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第12章:残された声
夜の闇に、焚き火の音だけが優しく響く。
リンは火を見つめながら、小さく口を開いた。
「……ありがとう、わたしのこと、助けてくれて」
ナナが少し照れたように頭をかく。
「別に礼なんかいいって。あんたがあんたの力で、生き抜いただけでしょ」
カイは黙って、手元の金属片を見つめていた。
ゼロの残骸の一部。かすかに熱が残っている。
触れると、記憶が走る。
――戦闘、命令、従属。
その中に、かすかに混じる“抵抗”。
「……この個体、完全に人間の意識を消されてたわけじゃない」
ナナが険しい表情になる。
「つまり、意識があるまま戦わされてたってこと?」
「……たぶんね」
カイはその金属片を布で包んだ。
「だからこそ、忘れちゃいけない。戦った奴らにも、何か“残したいもの”があったかもしれない」
リンが小さく頷いた。
「それが……“残された声”なんだね」
夜が明けるまで、誰もその場を離れなかった。
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