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第21章:過去の扉

光が揺れる。

揺らめく世界の中で、カイは目を覚ました。


だが、そこは現実ではなかった。


見覚えのある、狭くて古い団地の部屋。

小さな台所、剥がれた壁紙、埃をかぶった机。


「……なんで、ここが……?」


少年時代の記憶。

両親のいない家で、ひとりきりの時間を過ごしていた場所だ。


だが、この空間には何かがおかしい。

「時間」が止まっている。すべてが静かで、冷たい。


カイは奥の部屋に足を踏み入れた。

扉を開けると、少年がいた。――自分自身だ。


「……あんたは……」


「カイ、だよ」

「でも、お前とは違う“選ばなかった方の俺”だ」


少年のカイは笑わない。ただ、こちらを見つめていた。


「お前は選んだ。あの時、逃げることを。

 一緒にいたあいつを見捨てて、自分だけ生き残る道を選んだ」


カイは言葉を失った。


「……それは――」


「全部、お前の記憶だよ。俺は、ここで“待ってた”だけさ。

 ずっと、後悔って名前の檻の中でな」


カイの周囲が歪み始める。

次々と現れる“見覚えのある過去”。


仲間たち。失われた名前。

誰かの声。「――なんで俺を助けなかったんだよ」


鋭く、重く、胸に突き刺さる問いかけ。


記憶がカイを飲み込み、空間はますます歪んでいく。


「逃げたっていいんだよ、カイ。

 でもその代わり、“選ばなかったもの”は、ずっとここに残る」


少年のカイは微笑んだ。

それは、哀しみに満ちた、優しい顔だった。


「ようこそ、“過去の扉”へ」


目の前の扉が開いた。

その先にあるのは、カイが最も“向き合いたくなかった過去”――。



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