60. 冷たいアイスと猫の耳
「できた! シホさん、味見してみて!」
「本当にできたんですか!? すごいですね」
ロゼッタが作りたてのアイスクリームを持ってきた。
私のふわふわしたイメージを伝えただけで、よく作れたなあと感心せざるを得ない。
ロゼッタにすすめられるままに、さっそく一口食べてみる。
「――美味しいです! 私、出来立てのアイスクリームって初めて食べました! こんなにふわふわにできるんですね!」
「どれどれ。うん、美味しい。冷たいのに柔らかくて口溶けがなめらかなんだよねー」
「わたしにも食べさせなさいよ!」
ロゼッタと二人で味見をしていたら、クリスが催促をしてきた。
たしかに。クリスにも味見をしてもらわなくちゃ。
「はい、クリス。あーん」
アイスをすくったスプーンをクリスの口に近づけると、クリスが目を丸くして私を見つめた。
「えっ、ちょっとシホ、こんなところで」
どうかしたのかな、と首を傾げると、クリスは頬を染めながら口を開けた。
「も、もう、しょうがないんだから! あーん。――冷たくて甘いわ! ふ、ふーん。悪くないじゃない」
「……ああ、どうも」
クリスはアイスが気に入ったようでご満悦だった。それを見て苦笑いを浮かべるロゼッタ。
お店の入り口近くで立っているユイは、興味津々といった様子でこちらを見ている。
「ユイさんもどうですか? 冷たくて美味しいですよ」
「ユイもいいの?」
「もちろんいいよ。おいで。ユイちゃんも味見してみて」
ロゼッタが呼ぶと、ユイはぴょこぴょこと跳ねるように走ってきた。
そしてアイスを一口食べると、目をきらきらと輝かせた。
「つめたーいっ! なにこれすごーい!」
「どう? 美味しい?」
「うんっ! すっごく美味しい! ミーシャにも食べさせてあげたいなあ」
「ミーシャ?」
「あ、えっと、一緒に住んでて……」
「シホさんは見たことなかったっけ? ほら、顔に仮面つけてる子」
ロゼッタがそう言いながら顔の半分を手で覆った。
「ああ、以前お店に来ていた方ですか。たしかお付き合いされているんでしたよね」
「う、うん……」
ユイはうなずきながら、表情を隠すように顔を伏せた。
恥ずかしがってるのかな……?
そんなこんなで、すっかり長居をしてしまった。外はもう夕方になっていて、日差しもいくぶんか和らいだようだった。
「シホさん、本当にありがとう! あ、クリスも一応ありがとね」
「一応ってなによ。まあ、アイスクリームが美味しかったからいいけど」
美味しいアイスを食べて、クリスもすっかりおとなしくなっている。
店を出るときにはロゼッタが外まで出て見送ってくれた。
「新生メイド喫茶きゅあかると(夏)! これからもがんばるからまた来てね!」
手を振るロゼッタの頭についている猫耳が、ぴょこぴょこと動いた。
「えっ、その耳、動くんですか?」
「そりゃそうだよ。生えてるもん」
ロゼッタが猫耳をピンッと立ててみせる。
言われてみれば、生えている毛や内側の皮膚の質感が生っぽい。
ああ、そっか。獣人とのハーフ。リルカの場合はしっぽだけだったけど、耳に特徴が出ることもあるんだ。
「ロゼッタさんってハーフだったんですね」
「言ったことなかったっけ。……え? じゃあシホさんはこの耳をなんだと思ってたの?」
「なんか、趣味で付けているんだと思ってました」
「そんな人いるわけないじゃん……」
「でも、その耳、とっても可愛いですよ」
「えっ、あ、ありがと、シホさん。耳が可愛いなんて言われたの初めてだよ。ちょっと照れちゃうなあ……」
ロゼッタの頬がぽっと赤くなる。
「~~っ! 帰るわよ! シホ!」
クリスが私の手を強引に引っ張った。
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