第24章:俺が俺であるために
火の粉が舞い、崩れた天井から光が差し込む。
焼け跡の中で、カイと“もう一人のカイ”は向かい合っていた。
互いに槍を構え、呼吸を整える。
もはや言葉はない。語るべきものはすべて、刃に込められていた。
幻のカイが先に動いた。
鋭く、的確に、まるで迷いのない一撃。
だが、カイはそれを受け止めた。
腕が痺れるほどの衝撃。しかし、もう後ろには引かない。
「お前の言うとおりだよ。俺は、あの時“選ばなかった”」
「でも、だからこそ今、選び続ける。
生きて、迷って、それでも“俺は俺として”立ち続ける!」
瞬間、カイの槍がうなった。
それはこれまでの型ではない、“今の自分”が生み出した動き。
幻のカイが驚いたように目を見開く。
「……そんな戦い方、俺は知らない」
「当たり前だ。
お前は“あの時の俺”でしかない。
だけど俺は、あの時から歩き続けた“今の俺”だ」
炎が吹き上がる。
カイの手に握られた槍が、一瞬、紅蓮の火を纏ったように輝いた。
『《焔断槍》
――ブレイズ・ランサー――』
それは、過去を焼き尽くし、“今”という意志で貫く、灼熱の一撃だった。
幻のカイが、真っ直ぐにそれを受け止める。
「……見事だよ、今の俺」
槍が貫いた瞬間、幻の姿は静かに崩れ、光の粒となって空に溶けていった。
「さよならだ、過去の俺。……見てろよ。ここから先、俺が“選んだ未来”を」
その姿が光に溶けていくと同時に、焼けた廃墟も音も、すべてが静かに崩れた。
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気づけば、カイは薄明かりの中に立っていた。
地面は硬く、空気は冷たい。現実の感触だった。
誰かが近づいてくる。
「カイ!」
ナナの声。
そのあとを追うようにリンも駆けてきた。
「……無事、だったんだね」
「まあな」
カイは静かに笑う。
長い長い記憶の中の旅を終えた、その顔だった。
「終わったのか……?」
「いや、ようやく始まるところだよ」
遠くで何かが崩れる音がした。
オリジン計画――
その記録の空間が、いま、ゆっくりと変質を始めていた。




