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TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女  作者: どくいも
第4章 師弟関係と死霊術師
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第43話 宴~夜~

――ともすれば、はじめは普通の祭であった。


「この教会とその祭神様、さらにはイオ様に乾杯!」


「う~ん、このお肉おいしい!

 初めは、浄化したとはいえ魔獣の肉なんてどうかと思ったが……これほどうまいとは!」


その祭は、始まりが遅いがゆえに夕方あたりから始まったものだが、その活気はかなりの物であった。

周囲には無数の焚火に照らされ、その光が教会を照らす。

皆が皆多くの食材や道具を持ち込みながらも、笑顔は途切れず。

純粋な神への祈りやただの食事につられた我欲でもない。

好奇心や自愛による参加や、魔獣や巨大鎧への興味、さらには歌や踊りを楽しみたいから、などなど。

参加者の様子はまさに十人十色といった所だ。


「この鎧スゲー!

 こんな大きい鎧なんて誰が着れるんだ?」


「ふ~む、このクラスの呪物をまさか一日も経たずに浄化できるとは……

 これは、司祭の腕前はもちろん、この教会は相当な力を持っていそうだな」


なお、参加者自体も純粋に村人だけというわけではなく、いつもの旅商人や流れの冒険者。

さらには、ストロング村の再開発のための増加人員や滅びた近隣開拓村からの流民など。

祭りの参加者も、相当な種類の人がこの祭りに参加することになった。


しかし、そんな事情や出身は違う人々とはいえど、その人々の顔はどれも一様に笑顔であった。

祭の責任者として、教会の建設に携わった者として、これほどうれしいものはない。


「は~い、それじゃぁ今から酒を配りますよ~!

 基本は一人一杯まで!

 喧嘩はご法度だよ!」


「うおおおぉぉぉ!!!ただ酒だぁああ!!!

 イオ様最高!!冥府神様最高!!」


なお、せっかくの機会なので、自分で作った酒を祭事と称して、協会公認で浄化作業をしたり。

それを祭りごとと称してふるまって、試飲させる程度はセーフであろう。


「おお、冥府神の加護付きの酒とはこれは珍しい。

 ……うん!普通においしい!」


「うん、冥府神の酒って言うから、飲むと大変なことになるかもと思ったが……。

 普通に度数の濃いめの、いい酒だな」


「というか、水がほとんど混ぜられてないだけで、十分うまい」


なお、酒の感想はこんな感じであり、味も何もあったもんじゃない。

実に酒の奢りがいのないやつらである。


「へ、へへ!とってもおいしいでひゅ!

 私、こんなおいしいお酒は初めてです!これだけで信仰に目覚めちゃいそう!

 と、いうわけで、もう一杯お酒をいただけたりは……」


「あ、ベネちゃんはだめ。

 この後のこともあるから」


いや、ごめんて。

この祝祭が終わったら、もう少し飲ませてあげるから。

だから、上目遣いの涙目はやめて、色々とくるものがあるから


「というか、イオも焦らさずに僕らにこの建築祝いの祭りがあることを、教えてくれたらよかったのに!

 そしたら、僕らももうちょっといろいろと準備できたかもしれないのに」


「それに関しては、わざとだよ。

 あんまりこの祭りや教会の存在を周囲に知らせたくなかったからね」


「え~?

 こんな目出たい事なのに~?」


寂しそうに空になったカップを見つけるベネちゃんを他所に、ヴァルターは不思議そうにそう尋ねてきた。

まぁ確かに、これは一見ただ目出度いだけのお祝い事に見えるだろう。

行えば、教会としての完成度が高まるし、村人含む周囲の住人からの評判もあがる。

出費に関しては、今回は半分は村長が出してくれているし、そこまで深く考える必要はない。


「でもさ~、ここの教会の完成度が高まると……ねぇ?」


「え、なにその含みのある言い方は」


「いやいや、これはあくまで私の予想であって、杞憂かもしれないけど。

 最近の吸血鬼騒動やらダンジョン騒動を考えると、可能性は高いかなぁって」


そもそも私としては、ここまで人が集まらず、あくまで静かに建築祝いの祭りをしたかったのだが、この盛り上がりっぷりからして、もうそれは諦めている。

派手にやるならせめて、村人全員参加を義務付けて開催したぐらいだ。

幸い、今この場において、旅人含め、ほぼ全員このギャレン村にいる人が集まってくれたし、これなら、最悪の事態に陥っても大丈夫だろう。


「も~!何か知ってるならそんなにもったいぶらずに教えてよ~?

 僕たちは仲間だろう!!」


ヴァルターが、こちらに距離を詰めながらそう言ってくる。

というか酒を飲んでいるせいか、何時もよりも距離感が近いな。

できれば、君もあんまり酒を飲んでほしくはなかったけど、こればっかりは仕方ないかな。


「……残念ながら、その予想は的中した様だぞ」


そのセリフと共に人込みをかき分けて、デンツ兄弟子がこちらへとやってきた。

表情は真剣であり、その手には杖を持っている。

どうやら、事態は思ったより厄介な方向に転がってしまったようだ。


「やっぱり、来ちゃいましたか?」


「まぁ、俺にとっては予想通りだがな。

 これほどの祭りを、冥府神だけではなく、冒険神や太陽神の前でやるのだ。

 なればこそ、こうなるのは必然といえるだろう」


それとともに感じる強大な、陰の魔力。

そしてそれは自然的なものではなく、強烈な激情と悪意を秘めたものであり、確かな目的をもってこちらへと向かってきた。


「……!!まさか、これは……!!」


「皆さん!急いで、教会の中やその周辺まで下がってください!

