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魔王城 夏の一日

 その日、魔王城の島はいつにも増して活気と笑い声が溢れていた。

 森は初夏の匂いを濃くして、陽の光は葉の隙間を跳ね、草の上に小さな金色の斑点を散らしている。


「ティラさまー、こっちこっち。ほらみてあそこー」

「ぐれしゅーる。おいしーよ」

「まあ、キレイ。たべられるのですか?」

「うん」「おいしー」

「あら、ホント。おいしいわ」


 ティラ様は貴婦人としての距離感を保ちつつも、子ども達の勢いに少しずつ巻き込まれていく。

 甘い果実の香りに、思わず頬がほころぶのが分かった。


「旦那様、これはやはり……」

「本当だ。花に栄養を取られているところが惜しいが……いいものを見つけたな」

「これ、いいもの?」

「ええ、とってもいいものです。お手柄ですよ。ギル」


 リードさんが頷き、ガルフが小さく目を細める。

 “いいもの”という言葉ひとつでも、彼らの世界が少しずつ動き始めたのが伝わってくる。


「一度、スープを冷やすと油とかゴミが上の方にかたまるの。

 で、それをとってからもう一度温めると……」

「はあ、なるほど。脂分や汚れがキレイに分離したスープが出来上がる、というわけか。

 料理に精霊術を使うとは、発想が凄いね」

「へへへ、マリカ姉に教えてもらったの。でも、マリカ姉は氷の精霊術、とくいじゃないから、私しかまだできないの」

「スープはマリカ姉様よりも、エリセの方が美味しいってみんな言うくらいですからね」

「エリセ姉のスープおいしいよ」

「本当だ。とても美味しいね。エリセ」


 エリセは照れたように笑って、胸の前で手をきゅっと握る。

 得意を認められることが、子どもにとってどれほどの支えになるのか――その小さな背中が教えてくれる。


「セリーナお姉ちゃん、すごいすごい。すごくステキ。すごくキレイ。ぜんぶキレイ、みんなキレイ

 まわり全部がキラキラしてる」

「ホントね、とってもキレイ……」

「セリーナさん、ファミ―さん。向こうにもお花が咲いていますよ。

 セフィーレという木の花なんですけれど、真っ白でステキな花です。見に行ってみませんか?」


 セリーナの瞳が、初夏の光を受けて少しだけ揺れた。

『キラキラ』という言葉が、ただの景色ではなく――彼女の世界の輪郭そのものを塗り替えていくようで、胸が静かに痛んだ。


「お、やった! 皇子様。イノシシとった! すげえ!」

「あっちは鹿狙いか。スピード勝負にしておいた方が良かったかな」

「おれがはこんでやるよ。マリカ姉にさばいてもらお!」

「いや、俺が運ぶ。子どもには重いぞ」

「だいじょーぶ、だいじょうぶ、ひょいっとね」

「お! 本当に凄いな」


 いい光景だな、と本当に思う。

 子ども達と大人が、森で、戸外で一緒に過ごす初夏の一日。

 時折聞こえるアレクのリュート。

 本当に幸せで、暖かくて、優しくて……。


「どうしたんだ? マリカ?」


 アルが、私の顔を覗きこんだ。

 ――あれ? アルの顔が、滲んで見える。


「なんでもない。眼にゴミが入っただけ」


 目元を擦る。

 別に痛いわけでもないのに、なんで涙が出たんだろう。

 ナーハの実の欠片でも跳んだかな?


