第36章:ログアウト
静寂。
レギオンが消滅し、記録空間は音を失った。
何も語らない世界。
それでも、確かに“終わった”という手応えだけが残っていた。
三人は、崩れゆく空間の中心で静かに立っていた。
「……終わった、んだよな」
カイが呟く。
「うん。ちゃんと、自分で終わらせたんだよ」
リンの言葉に、ナナも小さく頷いた。
「もう、あの記録には縛られない。私たちは、ここから始める」
空間の中心に、再び光の柱が立ち上がる。
それは出口──“現実”への帰還を告げる道標だった。
《ログアウトを確認》
《記録保持:完了》
《三名、現実世界への転送準備完了》
「行こう。……帰るぞ、俺たちの世界へ」
カイがその光へと足を踏み出す。
リンとナナも続く。
その背中に、迷いはなかった。
歩くたび、空間がひび割れていく。
すべての記録が、音もなく消えていく。
でも──
「リナ、ありがとう」
「レオ、またね」
「……過去の俺。よくやったな」
それぞれが、心の中で一言だけ呟いた。
そうして三人は、光に包まれて──
──目を覚ました。
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眩しさと、乾いた風の匂い。
「っ……」
カイが最初に上体を起こす。
その隣に、ナナとリンも倒れていた。
瓦礫の地面。薄明かりの空。
けれど、空気は確かに“現実”だった。
「……帰ってきた、のか?」
ナナが、目を見開いたまま空を見上げる。
リンがそっと頷いた。
「うん。記録も、あの空間も、全部……終わったんだ」
カイが立ち上がり、周囲を見渡す。
誰もいない。
けれど、この地で彼らは、“もうひとつの戦い”を確かに終えた。
「さあ──これから、どうする?」
ナナが笑う。
「なんでもできるよ。
記録に縛られない、今の私たちなら」
リンもそっと手を重ねる。
「もう、怖がらない。何があっても、この二人となら」
カイが、その手の上に自分の手を重ねる。
「なら、まずは……歩こう。
俺たちの足で、未来へ」
三人は肩を並べて、歩き出した。
朝焼けの空に、はじめて見る“本当の光”が差し込んでいた。




