第33章:再起動する記録
──静かな揺れが、空間全体を包み込んだ。
オリジン計画の記録領域。
その中心部に、再び三人が揃って立っていた。
カイ、リン、ナナ。
それぞれが自分の記憶と向き合い、心の奥底から“何か”を得て戻ってきた。
「……そろった、か」
カイが静かに口を開いた。
「うん。なんか、全部が変わったってわけじゃないけど……でも、ちょっとだけ違う景色が見える気がする」
リンがそっと答える。
ナナは小さく頷いた。
「もう、あの頃には戻れないけど……進むしかないってことは分かった」
三人の足元で、何かが反応したように光を放つ。
《オリジン計画:最終フェーズへ移行》
《適合者3名、記録統合完了》
《全領域の記録ロック、解除》
その声と同時に、周囲の空間が音を立てて崩れ始めた。
瓦礫、廃墟、機械、記録の断片──
全てが渦を巻いて、一つの巨大な“空洞”を形成していく。
「これは……?」
ナナが一歩踏み出そうとしたその時。
中心部から、何かが浮かび上がった。
それは──黒い、無音の球体だった。
まるで光を吸い込むように、存在を拒絶するそれは、
見た瞬間に、誰もが「嫌な予感」を本能で感じ取った。
「……アレが、オリジンの“コア”か?」
カイが一歩前へ出る。
しかしその瞬間、周囲の空間が変質した。
黒い球体の周囲に、**幾つもの“記録の影”**が浮かび上がる。
顔のない兵士。実験に囚われた子ども。過去に死んだ仲間たち。
その全てが、三人の前に立ち塞がるように現れた。
「……これは、今までの記録の残滓?」
リンが眉をひそめた。
「いや、“拒絶反応”だ。オリジンは俺たちを受け入れようとしてない」
カイの声に、緊張が走る。
「行こう」
ナナが言う。
「また“選ばなきゃいけない時”が来た。
でも今度は、逃げる理由がない」
三人が、再び前を向く。
光と闇が交錯する空間で、
記録に選ばれた者たちの、最後の戦いが始まろうとしていた──。




