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TS転生ド田舎ネクロマンサー聖女  作者: どくいも
第2章 神様と死霊術師
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第18話 イオ司祭の大変ありがたいお話

こうして始まってしまった、教会建設まで連日のお話会という名のミサの時間。

自由な時間や昼寝が大好きな私としては、今すぐにでも、お断りしたいのが本音ではある。

が、そうもいかないのが聖職者兼死霊術師のつらいところ。

なぜなら今でこそこの聖痕のおかげで、やや好印象にみられてはいるが、それでも死霊術師はそれだけで悪評がたまりやすい存在なのだ。

もちろん連日の行いのおかげで、数日休んだり、ミサを完全中止にしただけでは完全に村から排斥されるとまではいかないだろうが、いい印象を与えないのは確か。

その上聖痕のせいで、今の私には神の強力な監視までついているのだ。


「だからこそ、私としてはさっさと教会建築を終えてもらって。

 いい感じに聖痕を除去した後に、力を失ったとか言ってミサを中止に。

 再び、元の田舎魔術師スローライフへと戻りたいんだ」


「は、はぁ」


「今の状態だと、こういうベネちゃんと一緒に採集系依頼でお出かけするのも今の私にとっては結構な癒しになるんだ~。

 やっぱり私には教会の司祭とか、そういうのは向いてないって!

 それならまだ、冒険者や山師のほうがまだ精神的に楽!」


「は、はぁ」


「あ、道順に関してはおおよそ死霊の斥候行かせているから、多分問題ないからね。

 目的地に関しても、きちんと神託と斥候の両方で確認済みだし。

 依頼自体はすぐに終わると思うよ」


「は、はぁ」


村から少し外れた森の中、ベネちゃんと獣道を歩きつつ、そんなことを話す。

ここのところ、聖職者として行動が多すぎたため元々はそこまで好きでもなかった冒険者活動ですら癒しを感じているが本音だ。


「……え、えっと、そのちょっといいですか?」


「うん?なんだいベネちゃん?」


「い、イオさんは、自分が教会の司祭に向いてない、そう思われているんですよね?」


「いや、まぁそりゃそうでしょ。

 死霊術師だし、俗物だし、神への信仰心とかもだいぶ怪しいし。

 今でも隙あれば、どうやって、ミサを中止にするのか考えてるのが日常だし」


「それで、今やっていることは……?」


「え?明日のミサで使うための素材集め。

 そろそろ、みんなも話だけでは飽きるだろうから、レクリエーションも必要かなって」


なぜか、ジト目でこちらの方を見るベネちゃん。

いや、今何かおかしなことを言ったか?


「あ!報酬のほうはきちんとあるから安心してね!

 ちゃんと村長やシルグレットと交渉して、村の方からもある程度予算を出してくれることになったから!」


「それに、最近は連日のお話会のおかげで、寄付も奉納もそこそこ集まっているんだ。

 もっとも、それは、ほとんどは神様への贈り物になるけど、神聖な宗教活動のためならば、多少勝手に使用することは認められているからね。

 報酬が少なくて嫌になるのは、私達は嫌というほど体験しているからねぇ。

 そこからも追加報酬を出すから、心配しないでね!」


なぜか、自分の発言に溜息を吐くベネちゃん。

何か失言をしたかと焦ったが、それでもその後採集場所に到着後、無事目的のものを入手することに成功。

やっぱり自分は司祭よりは冒険者寄りだな。

そう思いながら、帰路につき、自宅に戻ってから翌日のミサの準備をするのであった。



☆★☆★



「と、いうわけで今日は教会の建築もお休みだからね~。

 今日はみんなで、神様の加護のついたお守り(チャーム)を作ってみようか!」


「「「「は~~~い!!」」」」


かくして下準備をした翌日、今日も相変わらずの説法会である。

もっとも、今日はただの説法ではなく、聖なるお守りを作るという聞くだけでは済まない内容。

だからこそ今回は好き嫌いが分かれるだろうと思い、いつもよりは参加者が減る予想ではあったが……。

なんかむしろいつもよりも多くない?

仕事とか大丈夫なの?


「大丈夫でさぁ。

 今日のためにちゃんと仕事は早く終わらせてきたさぁ」


「それに今回のミサでは参加するだけで、ありがたいお守りをもらえるだなんて……。

 イオ様から祝福されるお守りなんて、それこそ素晴らしいものに違いありませんから!」


重い……あまりにも期待が重い!

期待してもらっているところ悪いが、今回作るお守りの効果なんて、せいぜいちょっとだけ風邪をひきにくくなるとか、死んだときアンデッドになりにくいとか。

それに少しだけ奇跡を覚えやすくなるとかその程度の効能しかないので割と期待が重すぎる気がする。


「むしろ、それはできすぎでは?」


「つまり、最近奇跡に目覚めたアンヌみたいに、なれるかもしれないってこと!?

 あの、慢性の虚弱体質が治って、むしろ病気を治すことができるようになったアンヌみたいに!?」


「とりあえず、お守りを100ほど作らせてください」


畜生、村人の一人に大成功した子がいるせいで、半端に期待が高まりすぎている。

一人大成功した例がいるせいで、みんなワンチャンあるかもみたいな願望が透けて見える。

あんまり、こういうのはよくないんだけどな~と思いつつも、事前準備はきっちりしたので、ここで中止する気もない。


「今回は事前に七大善神と冥府神のお守り用の素材を集めてまいりましたし、寄付していただいた布と紐があります。

 だからこれで、各々一番信仰したい神、またはその加護が欲しい神のチャームを作っていきましょうね」


「え!好きな神様を選んでいいの!?」


「ええ、もちろんです。

 以前のミサで皆さんも各々の神について、興味や信仰を持たれたと思うので。

 大丈夫ですよ、それぞれの素材はすでに聖別を済ませているので、後は信仰心さえあればきちんとチャームとして機能しますよ」


もっとも、そのせいで事前準備やら素材集めがそれなりに大変であり、それを口実に費用やら時間をたっぷり稼がせてもらったけどな!

