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ひよわな私の異世界ぐらし  作者: ささみし
ひよわな私と長い雨
57/75

57. ぽかぽか陽気と魔道具屋さん

 季節外れに暖かい日だった。

 昨日と比べて気温はぐんと上がり、朝からぽかぽか陽気だ。

 朝食を食べているクリスはうっすらと汗を浮かべていて、ときどき暑そうに顔を手であおいでいる。

 私はちぎったパンをぱくつきながら、ゆうべ起きたことについて考えていた。

 

 私に吸い込まれていった、あの青い光。

 昨日見たものは、死んだ魔物から抜け出た魔力が魔晶石に結晶化するときの光景とよく似ていた。

 私が魔力を集めている?

 

 

 あの光が魔力だとすれば、ごはんをたくさん食べた日にあれが起こらないのにもうなずける。ほとんどの食べ物にはわずかに魔力が含まれているからだ。

 そして、魔力が原因であれば食べ物以外でも対処はできる。

 

 世の中には便利なものがあって、魔力回復薬という文字通り体に魔力を補給するための薬が売っているのだ。

 冒険者の魔法使いが使うものらしいけど、それさえあれば、このおかしな現象を止められるかもしれない。

 

「――シホ、ねえシホったら」

「え? なんですか、クリス」

「なんですかじゃないわよ。ぼーっとして」

「すみません、ちょっと考え事をしていて。そろそろ戻りましょうか。ごちそうさまです」


 私が立ち上がると、クリスはぎょっとした顔で私を見た。


「具合でも悪いの? まだ一人前しか食べてないわよ?」

「あんまり食欲がないだけですよ。暑さのせいでしょうか」

「うそっ! おかーさーん! シホさんが食欲ないってー!」

「えっ、食欲がないって、あのシホちゃんが……?」


 リルカとライラにも心配されて、「熱でもあるんじゃない?」なんて言われてしまった。

 

「大袈裟ですって。大丈夫です。本当に体の調子はなんともないですから」

 

 心配してくれるみんなをおさえて私は退散した。

 

 

 お昼過ぎ、暑さでバテているクリスを置いて、私は一人で町に出ていた。

 

 目的の魔力回復薬については、ライカ亭にケーキを配達しに来たロゼッタに聞いたら教えてくれた。


「魔力回復薬? それなら魔道具屋さんに売ってるけど」

「それって、貸本屋さんの近くにあるお店ですか?」

「うん。でも、シホさんがそんなもの買ってどうするわけ?」

「ええ、まあちょっと試してみたいことがありまして――」


 お店の見当はついたので強い日差しの中を歩き回ることもなく、すぐに見つけることができた。

 

 アンティーク感のある建物に似合わず、店内は眩しいくらいに照明で照らされている。それがアンバランスで記憶に残っていたのだ。

 店に入ってみると、洞窟の中みたいにひんやりとした空気が体を包み込む。

 入ってすぐのところには照明器具が展示されている。テーブルに置くようなシンプルなランタンから、床に置くちょっとおしゃれな間接照明、天井に吊り下げるものもあるようだ。

 奥に進むと店の様子はガラリと変わり、棚が雑然としてきた。携帯用の着火装置や、様々な形の時計らしきもの、奇妙な形のグラス、鏡の中で魚が泳いでいるように見える不思議な水槽など、何に使うのかわからないアイディアグッズがたくさんあって、見ているだけでもなかなか楽しい。

 

 目的を忘れかけて店内を見てまわっていると、壁に飾られた短い杖みたいなものが目にとまった。

 他の商品はほとんど一点物なのに、これは同じものが棚にたくさん陳列されている。よく売れるのかな。

 

「マジカルステッキ……?」


 商品に添えられた札にはそう書いてあった。

 ファンシーな名前にしては装飾がシンプルだった。キリオンが持っていた杖よりもずっと短いけど、先端には同じように丸いものが付いている。ただし魔晶石というわけではなさそうだ。

 

 名前のとおりなら魔法の杖だけど、魔道具屋さんに売っているっていうことは、もしかしてだれでも魔法が使える杖だったりして?

 お値段は……安くはないけど手持ちのお金で買える程度。

 私はわくわくしながら、カウンターの向こうにいる店員さんに尋ねた。

 

「すみません、あそこに置いてあるマジカルステッキって、どんな魔法が使えるんですか?」


 メガネをかけた店員さんは目を丸くして答えた。


「魔法……? いや誤解させてしまって申し訳ないが、あれはただのマッサージ器だよ。まあ人によっては魔法に思えるかもしれないけどね」

「マッサージ?」


 店員さんが立ち上がって、こちらに歩いてくる。背の高い、細身の女性だ。近くを通ると煙のようなにおいが後に残った。

 

「試してみようか。……ほら、スイッチをいれると振動するんだ。ここを肩に当ててこりをほぐすのさ」

「そうだったんですね」

「この最新式は特にこだわっていてね……。取っ手の部分を伸ばしたり曲げたりできるし、振動数と強さと方向を自在に調節できるんだ。わたしの自信作さ……」

「へえー、便利そうですね」


 マッサージかあ。幸い、体の調子はいいので私には必要なさそうだ。そういえば、肩こりといえばライラがよく自分で肩を揉んでいたような。プレゼントしたら喜ばれるかもしれない。

 ……あれ? ちょっとまって、いま自信作って聞こえたけど、ということは。


「これ、店員さんが作ったんですか?」

「ああ。この店のものは全部わたしが作ったものだよ」


 見上げると目が合って、店員さんがにたりと笑う。美人だ。でも目の下にクマがういていて、顔色が悪いのでどこか不健康そうな印象を受けた。

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