第41章:鏡写しの戦術
鋼に宿る共鳴は、静かにカイの胸を揺らしていた。
――あれは、ただの敵の武器じゃない。
使われ、折れ、想いを残した“誰かの証”。
その重さが、すぐ目の前の“影”と重なる。
銀の仮面をつけた男が、カイたちを真正面から見据えていた。
その視線は、感情を殺したように静かで、何も語らない。
その隣に立つ女。金属の義肢を静かに下ろし、口元は何も動かさない。
それでも、カイの指先が共鳴の“残響”を拾った。
「……記録の振動だ。過去を、見続けてるような……そんな感じがする」
カイの言葉に、ナナが僅かに眉をひそめる。
「それって、例の“ユナ”……?」
ゲンが短く頷いた。
「可能性は高いな。……だとすれば、あいつがこっちに来るのも、時間の問題だ」
そのとき、コンクリートを砕くような音が響いた。
「んじゃ、紹介がてら、ちょっと暴れさせてもらうぜ?」
崩れた柱の上から、もう一人の男が跳び降りる。
筋肉質な身体に、獣のような笑み。
足元を砕いて立ち上がったそいつは、口の端を吊り上げて名乗った。
「ラウル。……お前らの記憶、ちょっと借りたぜ」
「な……?」
ナナが驚くよりも早く、ラウルの足元に散った金属片が浮かび上がる。
「鋼ってのは便利だよな。残ってんだよ、“お前らの動き”が」
ラウルが跳ねるように一歩踏み込む。
その動きは、カイの一撃の“型”と酷似していた。
「模倣、じゃない……共鳴?」
リンが食い入るように見つめる。
「いや、“喰ってる”」
カイが静かに言う。
「この男は、想いを踏みにじることで……自分の力に変えてる」
ラウルが吠えるように笑った。
「正解ォ!感情とか、記憶とか、そんなもん──全部、喰らって強くなる。
それが俺の能力、《デヴォウア》。共鳴を……喰い尽くす」
次の瞬間、カイの前に拳が突き出される。
咄嗟に受け止めた槍が、ぎりぎりの軋みを上げる。
「チッ……!」
「さすがに初見殺しってほどでもねぇか……いいぜ。もっと喰わせろ、カイ!」
名前を呼ばれた瞬間、カイの中で何かが燃えた。
「なら……俺は、想いを“守る”」
握った槍に、共鳴の力が宿る。
「《焔断槍》──!」
炎が奔る。ラウルの拳と、カイの槍がぶつかり合った。
熱が走り、空気が軋む。
二人の間に、火花のような“記憶の残滓”が舞った。
「歪んだ共鳴なんかに、負けるわけにはいかない!」




