第1話:転生の氷刃、ブリッツの鼓動
1. 転生の瞬間
カイの意識は闇に沈んでいた。
「やべっ、トラック!?」
最後の記憶は、NHLの試合映像を見ながら夜道を歩いていたら、突然ライトに飲み込まれた瞬間だった。カイ、18歳、ホッケーオタクの大学生。NHLの伝説、Wayne Gretzkyの「99番」ジャージを握りしめ、Connor McDavidの神速ドリブルを脳内再生していたその時――世界が消えた。
目を開けると、そこは氷の大地だった。
「…は? ここ、どこのリンクだよ?」
足元は滑らかな氷の平原。頭上には浮遊する巨大な六面体アリーナが、青白い光を放ちながら回転している。空にはドラゴンの群れが飛び、観客席らしき雲の上で精霊たちが騒がしい。カイの目の前には、燃えるような赤い球、氷のように輝く青い球、ずっしり重い石の球、風をまとった緑の球――「オーブ」が浮かんでいた。
「これ、ホッケーのパックじゃねえの? いや、でかすぎだろ…」
カイが呟いた瞬間、背後からド派手な爆音。振り返ると、火球が炸裂し、氷の地面が溶けて蒸気を上げる。
「新入り! ボサッとすんな! オーブ持て!」
叫んだのは、赤毛の少年。炎をまとったスティックを振り回し、火球を敵にぶち当てる。だが、敵チーム――黒いローブの集団が風魔法でオーブを跳ね返し、氷魔法でリンクを凍らせて動きを封じる。
「くそっ、ストームクロウズ、また負けるぞ!」
少年の叫びに、カイはピンと来た。
「待てよ…これ、アイスホッケーじゃん! いや、魔法でぶっ飛んだホッケー!」
2. 異世界のブリッツ
カイは状況を飲み込む前に、赤毛の少年――レオに引っ張られ、試合のど真ん中に放り込まれる。
「俺、転生したってこと? いや、NHLの知識なら負けねえ!」
ここはエレメンタリス、氷と火、岩と風の元素が支配する異世界。競技「マジックオーブ・ブリッツ」は、国家の覇権を賭けた聖戦。ルールはこうだ:
• 5人チームが4種のオーブ(火、氷、石、風)を操り、浮遊アリーナの24ゴールにシュート。
• ゴールは元素ごと(火ゴールは赤、氷は青)に色分け、得点はオーブとゴールの相性で変化。
• 魔法で攻撃、防御、妨害OK。マナゲージが尽きるとフィジカル勝負。
カイのチーム「ストームクロウズ」は、弱小の寄せ集め。対戦相手は「炎帝団」、火魔法のエリート集団だ。
「カイ、お前が召喚された『オールエレメント』の適性者だろ? さっさとオーブ撃て!」
レオが火球をパスしてくるが、カイは魔法の使い方が分からない。試しに火球を握ると――
「うおっ、熱っ!」
火球が暴発し、ストームクロウズのゴーリー、ハヤテのシールドを直撃。ハヤテはクールな目でカイを睨む。
「お前、マナ制御ゼロか。死にたいのか?」
リンクの反対側では、氷ディフェンダーのユキが震えながら氷シールドを張るが、炎帝団の火球で溶かされ、泣きそう。石ウィンガーのガンは「俺の石球でぶっ潰す!」と突進するが、風魔法で吹き飛ばされる。
「これ、NHLのPK並みにやばい状況じゃん…」
カイは焦るが、頭にNHLの名場面が蘇る。2010年、フィラデルフィア・フライヤーズの7戦逆転劇。劣勢でも諦めない精神。
「よし、俺のホッケー魂、試す時だ!」
3. 初めてのスタンドプレー
カイはリンクに目をやる。アリーナの6面に24のゴールが輝き、観客のドラゴンが咆哮する。炎帝団のリーダー、クロウが火球を連射し、ストームクロウズのゴールを焼き尽くそうとする。スコアは0-5、残り時間は1分。
「NHLなら、ここでブレイクアウェイだ!」
カイは直感で氷球を掴む。NHLのMcDavidのスピードをイメージし、リンクを滑る。炎帝団の風魔法が襲うが、カイはホッケーのデケ(フェイント)でかわす。
「魔法わかんねえけど、ホッケーなら知ってる!」
カイは氷球をスティックで叩き、NHLのスラップショット風に発射。だが、マナ制御ミスで氷球が分裂、10個の小さな氷球がゴールに殺到!
「なんだその技!?」レオが叫ぶ。
偶然の産物だが、氷球の一つが青い氷ゴールに吸い込まれ、初得点! 観客の精霊が「新入りのカオスシュートすげえ!」とX風に実況。
しかし、炎帝団のクロウが激怒。「素人が舐めるな!」と雷オーブを召喚。禁断のオーブが雷鳴を轟かせ、リンク全体を焼き尽くす勢い。カイは咄嗟に風球を握り、NHLのゴーリーセーブを真似て風シールドを展開。
「うおお、Crosbyのビジョン、使え!」
風シールドが雷を弾き、チームに一瞬の隙を作る。レオが火球で反撃、ユキが氷でリンクを強化、ガンが石球で敵を押し潰す。ハヤテは風魔法でオーブを跳ね返し、ゴールを死守。
「これ…チームプレイじゃん!」
カイの無謀なスタンドプレーが、チームを動かした。だが、試合終了のブザー。スコア1-5で敗北。炎帝団のクロウが吐き捨てる。
「次はお前らを灰にする。雑魚が調子に乗るなよ。」
4. ブリッツの鼓動
試合後、ストームクロウズの控室。カイはチームメイトに囲まれる。
「お前のせいで負けたじゃねえか!」レオが怒鳴るが、目には笑み。
「でも…あの氷球、悪くなかった。」ユキが呟く。
「新入り、名前は?」ハヤテが冷たく聞く。
「カイ。NHL…いや、ブリッツで頂点狙うぜ!」
ガンが笑う。「でけえ口だ。だが、その馬鹿みたいなシュート、嫌いじゃねえ。」
控室の窓から、浮遊アリーナが輝く。次の試合は大陸予選。カイはNHLの名言を思い出す。
「Gretzkyの言葉だ。『100%のシュートを打たないより、0%のシュートを打て』。俺、全部のゴールにぶち込む!」
チームメイトが呆れつつ、初めて結束の兆し。カイは思う。
「この世界、魔法もゴールもカオスすぎるけど…ホッケー魂でぶち抜くぜ!」
エピローグ
夜、エレメンタリスの酒場で、精霊たちがX風の魔法スクリーンに書き込む。
「カイの分裂シュート、ミーム化決定www」「ストームクロウズ、雑魚すぎて逆に推せる!」
カイは知らない。次の試合で、雷オーブの秘密と、自身の「オールエレメント」の真の力が明らかになることを――。




