第43章:記録を喰う者
薄暗い通路。敵の残した拠点跡に、静かな足音が響く。
「……この先だな」
ゲンが先頭で立ち止まり、手を挙げて仲間たちを制止する。 カイ、リン、ナナがそれに続く。
「反応、複数。まだ動いてはいないけど、配置は明らかに“迎撃用”」
リンが冷静にタブレットを確認しながら言った。
「……戦うつもりなんだ。ここで“待ってる”ってことは」
ナナが静かに銃を構え直す。
その時、壁の陰から低く唸るような声が聞こえた。
「また来たのかよ、“共鳴坊主”」
ラウルだった。
「何度やったって同じだ。記録も想いも、全部“喰って”やるよ」
その身体には、前回の戦闘で受けたはずのダメージがほとんど残っていなかった。
「……再生してる? まさか……」 カイが目を細める。
「“喰った記憶”から、自己補完してるんだよ」 ラウルが口の端を吊り上げて笑う。
「鋼の記憶ってのはさ……結構使い勝手いいもんでな。 記憶に触れれば、壊れた部分だって“再構成”できる」
「お前……自分の身体すら、“喰った記録”で修復してるのか」 ゲンの言葉に、ラウルは肩をすくめた。
「壊れても、また作り直せばいいんだよ。記録ってのは便利だよなぁ」
ナナが鋭く銃を向けた。 「けどそれ、あんた自身の“想い”じゃない……誰かの記憶を使ってるだけ」
ラウルが鼻を鳴らす。 「知ったこっちゃねぇよ。俺はただ、“強くなりゃそれでいい”」
「──だから、お前は俺に勝てない」
カイが前に出る。 槍の先が、共鳴に呼応して輝き始めた。
「俺は、記憶を“背負って”進む。誰かの想いを、糧にしてでも未来を選ぶ」
「上等だよ、坊主」
ラウルが構える。 再び、記憶と記録が交錯する戦いが始まる。




