表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひよわな私の異世界ぐらし  作者: ささみし
ひよわな私と秘密の話
53/75

53. その後

 あの薬の中身がただの砂糖水……?

 私はキリオンの持ってきた瓶に視線を送った。


「ああ、ちょうどこんな形の瓶です。これに砂糖水を詰めて1本100リムで売り付けていたんですからね。って……あれ? どうしてこの瓶がここにあるんです?」


 エミリーが不思議そうに首をかしげて、懐から瓶をひとつ取り出した。

 瓶の形は全く同じだ。

 

「それは……キリちゃんが持ってきたものなんです……」

「こっ、これは違うよ! 砂糖水なんかじゃないもん! だって、ちゃんと効果があるんだから!」


 椅子から立ち上がって言い張るキリオンだけど、少し顔色が悪い。

 エミリーがキリオンに尋ねる。


「この薬、中身を確かめてもよろしいでしょうか」

「い、いいけど……絶対、これは違うから……! これは本物だよ……!」


 キリオンは凍えているみたいに両腕で自分の体を抱いていた。

 瓶を手に取ったエミリーが蓋をあける。においを嗅いでみたり、手の甲に垂らしたりして確認し、最後にその水滴をぺろっとなめてみせた。

 

「やはり、ただの砂糖水ですね」

「う、うそだあっ!?」


 キリオンの叫ぶ声が店の外にまで響き渡った。

 

 

 結局、薬の効き目なんていうものはもともとなかったのだ。

 キリオンは、なんの効果もない砂糖水を精神向上の効果があると信じ込むことで元気になっていただけだった。


 それを聞いて、私は少しほっとしていた。中毒性があるような危ない薬じゃないとわかったから。

 でも当のキリオンは精神的なショックが大きかったみたいだ。

 すっかりしょげかえってしまい、ぎらぎらと輝くようだった目の光もすっかり消えていた。歩く気力すらわかないようだった。

 体を支えるようにして家まで送っていくと、部屋の入り口には薬瓶がぎっしりと詰め込まれた木箱が置いてあった。

 キリオンはそれを見て、膝から崩れ落ちた。

 

 エミリーの話では、犯人は捕まったけど被害者にお金が戻ってくるかはまだわからないという。

 

「キリオンさんの場合は被害の証拠物品が手つかずのまま残っていましたから、まだ望みはあるかと。お金が取り戻せるよう上にかけあってみます。ただ……あまり期待はできないでしょうね」

「そうですか……」


 返事をしながらキリオンをちらっと見ると、床で膝を抱えたまま身じろぎひとつしなかった。

 

 エミリーは部屋にあった薬瓶を木箱に詰めて全て回収していった。

 その間、キリオンは受け答えこそしていたもののどこか上の空で、エミリーが行ってしまうと、座ったままボーっと一点を見つめて動かなくなった。


 さすがに、この状態のキリオンを部屋に一人残して帰るわけにはいかない……。

 そうだ。

 

「キリちゃん、よかったら今日はライカ亭に泊まりませんか?」

「え……?」

「嫌なことはひとまず忘れて、みんなでパジャマパーティーをしましょう」

面白いと思っていただけたらブックマークや評価を頂けるとうれしいです

いいねや感想もとても励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