第23章:問いかける影
燃え盛る廃墟の中。
過去の“選ばなかった未来”が、炎となってカイを飲み込もうとしていた。
目の前には、あの日、自分が助けられなかった仲間の幻影。
そしてそれを守るように、もうひとりのカイ──「あの時の自分」が立ちはだかっていた。
「お前が置いてきたのは、俺たちじゃない。
“自分自身”だろ?」
その言葉とともに、幻のカイが動いた。
槍を手に、猛然と突っ込んでくる。
その動きは、自分自身だからこそ分かる。
無駄がなく、そして容赦がなかった。
「くっ――!」
カイはギリギリでかわし、火の中で反撃を繰り出す。
だが、幻は寸分違わぬタイミングで迎撃してきた。
「……嘘だろ」
「当たり前だろ。“お前”なんだから」
幻のカイが言う。
「技術も、記憶も、覚悟すら──俺とお前に違いはない。
ただ、俺は死ぬことで仲間を守り、お前は生きることで誰かを見捨てた」
「……っ」
「だから問う。“今のお前”に、誰を守れる?」
一撃。
さらに一撃。
炎の中で、戦いは続く。
まるで、“今の自分”を否定し尽くすように。
カイは押されていた。
「守りたいなんて、言うなよ。
お前は、自分を守っただけだ」
苦しげな幻の声。
その言葉が、カイの胸を深く抉る。
だが、その時だった。
誰かの声が、記憶の奥から響いた。
──「でも、それでも生きて」
──「お前の未来は、まだ続いてるんだから」
リンと、ナナの声だった。
そうだ。
自分はただ逃げたんじゃない。
逃げた先で、また誰かを救おうとしてきた。
「そうかよ……なら──」
槍を握る手に力が入る。
「生きてる“今の俺”で、お前を超える!」
火が爆ぜた。
二つの槍が交差する。
炎の中で、決着の時が迫っていた――。




