老不死世界を生きる子ども達の苦労が察せられて少し、胃が痛くなる。


 彼女もミリアソリスさんも第三皇子家の使用人区画に部屋を貰い、住み込むことになった。

 本館の貴族区画に家があるのはミュールズさんだけだ。


「二人とも失礼ですが独身? 恋人やご主人はいないのですか?」

「私は夫がいますが、夫は侯爵の側近ですので、暫くはこちらを優先するように命じられております。どうかお気になさらず」


 にっこり笑うソリスさん。

 彼女も夫との仲は悪くないけれど、家族よりも仕事が優先だという。

 貴族社会で五百年の不老不死、やっぱりそうなっちゃうものなのかな?


 ちなみにカマラはと言えば


「私より弱い相手は対象外です」


 と、どきっぱり。いっそ清々しい。


「オルジュさんも、ですか?」

「魔術師ですからね。『弱い』わけではないと解っていますが、好みではありません。

 私の理想、というかはエクトール様を除けば、勇者アルフィリーガですから。

 勇者のように強くて優しい男性がいれば考えます」


 勿論、結婚したいとかそういうのではなく、純粋に憧れの対象だというけれど。

 うーん。


「じゃあ、リオンの事は気になったりしません?」


 ちょっと心配にならなくもない。

 カマラにとってはリオンは同じ護衛士仲間と言う事になる。

 カマラより強いし、身分も高いし。

 ……言えないけれど本当の勇者だし……。

 年下ではあるけれど、好きになられたりしたら嫌だなあと、ちょっと思っていたら


「確かに、リオン様の強さ、優しさは理想ですけれど、年下すぎますし、何より姫様の婚約者に懸想するような愚かな真似はしませんわ」


 と笑われてしまった。


「へ? 婚約者?」


 ホッとするより先に、私はカマラから零れた、自分も知らなかったびっくり事実に思わず呼吸が止まる。


「えええっ! リオンが婚約者ぁ!?」

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