第44章:鉄の仮面、静かに笑う
薄暗い空間の中、ラウルとの交戦の余波がまだ地に残る中── もう一つの“異質な気配”が、静かにその姿を現した。
瓦礫の影から、足音一つ立てずに現れた男。 銀の仮面。黒のジャケット。まっすぐな姿勢。 彼はただ、静かにそこに立っていた。
「……やっぱり、お前がリーダーか」
ゲンが低く目を細め、呟く。
だが男は、何も返さない。 ただ手を上げ、空気をなぞるように指を一閃──その軌跡に沿って、周囲の壁が無音で“削れた”。
「なっ……」
ナナがわずかに目を見開く。 その動作は、攻撃ですらなかった。ただ、“在るものを別の形にした”だけ。
「情報通りね……」 リンが静かに呟く。「物質分解・再構成型……触れたものを意のままに変える能力」
「《クロウ》……あれが、敵リミッターズのリーダーか」 カイが槍を構えながら言う。
クロウは、仮面の奥からゆっくりと視線を上げる。
その目に感情の起伏はない。ただ、淡々と観察するように、彼は言葉を紡いだ。
「……君たちの戦術、行動傾向、戦闘記録。すべて把握している」
「なんだと……?」
「この場所に残された鋼の“記録”は、全て我々が解析した。 “共鳴”は使わない。ただ、“記録”を読めば十分だ」
ゲンが低く唸る。「記録操作……こいつ、ユナと同じ系統か」
「ユナは“再生”だが、こいつは“解析と応用”だな……厄介な上位互換だ」
そのとき、クロウがもう一歩踏み出す。 地面に触れた指先が一瞬だけ輝いたかと思うと、瓦礫が変形し、無数の刃に変わって宙に浮かぶ。
「僕は指揮官でありながら── 最も効率的に戦場を“終わらせる者”だ」
それは、ただの宣言だった。 だが、そこには一切の誇張もなければ、怒りもない。
「全員、構えろ!」 ゲンの声が響いた瞬間、空気が裂けた。