 空は快晴。

 太陽はピカピカで、磨き上げた銀細工よりも眩しく輝く。

 私は穏やかな魔王城の森の一時を、幸せを、静かに噛みしめていた。


 話の後、魔王城の島にやって来た五人を、私は島の子ども達に紹介する。


「みんな、ごあいさつできる?」

「できるー。こんにちわー」


 と、明るく返してくれたのは、実は年少と未満児の四人だけだった。

 他の子ども達は、どこか遠慮がちに後ろに下がってしまう。


 ミルカ以外の魔王城の子ども達は、大人という存在をエルフィリーネとティーナとガルフ以外知らない。

 ただ、多分、記憶のどこかにはあるのかもしれない。


 魔王城に来る前の……良くない思い出が。

 だから急に、そして一度にやってきた五人の大人に、ちょっと人見知ったのだ。

 多分。

 でも……。


 ツッ、とミルカが前に進み出て、戸惑うリードの手を取る。


「リードさん。私、お料理が得意になったんです。見て、頂けますか?」

「ミルカ……ええ、見せて貰えますか?」


 彼女の行動が、子ども達と――多分、大人達の緊張の氷も割ってくれた。


「僕も、見せて欲しいな。僕は料理が大好きなんだ」


 ミルカの目線に自分のそれを合わせてくれたラールさんに、


「ホント? 私もお料理すきなの。マリカ姉に教えて貰ってね、マフィンも私が作ったんだよ」


 エリセがぴょんと飛びついていく。


 リオンも穏やかに目を細めて笑うと、ライオット皇子を引っ張って、肩を遠慮なくポンと叩いた。


「こいつは、俺の大事な親友なんだ。俺達を助けてここに連れて来たのは、こいつなんだぞ」

「リオン兄のともだち?」

「…! じゃあ、リーガ・ルッシードのおうじさま!?」

「!? アルフィリーガ! お前、何をどうやって説明してんだ?」

「そうだ。教えてもらうか? アーサー?」

「すげえ、おしえて? ねえ、おしえて?」

「クリス! ライオ!」


 そこからは、もうあっという間に友達だ。

 穏やかで暖かな初夏の森で。

 子ども達は大人達を巻き込み、大人達も子どもと一緒に遊び始めてくれた。


 リオンとライオット皇子は森の奥に向かい、狩り勝負を始めたらしい。


「よし、アルフィリーガ、どちらが大きい獣を仕留められるか勝負と行くか?」

「ふん、速さ勝負だと俺に叶わないから、考えたな…。

 まあ、この森については俺に利がある。アーサー、そっちについて案内してやれ。

 クリス、俺と来い」

「りょうかい!」

「アーサー、と言ったか? 良く働いてくれたら褒美をやるぞ」

「え? ほうびって何? リーガ・ルッシード?」

「それは、またいずれ。今日の所はアルフィリーガの恥ずかしい話をだな…」

「え、それ、おれもききたい!」

「クリス! ライオ!」


 ……相変わらずだ。

 けれどその『相変わらず』が、今の私には何より尊い。


 一方で、城下町や森の近郊で植物調査をしているのはフェイとガルフ、ギル、リードさん。


 話が終わったあと、


「マリカねえ、みてみて…」


 ギルが、私の留守中に描いたという絵を見せてくれたのだ。


「うわー。すごいキレイ。お花の絵がいっぱいだね。こっちは鳥や動物?

 すっごくよく描けているよ」


 最近、ギルは絵を描く事にハマっているらしい。

 私が用意しておいた勉強用、お絵かき用の木札にびっちり、森で見つけた花や植物が描かれている。

 まだ線は荒いけれど、ちゃんと特徴を掴んでいるから、何を描いているかは解るのだ。

 セフィーレ、グレシュール。ピアンの花、その他にもいろいろ…


「おや、これはチスノークの花ではありませんか?」


 絵を覗き込んだリードさんが、ふと一つの絵を指さした。

 小さくて細かい花が集まっている、ちょっと見、ネギ坊主のような花。


「チスノーク?」

「あー、根っこが小さな実のようになってまして、いわゆる香辛料の一種ですよ。

 肉料理とかによく合うんです」

「えっと、ギル…君、でいいでしょうか? この花の咲いていた場所を覚えていますか?」

「うん、覚えてるよ。教えてあげる!」

「マリカ様、丁度いいから、この森をリードと回ってきてもいいでしょうか?

