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第14章:記録の檻

霧の中、観測兵との戦闘は想像以上に激しかった。


カイの槍が軌道を読み切られ、何度もかわされる。

攻撃の反応速度――ゼロより速い。

それだけでなく、カイたちの過去の動きや戦法が“学習”されているようだった。


「こいつ……前の戦闘を、全部再現してきてる……!」

カイが呻くように言う。


ナナがバーストショットを撃ち込むが、精密な回避で無効化される。

「ふざけんな、なんでこっちの動き読めてんのよっ!」


リンが焦りの表情を浮かべ、思わず叫ぶ。

「……ねぇ! 私たち、これ、どこかで“見られてる”んじゃないの!?」


その言葉に、カイとナナが動きを止めた。


――見られている。


ゼロが「記録を送信」していた。

観測者は、その戦闘ログを元に、新たな戦闘AIを訓練しているのかもしれない。


「つまり……こいつらは“俺たちの記録”から造られた」

カイの目が鋭く光る。


だが、その時。


リンの金属共鳴が暴走しかける。


「やめて……! 頭の中が……誰かの声がいっぱい入ってくる……っ!」


カイがリンの肩を抱き止める。


「大丈夫、落ち着け。今の君は“記録の檻”に囚われかけてるんだ」

「……檻?」


「それは過去の記憶。戦って、傷ついて、死んでいった人たちの残響。

でも、そこに囚われたら、“君自身”が消える」


リンは必死に歯を食いしばる。


その瞬間、彼女の意志が波紋のように金属へ広がった。

――だが、今までと違う。乱れた記憶ではなく、はっきりとした“想い”が一つに集まっていく。


「……私は、私のままで、誰かを守る」


その言葉と共に、リンの周囲に“透明な障壁”が展開された。


観測兵の突進を真正面から受け止め、鋼の壁が衝撃を弾き返す。


「いまなら、やれるッ!」


カイとナナが同時に飛び出し、連携攻撃を叩き込んだ。


観測兵が一瞬のうちに崩れ、霧の中に静かに沈んでいく。


リンはその場にへたりこみ、息を荒げながら呟いた。


「……こわかった。でも、守れた……よね?」


カイは頷いた。


「守った。君の意志で。君自身の力で」


ナナは焚き火用のクロスを広げながら、冗談交じりに言う。


「よし、じゃあ休憩。戦い終わったらまずメシ。これ鉄則だから」


霧はまだ街の一部に残っていたが、確かに今、風が吹いた。


“記録”ではなく、“今”を刻むように。

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