第40章:侵入者の残響
第七支部──かつて実験棟と呼ばれていた場所は、瓦礫と化していた。
鋼材がねじれ、焼け焦げ、崩れた天井の隙間からは灰混じりの陽光が差し込む。
「……静かすぎる。嫌な予感がするわね」
リンが周囲を警戒しながら、崩れた足場に目を向ける。
空気がよどんでいた。何かが、ここで起きた。けれど、その“痕跡”だけが不自然に整っていた。
カイは、倒れたスピアの破片にそっと手を伸ばす。
指先が触れた瞬間、微かな震えが走った。
「……これ、“想い”が残ってる」
共鳴。
鋼に刻まれた意志が、カイの中に流れ込む。
──突入。
──命令。
──沈黙する部隊。
「誰かが……ここで戦って、そして……」
言葉の途中で、カイは拳を握った。
「ここにいたのは、“俺たちと同じ”リミッターズだ。
ただの敵じゃない。“想いを刻んで、戦ってた”」
ナナが歩み寄り、スピアの根本を見て息をのんだ。
「この傷……“使用者ごと折られてる”。
兵器じゃなくて、これは“誰かの武器”だった。……そして、最後の武器でもある」
「敵が、リミッターズ……?」
リンの声に、ゲンが低く呟いた。
「つまり、俺たちと同じ異能を持つ連中が、組織的に動いてるってことだ。
単独行動じゃない。明らかにチームで、戦術を組んでる」
そのとき、風が止んだ。
カイが顔を上げる。
――見えた。崩れたビルの影から、ゆっくりと姿を現す黒いシルエット。
仮面の男。
その隣には、無表情の女。金属の義肢が太陽を反射して光る。
ナナが銃に手をかけた。
「誰……?」
カイの手に、鋼の破片が再び反応する。
「共鳴が……微かに。でも、狂ってる……“記録”が乱れてる」
その一言で、リンの表情が険しくなる。
「異常な共鳴反応。……彼女、ただの敵じゃない。何かに“囚われてる”」
「……あの女が“ユナ”かもしれないな」
ゲンの声には、確信めいた響きがあった。
敵の《リミッターズ》チーム。
彼らとの戦いが、これから始まる。
だが、カイの心には、一つの疑問が刻まれていた。
──“この鋼に刻まれた想い”は、果たして敵のものなのか?