 以前話した通り、夏には秋と違う食材が見つかるかもしれない」

「解った、お願い。助かる」

「僕も行きます。何か役に立てるかもしれませんから」


 そう言って、植物調査に行ってしまった。


 ティラ様は暫くティーナと話していたけれど、その後は――


「おねーちゃん。いいものいいもの、おしえてあげる」

「こっちー、こっちー」

「ちょっと待って、引っ張らないで。一緒に行くから」


 大人の女性に興味津々のリュウとジャックに、付き合って下さっているようだ。

 右手にジャック、左手にリュウと、しっかり手を繋いでいく。


 一人ひとりの話を聞き、頷く様子は、二人のお母さんのようだ。

 よきかな、よきかな。


「ファミーちゃんとセリーナさんも遊んできていいよ」

「ホント?」

「うん」

「お姉ちゃん、行こう!」


 で、残った私はシュウと一緒に、色々準備をはじめた。


 多分お菓子類は、城下町のキッチンに戻ったエリセとラールさん達が作ってくれる。

 あとは、作りの簡単な木製組み立てテーブルを用意しておいた。


 お肉はリオンと皇子に任せておけばいい。

 なら、私は川辺でご飯の準備だ。

 こういう時の為に作っておいたバーベキューコンロもどきと、鉄板。

 あとは、キャロとパータトを薄切りにして…っと。


「シュウ、網の方は上手く行きそう?」

「うん、だいじょうぶ~」


 皇子が狩って来てくれたイノシシは捌いて焼き肉用に切って…っと。

 そんなことをしている間に、狩り組が帰って来た。


「マリカ。鹿狩って来たぞ、ライオのと……ってもう捌いちまったのか?

 これじゃあ比べられないじゃないか?」

「あ、お帰り。リオン。ご苦労様。

 ……うーん、重さで言うなら皇子の方が大きかったかもね?」

「ちっ、負けたか」


 かついできた鹿を地面に降ろしながら悔しそうなリオンとは正反対に、皇子はドヤ顔だ。


 この二人、外見年齢は親子ほど違うのに、並んでいると本当に同い年くらいに見えるのは何故だろう。

 どれだけ年月が過ぎても、再会した瞬間に同じ時間から始められるのが、本当の親友なのかもしれない。

 ちょっと、羨ましい。


「ふっ、まだまだ腕は錆びてないと解ったか……って、マリカ?

