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その日は夕方ごろから雨が降っていた。
午前2時、カーテンの隙間から飛び込んでくる
青白い光と全身に突き刺す地響きで目が覚める。
どうやら、勉強をしていて寝落ちしていたらしい。
机に突っ伏していたからか、身体が重く感じる。
頭がぼんやりとしてしばらく机を見つめていたが、
一先ず喉を潤そうと台所へ向かい蛇口を捻る。
喉を鳴らして一気に水を煽れば、頭が冴えてくる。
気付くとあんなに家を叩いていた雷雨も
幾分かマシになり、小雨になっていた。
あの一際大きい落雷からどれくらい経っただろう。
何故だか無性に糖分を摂取した気分になったが、
あいにく買い置きのものは切らしてしまっていた。
(コンビニに行こう)
と財布を片手に、傘をさして外に出た。
昼間はよく行くコンビニでも
来店時間が違えば雰囲気が変わったように感じる。
適当にスイーツコーナーを物色し、
レジへ向かうとそこには
見慣れないオレンジ色の物体がレジに鎮座していた。
よく見るとそれは人の頭であるようだった。
ひとまずこのオレンジ色の主を起こさないことには
目当てのものにありつけない。
仕方なく、起こすことにした。
「あの、すみません....」
「zzz....」
オレンジ色の頭は少しも動かない。
規則正しい寝息が聞こえる。
「あの!すみません!!」
思い切って大きな声を出すとようやく、
オレンジ色の主は覚醒し始めたようだ。
『んにゃ...?ん....あ!?らっしゃっせ!ご注文をどぞ!!』
どうやら寝ぼけているらしい、威勢よく立ち上がったかと思うとしきりに腰元をぱたぱたと叩いている。
「あ、ご注文というか?お会計を...」
『.....?あ!?すみません!
待たせちゃいましたよね....。』
そう言ったオレンジ色の主のネームプレートを見ると
彼女は「佐倉」というらしい。
ご丁寧に初心者マークが付いていることから、
まだ働き始めたばかりのようだった。
「いえ、そんなに声かけてないですよ。
お会計、お願いしますね。」
『お預かりします!最近バイト増やしたんですけど、ちょっと体力が追いつかなくて...店長には内緒にして下さいね!...っていっても監視カメラとかに写ってるか〜ハハハ...』
想像通り、この佐倉という女性は
バイトを掛け持ちしていたようだった。
よく見るとあまり健康とは言えないような顔色をしていた。
『あんまり良くないってのはわかってるんですけどね〜、
学費稼がなきゃいけなくてね〜』
聞いてもいないのに随分と良く喋るなと
ある意味感心してしまう。
どうやら彼女は、自分で学費を捻出するために
連日深夜のバイトを入れているらしかった。
「ご自分で学費を稼がれるなんて、
同じ学生として、尊敬します。
俺なんか、親に学費も生活費も出してもらって、
バイトも少ししかやってないし...」
『え!?おにーさん学生だったんですか!?
てっきり社会人かと思ってました!』
「学生といっても大学院なので
年齢的には社会に出ててもいいくらいですね。
えと、佐倉さん?はどこの大学なんですか?」
突如始まったコンビニ店員との他愛のない世間話だったが、
ころころと表情が変わるこの女性に単純に興味が湧いた。
『あ、私は一回大学出たんですけど、
どうしてもやりたいことが見つかって
もっかい専門学校に入り直したんですよ。
だから専門学校の分は自分で出そうと思って。
なので実はおにーさんより年上かもです。』
話を聞くと彼女は自分より一つ歳が上なことがわかった。
「佐倉さん、俺、大和って言います。
生活圏内この辺なのでまた来ます。」
『大和さん、ですね!またよろしくお願いします!
ありがとうございました!』
こうして、俺はあの日
これからの人生を大きく変える人物と
出会うことになったのであった。