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第二十七話 錬金術師と闇ギルド


「じゃーん。行きつけの錬金術師ギルド!」


ここはさっきいた場所から徒歩数分。


闇の濃い地下水路を辿った先にある空間だった。


「…盗賊の住処の間違いじゃないか?」


ところどころに血の跡のようなものがこびりついていた。


「この聖教都市に盗賊なんているわけがない。君の仲間は盗賊だっていうけどね」


そう言って床をちょこまか動き回るネズミを一瞥した。


やはりというべきかどぶの様なにおいがどこからか香ってくる。


そんな中、不自然に木製の扉があった。


石造りの水路の中でそこだけ。


「この扉の先に錬金術師たちがいる」


ルシは軽くその扉をたたく。


ふやけているのかあまり音はならなかった。


「それで、ルシ。お前はなぜこんなところに僕を――」


ヴェーゼンが言い終るかどうかの時だった。


扉がわずかに開き、


「…流星群」


そう、しわがれた小さな声が聞こえた。


後ろから聞こえる水路の音とも負けず劣らず小さい声だ。


「エボルオの霊薬」


ルシが間髪入れず言う。


どうやらこれが俗にいう暗証番号とやらの様だ。


ヴェーゼンの故郷ではこんなことやったらすかさず扉を斧で勝ち割られているだろう。


「狂信者に」


ルシは自信満々に答える。


「呪いと懺悔を」


聖女様がそんなこと言っていいのだろうか。


「すべての祝福は」


「神に帰す」


ガチャン


長い問答の末に扉の鍵の外れる音がした。


ルシは教会のシンボルが印刷された法衣のフードを下ろした。


銀髪が無駄に光沢を反射する。


そしてルシは嬉しそうにドアノブを握ると、


「さ、俺になんかおごってよ」


ここでいいのか?という疑念がヴェーゼンの中をめぐる。


「…ルシ。このクソ忙しい時になんだ?教会の供はいないだろうな」


内装はいたってシンプルだった。


カウンターと椅子が四脚。


怪しげな草とポーション。


それに、昨日ヴェーゼン達が襲われた魔物のはく製が飾ってあった。


あとは、気難しそうなお爺さんが一人。


開口一番苛立たし気にそう言ってくるような。


「爺さん。ほら、なんか作って。これが払ってくれるから」


そう言ってルシは椅子に腰かける。


ヴェーゼンもつられて腰掛ける。


「…魔物災害があった」


「知ってるよ」


お爺さんがため息をついてそういうがルシは首をかしげる。


「そのせいでポーションを作らなくてはいけなくなった」


つまり、ルシのランチを作る余裕はないらしい。


「…そういえばルシは何でここに来たんだ?」


ヴェーゼンはしょげるルシになんとなく話題を振ってみる。


単純に興味があったからというのもだが。


「一番安全だから。ほら俺って追われてるから」


少しだけ寂しそうに言った。


たしかに、おわれているのに地上のカフェにでもいたら…。


「本当はもっといろんなとこ行ってみたいんだけどな」


ルシは寂しそうに言った。


「しょうがない。聖女様っていうのはそういうもんだ」


お爺さんはルシを見ることもせずに言う。


「…せっかく、ここに入るために錬金術師になったのに」


ルシはカウンターに顎をのせ足環バタバタさせる。


「聖女様は変わり者が多いと聞くが…」


お爺さんはお茶をヴェーゼンとルシの目の前に置くとそう懐かしむように言う。


「まさかここまでの変人とは」


そう、ルシを憐れむように言う。


まるで、頭の中まで進行に浸食されているといわんばかりに。


「…生まれた時からずっとここだよ。外にも出られない――あ」


ルシはあきらめたようにそう突っ伏す。


そしてまるで何かを思い出したかのようにその白い装束から何かを取り出す。


「世話係どもをまくのに使った煙玉。やる」


「なんでだよ」


何で煙玉なんだよと、ヴェーゼンはぼやく。


普通もっと役立つものをくれるはずだ。


「君は、仲間を探しに行くんでしょ。俺は行きたくない」


「最初から見透かされていたとは。もちろんお前もつれていくけど」


相変わらずだ。


「…はぁ。俺足手まといだよ?嘘つきだし」


ルシは困ったようにヴェーゼンを見つめる。


それから、差し出されたお茶を一口すすると、


「オトモダチが大聖堂に潜入したとかならやりようはあるけど」


そして、その飲み終わったお茶の茶碗をヴェーゼンの目の前に突きつける。


「俺は高くつくよ」


そうにやりと笑って言って見せた。


ヴェーゼンはほんのわずかに驚いたように目を広げると、


「杞憂だな。キフェルっていう生き物は怪しいところに行きたがるんだ」


「あは。そんなの大聖堂一択じゃん。馬鹿な仲間を持ってよかったね」


ルシはキフェルの行動に笑い転げる。


聖女というのも案外単純なものだ。


「まったくだ」


それでもヴェーゼンはどこか嬉しそうだった。


「となったら。思い立ったが吉日だ。すぐに――」


「待ちな。少年」


錬金術師ギルドのお爺さんはヴェーゼンを呼び止める。


そのさなかにも手は怪しげな草の置いてある棚をあさっていた。


ポーションをそこら中に放りだしたり、怪しげな陶器の人形。


改めてみても怪しいモノしかない。


「あった。これもってけ」


そう言って渡されたのは道で歩いていたら確実につかまるようなデザインの仮面だった。


「…?」


ヴェーゼンは疑心暗鬼で手に取ってみる。


それは思いのほか重くそしてニスのような変なにおいがした。


「それをかぶると三十秒後にかぶったやつが爆発する」


「⁉」


ヴェーゼンは目に見えて焦った様子で仮面をテーブルに置く。


「冗談だ」


そうお爺さんは楽し気に言った。


心の底から楽しそうに。


「…いいか?それは教会の奴らにだけは渡すな。神さんの怒りに触れるからな」


「効果を教えろよ…」


ヴェーゼンは呆れつつも自分には扱えない代物を手渡されてしまった困惑が勝っているようだ。

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