第35章:記録防衛機構《レギオン》
光が砕けた。
まるで割れた水面のように、空間が震え──
その“奥”から、何かが這い出てきた。
無数の脚、うねる装甲、金属のうなり。
それは人型とは言いがたい巨大な構造体。
機械と記録の残滓が混ざり合った“意志なき守護者”。
《最終記録保全プログラム──コードネーム:レギオン》
《アクセス権限:破棄対象》
《記録保全のため、適合者を排除します》
「来るよ……!」
ナナがすでに構えていた。
リンの背後で、記録の輪が起動音を放つ。
「行ける?」
カイが問うと、リンが笑った。
「うん。今なら、“誰かの記録を守るためじゃなくて”、
“私の意志”で立てる」
「じゃあ──行くぞ!」
カイの手元に、紅の刃が顕現する。
『《焔断槍》
――ブレイズ・ランサー』
ナナもまた銃を構え、深く息を吸い込む。
「レオ、見てなさいよ──あたし、もう止まらないから」
レギオンが動いた。
その巨体とは裏腹に、鋭く、正確な突進。
一撃で地面が裂け、空間の端が消し飛ぶ。
だがカイが迎え撃つ。
「ハッ──!」
真紅の槍が軌道を描き、レギオンの装甲に火花を散らす。
「装甲、厚すぎる……!」
「でも、無敵じゃない!」
ナナが横から射撃を浴びせ、関節部を狙う。
リンの記録輪が輝き、敵の攻撃タイミングを微かに“ずらす”。
「いまだ、カイ!」
「任せろッ!」
跳躍と共に、カイが高く舞い上がる。
槍に纏う炎が、一瞬、白く燃え上がる。
『《断界焔槍》
――バースト・エッジ』
重力すら貫く一撃が、レギオンの頭部装甲を貫いた。
──しかし、それだけでは終わらない。
崩れたかに見えたレギオンの外装が、再構築を始める。
「自己修復機構付き……っ!」
リンが表情を歪める。
「じゃあ、止めるしかない。
この記録の空間ごと、“すべて”を終わらせる方法で」
三人が集まる。
共鳴が、走る。
「一人じゃできない。でも、三人なら──」
カイ、リン、ナナの力が重なり、空間に大きな記録圧が生じる。
《共鳴適合率:100%》
《記録連結シーケンス起動》
「これが──!」
「私たちの──!」
『《終結共鳴》
――オーバーコード・エクリプス』
解放された光が、レギオンを包み込む。
記録の守護者は、無音のまま、その存在を焼かれ──
──消えた。
そして、静寂が戻った。




