13/53
第13章:霧の境界
翌朝。
街に薄い霧がかかり始めた。
「……変じゃない? 天気は晴れのはずだよ」
ナナがぼそっとつぶやく。
霧は広がっていき、遠くの景色がどんどん白に飲まれていく。
その中に、不自然な“影”が見えた。
「動いてる……?」
リンが目を凝らす。
霧の中に立つ、黒い影。
人の形をしているが、まるで“記録映像”のように不気味なノイズが混じる存在。
「……侵蝕体じゃない。違う、これ……何かが“投影されてる”」
カイが鋭く言った。
その時、声が響いた。
《対象:観測開始。記録モード移行》
《行動ログを取得――感情反応を分析中》
ナナが叫ぶ。
「見られてる……!?」
そして霧の中から一体の影が跳ねた。
人間の姿を模した装甲型の個体。
だが、動きには“感情”すら感じさせる異様な自然さがあった。
「来るよ!」
リンの声と共に、カイが槍を構える。
彼らは知らなかった。
それが“新世代の観測兵”――実戦記録から生み出された、進化型の実験体であることを。




