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鋼の記憶-メモリー・オブ・メタル  作者: 風光Maybe
リミッターズ編
48/53

第48章:反撃の記憶

鋼片から生まれた刃が、ゲンの手で唸りを上げた。


それは既知のデータにも、戦術記録にも存在しない── ただ“ゲンという個”の中にしかない、唯一の記憶。


「いくぞ、カイ!」


「ああ!」


二人の動きが交錯する。カイが前衛、ゲンが後衛。 交差するタイミングすら、即興の連携。


「──まだ学習されていない“未来”を叩き込め!」


クロウの前に再び戦場が動く。 壁がせり上がり、杭が飛び出す。 だが今度は、その動きに“既視感”がない。


「……反応できてない?」 ナナが驚く。


「ううん、ちがう……“初見”なんだ」 リンが息を呑む。「この瞬間だけは、私たちが“記録の上書き”を上回ってる!」


槍が火を纏い、ゲンの刃が交差する。


「《連閃・焔斬陣れんせん・えんざんじん》──!」


ふたりの攻撃が、ついにクロウの前に割って入った。 仮面の端が、微かに欠ける。


「……なるほど。  個人の記憶……個の共鳴……  それは確かに、予測不能の一手となる」


クロウが静かに後退しながら言った。


「しかし、これで“全ての計算が崩れた”と思うのは早計だ」


彼の背後。 瓦礫の壁が、ゆっくりと開かれていく。 その奥から現れたのは──


義肢の少女。 静かな足音。 無数の記録映像を背に、彼女は歩いてきた。


「ユナ……」


ナナが名を呟く。


だが、ユナはカイたちを見ることなく、ただ真っ直ぐクロウの隣に立った。


「彼女の“記録”は、私の戦術に必要不可欠だ」


クロウが告げた。


「記憶の操作、視覚の再生、精神の撹乱──  そして何より、彼女自身が“自分を喪失しないため”に記録を使っている」


カイは槍を握り直す。


「ユナ……お前、本当にそのままでいいのか」


その問いに、ユナは答えない。


ただ、映像の中に流れる“妹の最後”を見つめていた。

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