第22章:選択の刻
目の前に広がっていたのは、崩れかけた廃ビルだった。
けれどカイには、それがどこか懐かしかった。
「……ここは、あの日の……」
扉を抜けた先に現れたのは、かつて彼が所属していたスカベンジャーの拠点。
まだ焼ける前、まだ仲間たちが笑っていた頃の姿。
視界の端に、見知った顔がある。
「ユウト」「ミナ」「キッカ」──名前を忘れたくても忘れられない者たち。
彼らは気づかぬ様子で、談笑していた。
まるで、そこにカイはいないかのように。
「これは……記録、なのか?」
「違うよ。これは“選ばなかった未来”」
横から声がした。
振り返ると、そこにいたのは“あの少年”。
自分と同じ顔を持つ、もうひとりのカイ。
「俺は、あのとき“逃げなかった”方のカイ。
この拠点を捨てず、仲間と一緒に死んだカイだ」
「……!」
「お前は違う。状況を判断して、仲間を置いて逃げた。
それは間違ってない。お前は、今でも生きてる」
「でも……」
「でも、それが正しかったと、お前はまだ言えないだろ?」
少年は手を差し出す。
「じゃあ、選んでみろよ。
“逃げずに死ぬ”か、“生きて悔いる”か」
視界が変わる。
燃え盛る火。崩れる天井。倒れていく仲間たち。
「……そうだ。俺は、あの日、選べなかった。
あいつらを見捨てたくなかった。でも……怖かった」
カイの手が震える。
「けど今は違う。俺には、背負ってるもんがある。
逃げなかった仲間たちの分まで、生きて見届けるって決めたんだ」
「その覚悟、本物か?」
少年の目が鋭くなる。
次の瞬間、炎の中から“異形の敵”が現れた。
それは、あの日カイたちを襲った侵蝕体の姿をしていた。
ただし、異様に巨大で、すべての“怒り”を凝縮したような形。
「これは、お前が逃げたことで“生まれた記憶”。
乗り越えられなければ、お前はここで終わる」
カイは深く息を吐いた。
「上等だよ。
逃げなかったお前にも、死んだ仲間にも、見せてやる。
俺が“何を背負って、今を生きてるか”ってことをな」
槍が輝く。記憶の中で、カイが動き出す。