それに、七大善神のお守り全部作れるとは言ったけど、まぁ効能はどれもあんまり強くない的な意味で似たりよったりだし。

そういう意味ではあんまりどれを選んでも関係ないかもしれない。


「じゃぁ私、魔導神にする!私将来は魔法使いになりたいの!

 確か月の女神さまで、どんな魔法も使えるんでしょ?」


「なら、おらは水神様だべ。

 そろそろ、うちのおっかぁがお産だからなぁ。

 無事で健康な子を産んでほしいんだべ」


でもまぁ、こういうのってテンション上がるよね!

自分もかつて、初めて教会に連れていかれた時、多くの神の像の前でテンションが上がったものだ。

まぁ、こちとら死霊術師ゆえ、冥府神を信仰するしかなかったから、自由に選べる村のみんなが少しだけ羨ましかったり。


「ね~ね~、イオ司祭様~。

 水神様や魔導神様は何となく効能が分かるけど、その他の……。

 特に太陽神様と冒険神様、それと冥府神様のお守りにはどういう効果があるの?」


「太陽神様のは、基本的にはありとあらゆる効能があるかな?

 しいてあげるなら、健康とか豊作とかが有名だね。

 とりあえず、この村には太陽神様の教会がありますので、迷ったらこの神様のチャームを作るのもいいでしょう」


誰のせいかとは言わないが、最近この村では太陽神の信仰が下がっているため、少しでも太陽神を上げておかないとね。

個人的には、きちんと教会担当司祭にその辺フォローしてほしいので、早く善行なりクエストなりを達成して、さっさと村の教会付き司祭として復帰してほしいのが本音だ。


「冒険神様も、この開拓地的にはほぼほぼ万能神様かな?

 未知や危険に挑むとき、大怪我をしたときにほんの少しだけ天の導きがあるといわれているね。

 ……ああ、あと賭け事の神様でもあるね、一部では需要が高いチャームであったりもします」


自分の発言を聞いてか、何人かの悪そうな顔をした大人達がこそこそと冒険神のお守りを作り始めた。

お前ら色々と現金だな。

ついでとばかりに、旅商人さん、商品価値があるからって、勝手に複数つくろうとしないでね?

一人一個までだし、あんまりひどいとたたき出すぞ。


「それで、冥府神は?」


「呪術と一部神聖術耐性、さらには怨敵への復讐祈願」


「え」


「呪術と一部神聖術耐性、さらには怨敵への復讐祈願」


「えぇ……」


質問してきた人が思わずすっごく微妙な表情をしているのが分かる。

いやでもマジでそうなんだからそうだとしか言いようがないのだ。

一応より詳しく言えば、冥府神は死と冥府をつかさどる神ゆえに、一部墓守などに信仰され、加護としては亡霊やゾンビの呪いや病気に強い耐性を持てたり、一部【聖罰】などの信仰呪文に対して強い耐性を持つことができる。

実際、私が、先日オッタビィアからの【聖罰】に対して、自分自身だけではなく、自分の使役霊も守れたのは、間違いなく冥府神の加護のおかげだ。


「……でもまぁ、それでもあんまり普通の人が日常的に信仰するには……。

 すこ~し、人を選ぶ信仰ですね」


え?自分の信仰神なのにその言い草はいいのかって?

しょうがないだろ、これが真実なんだから。


「つまり、冥府神のお守りを持てば、あのにっくき●●●へ復讐できるかもってこと!?」


「つまりこの神様を信仰すれば、イオ様と同じ死霊術師になれるかも……ってこと」


「……」


なんかそれでも、一部の村人が冥府神のチャームを作り始めているし。

笑いながらや憧れを持って作る人はまだいい。

でも、ストロング村の生き残りの子の一部が、無言で冥府神のお守りを作っている姿はこう……普通に怖いから、マジでなんとかしてください。

しかしながら、それでもおおむね今回のチャーム作成のミサはおおむね平和に進行。

これで、聖痕からの連日の神託押し付けも少しは軽くなるだろう。




「っふ!ならば俺はここで合体チャーム発動!

 勇神と太陽神のチャーム素材を合体させることにより!

 一つで二つの効果をする、最強のお守りを作成する!」


「す、すげぇええ!!!かっこいい!!!」


「なにあれなにあれ!

 私もあれやってみたい!」


でもね、村長。

なんで、あなたまでこのお守り作成会に参加してるの?

しかも、わざわざ祝福の仕方がめんどくさくなる配合やめろ。


「でも、勇神と太陽神は相性がいいから、できなくはないはずだろ?

 くくくくく、双方と相性のいい素材も俺自身が持ち込みでもってきているからな!

 通常よりも強力で且つ、作りやすいはずだ」


「やべぇ!流石村長!

 できることも学も違う!」


「ずりーぞ!村長!

 っく!そんなかっこいいチャームを見せられたら……俺達まで作りたくなってしまうじゃないか!」


「はっはっはっは!

 悔しかったらお前らも、貴族になるか冒険者、もしくは聖職者になってみろ!

 複合チャームの組み合わせは、専用素材や学が必要だからなぁ!

 もしすごいチャームを作れたら、俺の家で衛兵や下働きとして雇ってもいいぞ!」


村長の発言に、一部やる気を出す人や対抗心を燃やす人が現れる。

かくして、村人に向かって謎にマウントを取る村長を見つつ、なぜ今回のミサに対して、村長がことさらに支援してくれたのかを、何となく察したのでした。



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