 どうやってあのでかいイノシシをもう肉に?」


 びっくりした顔で、私の準備を見ていた皇子に、


「あ、皇子にはちゃんと見せていませんでしたっけ? 私のギフトです」


 私はリオンの鹿でやって見せる。


「ただいま~。グレシュールの実がたくさん採れたわよ~って……マリカ?」


 丁度戻って来たティラ様も絶句。

 ライオット皇子と一緒に固まってる。

 あれ? ティラ様には見せた筈だけど。

 まあ、驚くのも無理はないか。

 私以外誰の手も触れていないのに、鹿の皮が剥がれ、内臓が切り分けられていくのを見れば。


「物の形を変えられるのが私の能力です。

 切り分けて二つに別れちゃうと、そこから先は一個ずつ動かさないといけないんで面倒な所もあるんですけれど、基本便利な包丁みたいなものかな?」


 塊から切り離すとそこから先は動かないので、私が一つ一つ、調理用の大型まな板の上に並べていく。

 頭や扱えない部分は、骨や牙を除いて粉にして畑の肥料代わりに。

 アバラ肉はバーベキュー用に塩を振って。

 ああ、味噌や醤油が切に欲しい。


「包丁…君は……このギフトを料理に使っているのか?」

「はい。あ、道具作りとか、洋服の仕立て直しにも使ってますが…」

「そうじゃなく……いや、いい」


 何かを諦めた様に首を振るライオット皇子と、ティラ様が何故か目を合わせて溜息をついている。

 私、変な事は何も言ってない筈だけど。

 解せぬ。


「マリカ様、面白いものがありましたよ」


 遅れて戻って来たガルフが、持って行った背負い籠からいくつかの品物を取り出して見せる。


「これは、リードが言った通りのチスノーク。花が咲いていたので少し根が小さいですが、これを潰したり刻んだりして肉料理に使うと刺激的な味になります」


 緑の葉っぱからぶら下がる白い根の塊に覚えがある。

 小さな欠片に爪を立てて、くんくんと嗅いでみた。


「あ、ニンニク。こっちにもあったんだ」


 これは大発見だ。

 ニンニク風味が付くと確かにお肉とかは格段に美味しくなる。

 さっそく今日のバーベキューに使ってみようと思い、ギフトで潰している間に――それから、といくつかの葉っぱを差し出された。


「ローマリア、セージ、ミンス、ですね。どれも香りがよくって、ミンス以外は肉料理に入れると良かった筈です。

 こういう知識は俺よりもリードの方が詳しくて」

「恐れ入ります。500年前の事なので、やはり少々錆びついておりましたが、お役に立てれば幸いです」


 私にはミンスが多分、ミントかな~、くらいしか解らない。

 何せ向こうで使っていた香辛料は瓶詰めだったからね。

 料理に使う香草類の実物を探せと言われても、さっぱりわけワカメ、だ。

 アロマテラピーは好きだったんだけど。


 ただ、子ども達と読んだハーブの本に載っていたのを少し思い出す。

 ローズマリーとか、セージなのかも。


「ちょっと使ってみましょうか? 美味しくなると良いですね」

「マリカ姉。卵とクリームもってきたよー」

「スープとデザートの用意もバッチリ―」


 台所料理組も、材料調達を頼んだヨハンも戻って来た。

 日も少し傾いてきたし、そろそろ良いころ合いだろう。

 私は、皆に声をかける。


「そろそろ食事にしましょうか?

 今日は、みんなで、お外でバーベキューね」

「わーい」「お外でおにく~~」


 はしゃぐ子ども達は、中庭とかで何度かやったことがあるので抵抗はないようだ。

 でも――


「食事って…ここで?」


 あ、騎士とはいえ、箱入り王族のティラ様は、立ち食いとか、野外で食事とかはしないか。

 不老不死世界になってからは、食事をする必要も無いわけだし。


「お嫌ですか? 毒見とか必要なら城下町に戻って…」


 と思って声をかけたのだけれど、


「いえ、ここで食べ物に毒を入れられる心配も無いでしょう。構いません。ご一緒させて頂きますわ」

「旅した頃を思い出すな」

「お前は手を出すなよ。アルフィリーガ。料理をダメにしてよくリーテに怒られてただろ」

「黙れ、お前だって同類のくせに」


 明るい笑い声が零れた。


 その日の夕食は本当に、楽しいものになった。


「おいしい! こんなに美味しいお肉、食べたことが無いわ」


 貴婦人らしい仕草を一旦棚置きしたらしいティラ様は、両手を使い鹿のアバラ肉のバーベキューにかぶりつく。


 子ども達は嬉しそうに顔を油だらけにして、はむあむ、と夢中でかじりついている。


「このあばら焼きは店でも出せそうですね」

「ああ、香草も店で使ってみるか?」


 ガルフとリードさんは店のメニュー研究に余念がない。

 ラールさんはもっと真剣に肉を噛みながら、味の再現方法を考えているっぽい。

 流石だ。


 脂ぎった口元は、さっぱりと冷やしたエナの実のガスパチョもどきで洗い流すと、いくらでも食べられる。

 エリセに教えたばかりの夏の新作メニューは大成功のようだ。

 デザートはクレープとホットケーキ。

 生クリームとグレシュールの実のがフレッシュで最高だった。

 とはいえ、小さい子にはそろそろセーブしないといけないかなあ、と――皆の様子を見ながら肉や野菜を焼いては配っていた私だったけれど。


「ほら、焼き役、交換してやるからお前も食べろ」

「あ!」


 気が付けばリオンは私からトングを取り上げてしまう。


「ありがとう」


 代わりに渡された皿の上に、ぽいぽいと乗せられていく肉野菜が、たちまち山になる。


「リオンも食べた?」

「十分食べたさ」

「良かった」


 当たり前の、そんな会話が本当に幸せで、本当に嬉しかった。


 二十人以上、大人子ども入り混じってのバーベキュー大会は、空が薄紫から濃紺に色が変わっても、フェイが呼び出してくれた光の精霊のおかげで、長く、賑やかに続いたのだった。


