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TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女  作者: どくいも
第3章 吸血鬼と死霊術師
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第31話 恐るべき吸血鬼の知略

ルドー発案のギャレン村周囲の村々による『吸血鬼討伐隊包囲網』。

この一見実現困難に思われた提案は、思ったよりも順調に進んだらしい。

それは、先の盗賊退治の実績や吸血鬼という種への恐怖心。

さらには、彼らの村の家族がそこにとらわれているかもしれないなどの複合的な理由で実現するに至った。

ともすれば、さっそくその吸血鬼討伐隊という名の村々の腕自慢連合軍が集まることになった。


「これだけいれば、あの吸血鬼もひとたまりもないだろ!」


そんな実にフラグ的な言葉を吐いたうえで、連合軍第一回の吸血鬼討伐作戦。


「うわぁああああ!!つ、強すぎる!

 呪いが、体が!うぎゃあぁああ!!!」


「聖職者が一人しか来ていないって!

 どう考えても無理ゲーだろこれ!」


1回目は当たり前のように失敗した。

まぁ、これは各々の村から派遣された戦力が、ただの力自慢程度しかおらず。

吸血鬼の呪術に対抗できる人材もほとんどいなかったため、やられるのもさもあらんといった所であった。

むしろ、怪我人は出ても、死者や攫われた人が一人も出なかったことを考えると、できすぎな結果といえるかもしれない。

そして2回目の作戦は、各々の村がもう少し気を引き締めて行うことになった。


「あが!あががががが……」

「うえっ!広範囲の麻痺呪文持ちのアンデッド!?

 撤退撤退!こんなの勝てるわけがないよ」


そして、彼らの決心むなしく、残念ながら2回目も当然失敗。

理由としては、件の吸血鬼の配下に、簡易ながら、こちらの動きを封じる呪術を有する配下が複数現れたからだ。

呪術や魔法の呪いに対抗するには、基本的にはそれ以上の魔法や呪術で対抗するしかない。

だからこそ、この連合軍での吸血鬼討伐に必要なものは自然と分かることになった。


「というわけで、件の吸血鬼の根城は、討伐隊全員に何らかの対魔装備を携帯すれば、おそらく無理なく攻略できるであろうことがなんとなくわかりました」


そう!幸いにも件の量産型の吸血鬼の配下たちは、魔法による搦め手は強いものの、単純な力という点ではそこまでではない。

だからこそ、連合軍の個々人の装備や呪術対策の質さえ上がれば、この脅威を何とか出来るであろうという結論に至ったのであった。


「ははは、全員に呪術対策の魔法の装備?無茶を言う」


「魔法の装備とか、そう簡単に手に入らないからこそ、魔法の装備なんだよなぁ」


だがまぁ、残念ながら、話はそう簡単にはいかず。

王都や地方の大都市ならいざ知らず、こんな開拓地ではそもそもの魔法の装備自体が貴重なのだ。


「とりあえず、うちは別の村から呪術対策の装備を仕入れてくれる商人を呼んでおく」


「ならこちらは、新しい聖職者の確保だな。

 幸いうちの村は、冒険神の神殿とそれなりに親しいからな。

 吸血鬼の詳しい情報を送れば、一人二人奇跡持ちの聖職者を派遣してくれるだろ」


「なら、わしらは領主様にこの話を伝えることにしよう。

 領主様の部隊ならば、対魔装備もできておるだろうし、思ったよりも相手が強いからの。

 税を納めておるんじゃから、こういう機会にでも働いてもらわんとの」


かくして、連合軍に集まった村の代表が、吸血鬼の呪術に対抗できる策を準備することになるのでしたとさ。


「じゃぁ私達は、とりあえず、呪術対策の装備を量産することにします」

「おう!流石我が村の代表の聖職者!

 料金や材料はこちらで用意するから、よろしく頼むぞ」


「「「おい、ちょっとまて」」」


さもあらん。



☆★☆★



「は~~い、というわけで、今日は以前作った神様のお守り(チャーム)

 それをちょっと手を込んで作って、呪術対策のお守り(チャーム)の作り方を教えますね~」


「「「は~い」」」


そうして、久々に大々的に行われる教会予定地(9割完成)で行われるミサの時間である。

最近は、盗賊退治やら吸血鬼討伐があったせいで、ミサの時間も簡単な話で終わる物を中心にしていた。

が、それでも今回は大義名分もあるため、久々の大規模なミサのため、心なしか村の人々もうれしそうである。


「なお!今回作ったお守り(チャーム)の中で、出来がいいものは、ルドー村長や他の村の人々が購入してくれるそうです!

 なので、もしこの機会にお小遣いが欲しい人は、丁寧に、且つ美しく作ってみてもいいかもしれませんね」


自分のセリフに、参加者の何人かの目の色が変わる。

なお、この村に来た当初は村内部での金銭の価値はそこまで大きくなかった。

が、最近はこの村にも商人が頻繁に来るようになったため村内部での金銭の価値が爆上がり、そのため、最近は金を稼ぎたいと思う村人も結構多かったりする。


「みんな、がんばれ~♪」

「一番おしゃれなのをプレゼントしてくれたら、サービスしてあ・げ・る♥」


それよりも、この村にも娼婦がいるからのほうが理由として大きいかも。

彼女たちもなんだかんだ言って、娼館ギルドからのエリート娼婦故、その美貌やらスタイルはかなりのもの。

さらには最近は予約が必要なほど人気らしいので、そのためならさもありなんといった所だ。


「っむ?ここは……こうだな!」


「おお~!流石ブロンちゃん!

 手先が器用!」


「ふふふ!そうだろうそうだろう!

 こういうのも娼婦には必須の技能だからな!」


え?件の娼婦のまとめ役の娘の人気はどうかって?

