無敵のラーメン
「じゃあこのラーメンを完食すれば、僕は無敵になれるのかい?」
「そうさ。もう誰も君に近づくことはしない」
僕は喜んでそのラーメンをかっ食らった。
どんぶり一杯のそれは濃厚な豚骨スープにたっぷりの細麺と海苔と半熟の煮卵と脂が飽和してスープに溢れ出ている分厚いチャーシューに、刻みネギが少しトッピングされた、少し豪華なラーメンくらいに見える以外特に気になるところは無いものだ。これを食べれば無敵になるらしい。
少しスパイシーというかなんというか、独特の辛みのようなものも感じられ、食欲をそそる。
十分程度で僕はそのラーメンを完食した。
「大将!これで僕は無敵なんだね!」
「そうさ。誰も君に近づかなくなるよ」
僕は意気揚々と店の外に出て町を歩きだす。そこまでは変わった感じはしないが、そのまま趣味のパチンコを打とうとパチンコ屋に入ると変化が訪れた。すれ違う多くの人が僕の顔を嫌そうに見つめ、特に何も考えず知らないおじさんの隣でパチンコを打っていたら、隣のおじさんが慌てて席を立ってどこかへ消えていった。
「どうやら効果は本当らしいけど、なんか寂しいな」
周りには誰もいないので、そう独り言を呟きながらパチンコを打っていたら、たまたま後ろを通りすぎたおばさんがわざわざ来た道を戻って僕に話しかけてきた。
「あなたニンニク臭いわね。ガムでも噛んだら?」