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第十九話 見知らぬ土地と襲い来る睡魔


「ふぅ、ったく。こいつも無茶しやがる」


夜の森…また戻ってきてしまった。


キフェルはため息をつく。


黒い執事服をいつもの旅人風の格好へ着替える。


もっとも、こちらも一瞬だが。


追手こそいないものの夜の森というのはそれだけでそこにはびこる獣魔の餌食となる。


「チッ。本当なら今日はこいつの金で宿屋に泊まるつもりだったのに」


そう独り言を言ってみる。


キフェルとて金がないわけではない。


最低限の路銀ぐらいは持っている。


しかし、このヴェーゼンという少年は森を闊歩する盗賊と同じような。


言うなれば、金を持っていると知った瞬間切りかかってくるような気配を感じた。


それだけだ。


そして、今の一件でキフェルはさらにヴェーゼンを手放すことができなくなった。


強大な魔力。それ自体がとてつもない才能だ。


さらに、こいつは世界魔力の一端を握っている。


もしかすると、自分以上にこの魔導書を活用できるのかもしれない。


「ま、そんなわけないが」


キフェルはそう浮かんだ考えを否定するように曖昧に微笑む。


今の時代にこれを操れる奴なんているわけがない。


…単なる一人の人間が、操れるわけなんてないのだ。


「なぁ、ヴェーゼン。俺様はどうしたらいいんだろうな」


柔らかな土の上に寝かせたヴェーゼンに問いかける。


答えが返ってくるわけなんてないのにキフェルはそうせずにはいられなかった。


「あの、教祖サマを追えばいいのか?それとも、お前のことなんか忘れてまた、旅を続け…」


カサッ


周りの草むらから音がした。


キフェルの肩がビクッとはねる。


「く、ヴェーゼン起きろ。なんかやばそうなのが来てるぞ」


「…すぅすぅ」


焦ったようにキフェルが言うがヴェーゼンは平常運転。


むしろこんな緊迫した状況で熟睡している方がおかしいのだが。


キフェルは考える。こんな危ない状況で中身はどうあれ子供を置き去りにするのは人としてどうなのかと。


…結論は秒で出た。


「あばよヴェーゼン。俺様は自分の安全だけは何としてでも守るからな」


そう、キフェルはヴェーゼンを見限ったのだった。


魔力を持った彼ならばまぁなんだかんだ生き延びるだろうと。


そう、見当はずれな目論見を。


「ムニャ…な⁉は?キフェル。これはどうなってる。天国と地獄どっちだ」


ヴェーゼンは運よくキフェルが逃げる直前で目を覚ます。


そして激しく動揺したかのようにガバッと起き上がるとキフェルの方へずかずかと歩み寄る。


「ヴェーゼン。起きたか?安心しろお前は死んでない。そんなことより早く逃げるぞ。なんかやばいのが来る。一応罠はしかけておいたが…」


ピッ


だから大丈夫だと言いいかけたキフェルの言葉を遮るかのように機械的な起動音が鳴る。


「ちょ、ヴェーゼンそれ罠。逃げろ、よけろ」


まさかキフェルもピンポイントでヴェーゼンが罠を踏むとは思わなかったようだ。


ガサガサ


草むらの音が騒がしくなる。


まるで多数の人間が無我夢中にこちらに向かってくるかのように。


たくさんの足音と泣き声が聞こえる。


ドーン


タイミングよくその瞬間に罠が起爆する。


「は?え…大丈夫か?」


さすがに小規模とはいえ爆発の中心地にいた少年が無傷というのは有り得ない。


キフェルは少し動揺しながら土埃の去ったタイミングで駆け寄る。


「…目に土が入った。お前のせいだぞ」


そこには何事もなかったかのように少し土に汚れたヴェーゼンが立っていた。


彼曰く目に土が入ったようだが火傷すら追っていなかった。


「お前…まさか不死身とか言わないよな」


キフェルは勢い余ってそんな荒唐無稽な質問をする。


そんなキフェルにヴェーゼンは冷ややかな目を向け。


「睡眠不足で頭がおかしくなってるんじゃないか?僕だって死ぬときは死ぬぞ」


呆れたように言う。


「そう…だよな」


キフェルはイマイチ納得していないかのように首をかしげながら来る敵に備える。


いくらヴェーゼンが異常存在だったとしても目の前の敵にやられては元も子もない。


好奇心よりも命の方が重いのだ。


「来るぞ。何かよくわからんが」


本当に正体がつかめない。


魔力的な気配はないのにすさまじい存在感がある。


キフェル曰く普通魔物というものはここまでの大群に成長することはない。


人が定期的に駆除するのと食糧不足で共食いするからだ。


ガサッ


「…っ!」


明るい松明の光が目を貫く。


月光を頼りに歩いていたヴェーゼン達には少々まぶしかった。


それ以上にヴェーゼンとキフェルは息をのむ。


それは、その”敵”が強敵だったからでも、あまりに数が多かったからでもない。


「…人か。ま、魔物災害があれば当然だな」


キフェルは失念していたと呟く。


「人…?どうするんだキフェル。追い返すのか?」


ヴェーゼンは何のことかわからないかのように十、いや四十人はいる人々を見やる。


皆一様に恐怖に顔を引きつらせそこら中に擦り傷を負っていた。


「…いや、逃げるぞ」


キフェルは叫ぶと同時にヴェーゼンが了承するのも聞かずに走り出す。


「は?ちょ、お前逃げてばっかりだぞ」


ヴェーゼンは訳が分からないとでもいうように目を白黒させながらキフェルの後を追う。


なぜだか、キフェルの判断が今は一番正しいかのように思えたからだ。

~ちょっとした寸劇(笑)~

作者「ブックマーク、ポイント…存在をも知らされぬ誰かの軌跡よ。

   忘却と嘆きに満ちたこの世界に痕跡を残したくはないか?」

キフェル「え?は?なに言ってんだこいつ」

ヴェーゼン「ほっとけ。それより、早く行くぞ」

作者「我が世界。我らが物語は我によって紡がれる。世界の創造を進めたくはないか?

   誰かに賛美を送りたくはないか?」


~読んでくださりありがとうございました~


注意:作者は深夜の闇に操られています

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