彼女なら子供グループに混じって、一緒にお守り(チャーム)作ってくれてるよ。

かわいいね♪


「ふふふ、今の私たちは娼婦ギルドの一員とはいえ、この村の一員でもあるつもりだ!

 この間の襲撃から守ってもらった恩もあるし、この村の一員としてきっちり働きたいという思いもあるからな!

 礼はいらんぞ?」


別にそういう意味の視線ではなかったのだが、彼女自身が満足しているのならそれでいいのだろう。

それに彼女もきちんとこの街で生活できているので、ちゃんと彼女を買っている村人もいるはず……いるよな?

いや、いるのか?

なんか、村長からの依頼で書類仕事の手伝いやらそっちで稼いでいるって話も聞いているから、ちょっぴり怪しいかもと思わないでもない。


「太陽神と冥府神の呪い除けのお守り……。

 つまり、これを合わせれば光と闇が交わり最強と言う事か?」


「やはり天才か……!?」


なお、今回のミサにはほかの村から来た義勇兵も参加していたりする。

おまえら、仕事はいいのかと思わないでもないが、今は吸血鬼退治の準備中ゆえ仕方ないのだろう。


「それに、俺たちは件の盗賊団が滅んだせいで、仕事が一気に減ったからな!

 村に戻っても仕事がねぇのよ」


「俺は、ゼンリ村の村付き冒険者だからな~。

 ゼンリ村には教会がないから……。

 吸血鬼云々を抜きにしても、日用にも耐病や耐呪の装備が欲しかったところなんだ」


他の村から来た義勇兵なのに、そんなに緩くていいのかと思わないでもない。

が、それでもフラストレーションがたまって、下手に暴れられるよりは百倍マシなため、笑顔で受け入れることにする。


「へ~、アンヌちゃん小さいのに、すでに神様から奇跡を授かったんだね!

 ……ねぇ、ちょっとこの後私のお部屋でお話しない?

 おいしいお菓子もあるから」


「おう、何うちの村から、人材引き抜こうとしてるんだ。

 殺すぞ」


「うぅ~!!少しくらい、いいじゃないですかルドー様!!

 聖職者が2人いて、強い冒険者も複数!

 それだけそろってるんだったら、見習い聖職者の一人くらい紹介してくれてもいいじゃないですかぁ!」


まぁ、それでもなぜか有能村民に目をつけたり、引き抜こうとしたりするたびに、ルドー村長と他の村の代表がにらみ合い、ひどい場合は殴り合いのけんかになることはあるのだが。

自分? 当然下種なものから真面目なものまで引き抜きを受けましたが?

いや、まぁゴブリンゾンビの洞窟の件があるから、まだこの村から離れる気はないけど。


「うおおおぉぉぉ!!!ルドー村長とイシ村長がガチの殴り合いの喧嘩を始めたぞぉぉ!!」


「いいな~、ギャレン村は。

 ここで怪我しても、司祭が2人もいるんだろ?

 なら万が一もないんだもんなぁ」


「とりあえず、今日はルドー村長が勝つ方に俺は賭けるぜ!」


こうして、連合軍という名の各村々の勇士と交流を深めながらも、吸血鬼を倒すという一つの目的の下、それなりに平和に日々を過ごすのでしたとさ。



☆★☆★



そして、十数日後。

対吸血鬼義勇軍は、無事に一通り耐呪装備をそろえることに成功。

さらには、この地を治める領主も、件の吸血鬼の危険性を理解し、兵を派遣してくれた。

兵同士の連携もできたし、ミサを通して、吸血鬼とその配下の危険性についてもそれなり以上に説明できたとは思う。


「……だからこそ、《《今回の作戦が一番危険》》。

 私はそう考えています」


「そうなのか?」


「ええ、前回といいその前といい、件の吸血鬼はこちらを本気で殺しに来ていませんでした。

 その上で、向こうは恐らく蝙蝠などを操れる技量の持ち主なので、こちらの動きをある程度読んでいるはず。

 それゆえに、向こうはこちらが呪い対策をしていることを理解している可能性が高いと思われます」


「そう、このままだと向こうは負けるかもしれない。

 だからこそ、もし相手がまともな知能を持つ吸血鬼なら、絶対に何かして来るに決まっているはずです」


自分の発言に、各村の代表者がごくりと息をのむ。


「……それは、どんな作戦だと思う?」


「流石にそこまでは。

 でも、おそらくはこちらの予想を裏切るような作戦のはずです。

 例えば、ここにいる人の家族の墓を暴き、その死体を手駒として使ってくる、攫った餌である人々を肉盾に使う。

 さらにはここにいる誰かがすでに吸血鬼の従者かもしれない、などなど。

 予想できるだけ、たくさんの策があります」


自分があげた吸血鬼が仕掛けてくるであろう作戦に、村の代表の人たちは嫌な顔をする。

しかし、このような作戦でもなお、最悪からほど遠く、おそらく件の吸血鬼が賢いのなら、よりいやらしい作戦を実行するのは間違いないだろう。


「だからこそ、明日の第3回吸血鬼討伐作戦では決して慢心せず。

 何が起きても、動揺せぬようにお願いします」


そうして私たちは、来るべき恐ろしき吸血鬼の策謀に対して、万全の準備と多大な覚悟と共に。

第3回討伐作戦へと挑むのでしたとさ。





「というわけで、我が主はあなた達の勇気と力を称して、停戦と和平、さらには人質返還を申し出ます」


「え」


「もちろん、この提案を受けてくれた場合、こちらでお預かりした人々は時間がたち次第順番に返還していきましょう。

 それにそれ相応の賠償金も払うつもりです。

 ……どうしますか?」


「え」


さもあらん。


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