「さて、そろそろ戻るとするか」


 皇子ライオットの言葉は、バーベキューだけではなく、楽しかった夢のような一日の終わりを告げる鐘の音だった。


「おねえちゃん、また来る?」


 すっかりティラ様に懐いたリュウとジャック。

 右と左、両方からスカートを引っ張って真剣な目で問いかけている。


「そう、ですね。マリカが許してくれるなら、また来ます」


 皇子に軽く目をやったあと、ティラ様はそう言って二人の頭を撫でてくれた。


「マリカ姉?」


 問いかける視線はティラ様から、私へ。

 私もリオンやフェイ、アル達と顔を合わせてから二人に微笑んだ。


「ティラ様はお仕事が忙しいから、来てもいいと思って下さる時が来たら、またお呼びしましょうか?」

「うん」「また来てね!」

「ええ、必ず」


 そんな小さな約束は未満児組だけのことではなく――


「皇子 今度、本当にリーガ・ルッシード、教えて下さい」

「……ああ、今度来た時にはちゃんと教えてやろう」


「ギル、と言いましたか?

 良ければ、また色々な植物を描いておいて頂けますか?

 もしかしたら、力になれるかもしれません」

「わかった」


「今度来た時に、また新しい料理を教えてくれるかい?」

「うん、いいよ」


 みんな、来訪者を気に入り、確かな絆が結べたようだった。

 本当に、良かった、と思う。

 心から。


「ばいばーい!」「またきてね~~!」


 私達は、彼らを送る為に一緒に転移門を使ったから知らなかったけれど。

 子ども達の見送りの声は、転移の門から来訪者たちの姿が消えても、ずっと続いていたと――後でティーナは、そっと教えてくれた。


 そうして、魔王城の初夏の一日は賑やかに終わる。

 明日からは大祭。

 忙しくなるだろう。


「よろしいのですか?」


 ガルフは自分の手のひらをさすりながら、問いかける。

 視線の先には帰路につく皇子達の背中が見える。

 ライオット皇子を含む来訪者たちに、私達は口封じの契約はかけなかったし、ガルフの契約も解除してもらった。


 思い出す。


『安心して。絶対に、誰にも口外しないと誓います』


 約束を交わしてくれた、淀みの無い水晶の眼差し。

 それで、十分だ。


「構いません。私は、信じると決めたのです」

「ありがとうございます。必ずや信頼に応え、お役に立つと誓いましょう」


 跪き、礼を捧げてくれるリードさんの横で、ラールさんも真摯な顔でこちらを見る。


「ガルフ様、マリカ、いやマリカ様。

 僕も、この家に置いては頂けませんか?」

「え?」

「本気で、学びたいと思ったのです。マリカ様の調理技術と知識を。

 分散させることで、マリカ様一人が狙われるリスクを多少なりとも避けられるかもしれませんし、僕も守りたいと思いました。

 あの少女達の笑顔と、未来を…」

「ガルフ?」

「マリカ様がお許しになるのなら否はありません。部屋も余っておりますし、監視にもなるでしょう」


 リオンやフェイ、アルとも頷き合って、私は手を差し伸べる。


「お願いします。どうか、今後とも力を貸して下さい」

「「はい!」」


 少しずつ、少しずつ広がっていく、信頼の輪。

 一人から、二人、そして今日五人になった。

 この輪がいつか世界に広がって行けばいい。

 いや、いつか絶対にそうするのだ。


 私は心に決めていた。

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