 オッタビィアちゃんは結界の強化を!

 ベネちゃんは誘導の手伝いを!」


ヴァルターに酔い覚ましの水を渡しつつ、村人各々に指示を出していく。

どうやら、皆も空気が変わったことを感知したのか、先日の盗賊騒ぎの教訓か。

素早く避難のために行動を開始してくれた。

これなら、無理なく相手を迎えうてるだろう。


「つまり、これは……!」


「そうだね!

 教会の建築を快く思わない……敵襲ってことだよ!!

 ヴァルター、ベネちゃん、構えて……くるよ!!」



「ルオオオオォォォォォ

 偽りの神を讃える、汚物共めがぁあああ!!!!

 この吸血鬼竜【ドラゴン・ブラッド】様が、龍神様に代わって、裁きを下してやるうぅぅぅ」


そうして、祭りを楽しんでいた私たちの元に現れたのは、人語を話すそこそこ大きな【飛竜】の姿であった!!



★☆★☆



――もちろん、一般的に考えて、龍種とは凶暴な生命である。


硬い鱗に高い魔法耐性。

鋭い爪と牙に、疾風のごとく飛ぶ翼。

高い生命力や豊富な魔力なんかも総合すれば、その強さは言わずもがな。

この世界において、全ての生命体の頂点に立つ存在。

そんなのが自らの意思を持って、邪神の加護を持ち、こちらに襲い掛かってくるのだ。

おそらく、もしここがただの開拓村なら、コイツの存在だけで、この村は滅んでいただろうに違いない。


「でもさすがに、完成した教会と司祭相手に、吸血鬼がほぼ単騎特攻は無謀を超えて、自殺行為だよね」


「だろうな」


「おのれ、おのれ、おのれえぇえええええええ!!!!」


というわけで現在私たちパーティはデンツ兄弟子と協力して、この吸血鬼竜とやらと防衛及び、抗戦中である。


「えぇぇい!!うっとおしい!!

 燃え尽きろぉ!!!」


その吸血鬼竜がその口を開けるとともに、放たれるは漆黒の炎。

闇の魔力と邪神の加護により、まるでタールの様にまとわりつき、水でも消えぬ強い可燃性を持ちながら、毒の煙を発する。

そんな地味ながらも強力な、呪いの火炎ブレスである。


「「「神々よ、我らを守りたまえ!!!」」」


しかし、そんな厄介な炎も教会内部にいれば何のその。

オッタビィアやデンツとともに、守りの奇跡を唱えれば、あっさりとその炎は弾かれ、消えるかのように浄化されてしまう。


「そら、隙ができたぞ!

 あわせろ、妹弟子」


「そっちこそ、ヘマしないでくださいね!!」


そして、ブレスを吐き終わった隙をつき、私とデンツでその死霊術を行使する。


「奔れ!!双頭巨梟霊ツイン・ダークオウル・ガイスト


空中で呆けているその吸血鬼竜に向かって、霊体でできた巨大な梟が音もなく接近し、その頭上を取る。


「トガちゃん!全力で振り切れぇええ!!!」


「……ぎ!!」


そして、その巨大な梟の霊体に乗ってた、《《巨大な動く鎧》》がその手に持つ、巨大すぎる槍を振り下ろす。

ブレスを吐いたスキを突いたとしても、その吸血鬼竜の体は固い。当然、まともな攻撃では、かすり傷すら与えられないだろう。


「ぐるおおおぉぉぉぉ!!!!!」


しかし、残念ながら、その一撃はただの一撃ではない。

オーガほどの大きさの鎧から繰り広げられる、大の大人2人がかりでも運びきれぬほどの巨槍の一撃は、それが生命体ならば、まともに耐えられるわけもない。

かくして、その一撃を受けたその吸血鬼竜は、惨めな悲鳴を上げながら、空中から叩き落される。


「……ぐおおぉぉおおおお!!!」


しかしながら、その生命力の高さは本物のようだ。

体を切り裂かれ、骨を砕かれ、血が止めどなく流れているにも変わらず、意識は健在であり、意識は失わず。

地面にぶつかる直前に、空中で姿勢を立て直したのはさすがだといえるだろう。


「おい、イオ。

 今ので首を切り落とすことはできなかったのか?

