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第二十五話 信仰と実験対象00988

諸事情により投稿遅れました。

すいません(o*。_。)o


「いらっしゃいませ~」


白い制服に身を包んだ店員がキフェルを迎える。


「あ、十字架のアクセサリーって売ってますか」


少しだけ緊張しながらキフェルが言う。


「…なくされたんですか?」


何でもないかのように店員はいう。


「あぁ。なくした」


キフェルは悪びれる様子もなく嘘をつく。


ショーケースにキフェルの顔が映る。


少しだけ引き攣っていた。


「取り扱っております。では、住民票を提示してください」


店員は、ニコリと笑みを浮かべそうキフェルに指示した。


「お土産にできたりしないか?」


キフェルも流石に住民票なんて偽造できない。


だからお土産であるということを強調して店員に問う。


「なら、向かい側のお土産屋さんの物をつかうといいですよ。意匠があまり凝っておらずお土産に適したものとなっています」


――チッ


キフェルは心の中で舌打ちする。


「うーん。昔使っていた十字架ならあるんだがな」


そういって、店員が首にかけている十字架と瓜二つなものをカバンから取り出す。


「し、失礼しました。番号住民番号をお願いします」


それを見たとたん店員は慌てだす。


書類をばっさばっさとそこら中に散乱させマニュアルと思しき紙の束をパラパラめくる。


「住民番号――00988」


それはキフェルが昔作ったものだった。


その時は、この都市を内部から腐敗させようとしていたと思う。


――もう覚えていないが。


「00988。承知しました。少々お時間をいただいてもよいでしょうか。十分ほど」


「いいぜ。今日は礼拝に行くつもりだったからな」


それは、ほんの少しの嘘とともに。



「――はっ!き、キフェル。ここはどこ…だ?」


ヴェーゼンはベッドから身を起こす。


少しばかり寝ていたようで日は登り切っていた。


「キフェル…がいない」


ヴェーゼンはひとしきりあたりを見回した後ベッドから立ち上がる。


シーツを整えることはしない。


「誘拐か。アイツのことだからすぐ帰ってくるだろ」


頭がはっきりしてくると不安より先に呆れが来た。


暫定とはいえ仲間に何も言わずどこかに行くなんて。


「はぁ」


ヴェーゼンははめ込まれた窓ガラスから街並みを見下ろす。


まるで、鳥の群れであるかのように白い集団は歩いていた。


「お腹空いた…」


思えばほぼ丸二日何も食べていない。


いろいろありすぎた。


ガチャ


ヴェーゼンは、入り口でもらったカバンを握りしめ部屋の外へと踏み出す。


不気味で、高潔な白の国へ――



「…なんもないな」


宿屋から徒歩数分。


本来ならば市場なりレストランであふれているはずなのに目につくものが何もない。


それはひとえにすべてが真っ白だからだろうか。


「雪降ったら何も見えないだろうな」


ヴェーゼンはふと、少し前までいた街について思い出す。


雪が降る…もう、地獄と化したあの街を。


ヴェーゼンは空を見上げる。


雲が多めの青空で少しだけ気分が軽くなった。


――タッタッタッタッタ


「やっぱ、キフェルが帰ってくるの待つか…」


ヴェーゼンはくるりと踵を返し、来た道を戻る。


視界の端の細い道のことなんて知るはずがなかった。


「っ助けて!」


そう言って何者かがヴェーゼンに飛びついてくる。


もちろんだが相手の方が背が高い。


その、”少女”は、まるで、ヴェーゼンを盾にするかの如く建物の狭間に向ける。


「……」


ヴェーゼンは無表情だった。


驚くこともなければ、少女に質問することもしなかった。


ただ、少女から四歩ほど後ずさっただけ。


「なんではなれるの。俺はマジで助けろって言ってるんだけど」


わずかに上ずった。


少女のようでいて、声変わり前の少年のような中性的な声でもあった。


しかし、身なりから断じていた。


少女である――と。


「――」


それは、ヴェーゼンが口を開きかけた時だった。


ザッザッザ


雑多な足音、上質な布の擦れる音。


それが、大通りに出てくるとともにたくさんの讃美歌が道からあふれる。


ベールで顔を隠した教会の一団だった。


「っ!」


少女のような”少年”はその一団を見たとたん蜘蛛の子を散らすように逃げだした。


シャン シャン


少年は、腕に鈴の付いた腕輪をたくさんつけていた。


少年が逃げるのに合わせて音が鳴る。


教会一団は手を少年の方へ伸ばし――


「お待ちください!聖女様」


「――は?」


少年を追いかけようとしていたヴェーゼンは足を止める。


聖女


あれが?


ヴェーゼンは少年いや、あえて聖女と呼ぼうか。


聖女が走っていった方向に走り出す。


白い、人の群れをかき分けながら。



「にしても…こんな簡単にこれが手に入るなんてこの国大分腐ってるよな」


キフェルは手の中にある十字架を眺める。


一見はただの金属のシンボルだが、光を反射させてみると複雑な意匠が見える。


「無駄に技術力だけあんのは何なのか」


ふぅ、とキフェルはため息をつく。


一旦部屋に戻るか、それとも大聖堂まで行ってみるか。


そんな一瞬の迷いが生じる。


「ま、ヴェーゼンの奴もどっかふらふら行ってるだろうし一応連れ戻しておくか」


ヴェーゼンが何かを犯したら同じ部屋に在留しているキフェルに連絡が行く可能性すらある。


それは、あまり都合がよくない。


ドッ


そう、思案するキフェルに何かがぶつかる。


「だれだよ…人込みで止まる俺様も悪いけどさぁ」


そう言いながらキフェルはぶつかってきた少年を見下ろす。


「うっせぇ。俺が誰だか知って言ってんのか?」


聖女と呼ばれた少年の逃亡劇…なのかもしれない。

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