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鋼の記憶-メモリー・オブ・メタル  作者: 風光Maybe
リミッターズ編
49/53

第49章:彼女は記録の中にいた

記憶の投影が静かに流れていた。


ユナの背後に浮かぶ無数の映像は、断片的な記録の集合体── それは、妹と過ごした日々の“再生”だった。


「ユナ……お前……」


カイの声に反応することなく、ユナは機械のように言葉を発した。


「記録の再生は、必要。  記録がなければ、私は“空白”になる」


「それでも……!」


ナナが前に出る。


「そんなものに囚われてるなら、あんたは──」


「囚われてなどいない」 ユナが淡々と返す。 「私は、記録を“守っている”。それは、私の生きる意味」


ゲンが低く呟いた。 「……自己同一性の維持。その記録に縋ってなきゃ、自分の形を保てねぇのか」


「ユナ」


カイが一歩、踏み出す。 槍を構えているが、構えは“戦うため”ではなかった。


「俺たちは、“過去”を消すことなんてしない。でも、“過去だけ”で進むこともしない」


「記録を否定してるんじゃない。そこに“囚われる”なって言ってるんだ」


ユナの視線がわずかに揺れる。


クロウが口を開く。 「彼女の能力リフレクションは、不完全なままではその真価を発揮しない。  だが、“絶対の記録”に依存していれば、揺るがない精神を保てる」


「それって、“本当の自分”を……失っていってるんじゃないか?」


リンが静かに言った。


ユナは言葉を返さない。 だが、その視線が、記録の中の“妹”を見つめたまま、わずかに震えていた。


ナナが一歩近づく。 「もし……あたしが、誰かの記録にすがり続けるしかなかったら。  そんなの、つらくて、耐えられないよ……」


静かな時間が流れた。


ユナの唇が、震えるように、開いた。


「……私は、忘れたくなかった。  あの子の声も、笑顔も……焼かれて、消えていくのが怖かった」


その声に、かつての“少女”が宿っていた。


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