 そうすればもう少し楽になったと思うんだが」


「無茶言わないでくださいよ。

 それなら、もう少し兄弟子の操る梟をいい感じの軌道で動かしてください」


なお、現在我々が、この吸血鬼竜に対抗している作戦は基本的には籠城戦である。

教会の発する神気やら神託により、こちらに特攻してきた邪神の使いである吸血鬼竜。

それに対して、教会の周辺へと避難して、結界に入りながら相手する。

幸い、この吸血鬼竜は生命力こそすごいものの、攻撃力はそこまでではないため、結界内部にいれば基本的に安全であるし、時間に関して言えば、こいつが吸血鬼なせいで一晩乗り切れば太陽光で焼け死ぬのが眼に見えている。

時間を稼いで、ここに縛り付ければ、それだけで勝てる試合なのだ。


「おのれ、おのれ、おのれぇえええ!!!!

 そのような玩具でぇえええ!!!」


そんな吸血鬼竜をこの場に縛り付ける&隙あらば倒すための時間稼ぎ役は、兄弟子と私の操る使役霊。

兄弟子の操る【双頭巨梟霊ツイン・ダークオウル・ガイスト】である巨大な鳥の亡霊に、先日入手したばかりの巨大鎧に【鎧霊】であるトガちゃんを憑依させ、騎乗させた異色のコラボレーションである。


「くくく、いうなれば、冥府の騎兵……。

 いや、闇鳥の騎士とでも名付けるか?」


「普通に、梟の死騎兵でいいでしょう」


まぁ、はじめはこんな即興死霊術なんてうまくいくのかなと不安に思ったが、思ったよりも何とかなっているといった所か。

兄弟子の即興死霊手なずけもさすがだが、それ以上に驚くのはトガちゃんの順応能力の高さだ。

まさか、新しい体という名の巨大鎧に入れられて、さらには巨大梟での騎乗戦闘なんて難しいオーダーにあっさりこたえられるとは。

やっぱり、この子、神様に聖霊認定されるだけあるわ。


「おのれ、おのれ、おのれぇええええ!!!

 もう少し、もう少し時間さえあればぁああ!!!」


「ああ、その気持ちわかるぞ。

 俺も、こんな霊体ではなく、呪詛で強化したスケルトン形態で挑みたかったからな」


「あ、それなら私もわかります。

 この鎧も数日前に手に入れたばかりだからなぁ、せめてルーン文字やら呪詛を刻んだ状態で挑みたかったなぁ」


「ぬぅううううう!!!」


こんな状態でも、目の前の吸血竜の闘気はまだ薄れておらず、こちらに対して殺意や敵意を向けてくる。

まぁ、下手に殺意が薄れて、全力で逃げられたり、嫌がらせ全力になられても困るため、煽れるところは煽っていきたいのだが。


「というかこいつ、龍種にしては弱いな。

 まぁ、俺は竜とは戦ったことないが……意外とこんなもんなのか?」


「いや、それに関しては、こいつがあくまで弱すぎるだけだと思いますよ?

 本物の竜と戦った時は、パーティ戦でも拠点ありでも、もっと苦労しましたし。

 多分コイツは、あくまで【竜に変身しただけの吸血鬼】ってだけでしょ」


「……!!!殺す、コロス!!殺してやるうぅううう!!!!!」


そして、今のところ、この挑発は成功しているようだ。

更には自分の適当に言った予測はどうやら図星なようで、目の前にいる竜もどきの攻撃はより苛烈になった。


「……でも、それで教会の結界に向けて攻撃するところがなぁ。

 やっぱりおつむは、トカゲ並みか」


「それ、本物の竜に聞かれたら怒られますよ」


「かぺっ!!」


再び、教会(というか教会内部にいる自分達)に向けて攻撃しようとした吸血竜が、死霊騎士の攻撃を受けて、怯ませられる。

これなら思ったよりも、仕事が早く終わりそうだ。


「っく、というか我が部下共はいったい何をしている!?」


「あ!それならもう僕が狩り終わってるよ~♪

 というわけで、ここからは僕も参加したいけどいいかな?」


「無茶をしなければ」


「な、なにぃ!?」


どうやら別部隊を展開していたらしい、この吸血鬼竜の部下の魔物も無事討伐できたようだ。

ともすれば、時間稼ぎに徹する必要もなさそうだ。


「よし!それじゃぁ、せっかくだし仕留めるか!」


「定命の雑魚ごときがぁあああ!!!

 調子に乗る……ぐあああぁあああああ!!!」


そうして、反撃の体勢に入った瞬間に、吸血鬼竜の眼に無数の矢が突き刺さる。

当然、偽物とはいえ、通常の龍種ではその眼球ですら丈夫であり、ただの矢では弾かれるのが常である。


「効きました!

 私の酒の恨み!!!!!

 私の酒杯のために死んでください!!!」


「太陽神様、教敵を打ち砕く神聖な一撃を。

 邪悪を祓う、正義の一撃を与え給え!」


もっともそれが、弓の名手による、聖別された矢ならば話は別だ。




「おのれおのれ!!

 我が、この吸血貴族たる我が!!!

 魔王軍大幹部まで上り詰めたのにぃいい!!!!」


かくして、この吸血鬼竜は、最後に特大な不吉なことを言いながらも、神聖術と物理攻撃の波状攻撃により、無事滅ぼされるのでしたとさ。




「……やっぱり死骸は、吸血鬼、それと竜骨が2本だけかぁ」


「やっぱりというか、苦労のわりにといった感じだな」


さもあらん。


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