第42章:歪んだ共鳴
激突の余波で、地面が割れる。 カイとラウルのぶつかり合いは、瞬間的にその一帯の空気を変えた。
「──っ、やるじゃねぇか!」
ラウルが笑いながら後退する。 拳の表面に、薄く焼け焦げた痕が浮かび上がっていた。
「……想いを喰って力にするなんて、最低だ」
カイが静かに言う。
「お前に共鳴されるような記憶は、残したくない」
その言葉に、ラウルの笑みが深まる。
「いいねぇ、そういう反応がいちばん“味”あるんだよ。やっぱお前……最高だわ」
だがその時、不意に空気が変わった。
リンが顔を上げる。 「……精神干渉、来る!」
次の瞬間、視界が揺れる。
ナナが一瞬、銃を取り落としかけた。 「な……? なに、これ……頭の中に、誰かの……!」
瓦礫の陰から、すっと現れるひとりの女。 無表情のまま、義肢の腕を下ろして歩いてくる。
ユナだった。
「……あなたたちの記憶。とても鮮やか」
声は感情を欠いているのに、どこか優しい響きを帯びていた。
「再生できる。何度でも。あなたたちの“痛み”も、“決意”も」
その言葉と同時に、カイたちの周囲に映像のような“記憶”が投影される。 レオの最後。 リナが微笑んでいた最期の瞬間。 実験棟での出来事。
「やめろ──!!」
ナナが叫ぶ。 銃口を向けるが、ユナの姿は揺らいでいる。
「これが“リフレクション”。私の能力」
ユナの視線が、カイと交錯する。
「あなたの“共鳴”と違って……私は、過去に囚われてるの」
一瞬、ユナの表情に“苦しみ”が走ったように見えた。 だがすぐに、それは波紋のように消えていく。
「私は、妹の“記録”を見続けなければ、壊れてしまう」 「だから、あなたたちの記憶も、私の中で“再生”される」
「やめて……」 ナナの声が震える。
「人の痛みを……そんな風に使わないで……」
だがユナは答えない。 そのまま霧のように記憶の群れを残し、姿を消した。
ゲンが低く唸るように言った。 「……あれが、“もうひとつのリミッターズ”。」
カイは強く槍を握った。 「共鳴は……決して、誰かを傷つけるためにある力じゃない。俺は……あの力を、否定する」




