第79話 「掲示板回」
【冒険者応援スレ】
1:名無しのダンジョン攻略者
配信見た?
2:名無しのダンジョン攻略者
カルード帝国を滅ぼしたやつがアウスト王国で暴れてるらしいな
3:名無しのダンジョン攻略者
戦闘の光景生配信してるじゃん。やば
4:名無しのダンジョン攻略者
とにかく応援してくれって訴えかけてくるけど、そんなことでいいのかな
直接助けに入った方が……
5:名無しのダンジョン攻略者
アウスト王国も滅ぼされたら今度はこっちにも来るかもしれないんでしょ!?
誰かなんとかしてよ!!
6:名無しのダンジョン攻略者
応援するだけで倒してくれるなら俺は全然するぞ
7:名無しのダンジョン攻略者
戦ってんのあのカイリじゃん!
8:名無しのダンジョン攻略者
待って、推しなんだけど!
マジで負けないで!
9:名無しのダンジョン攻略者
カイリってそんなやべーやつと戦えんのか
10:名無しのダンジョン攻略者
厄災を倒したんだからいけるって!
厄災よりやばいやついないんだからさ
11:名無しのダンジョン攻略者
でもだいぶ危なそうじゃない? 見てるの怖いんだけど
12:名無しのダンジョン攻略者
カイリで無理なら誰が戦っても無理だよ……
13:名無しのダンジョン攻略者
まだ終わってねえって!
応援してくれって配信でずっと言ってるだろ!
14:名無しのダンジョン攻略者
カイリ頑張ってくれ!
15:名無しのダンジョン攻略者
勝ってくれたら本当になんでもするから!
16:名無しのダンジョン攻略者
俺は戦えないから、俺の分まで頑張ってくれ!
17:名無しのダンジョン攻略者
この配信もっと拡散しようぜ! そしたらもっと援軍が送られるかもしれねえし
18:名無しのダンジョン攻略者
俺は戦いに行くぞ! みんなも応援よろしくな!
19:名無しのダンジョン攻略者
間に合うか分からないけど、私も準備してる
20:名無しのダンジョン攻略者
頑張れ、マジ頑張れ!
21:名無しのダンジョン攻略者
配信の同接一億人!?
22:名無しのダンジョン攻略者
過去最高人数集めてるって! 本当に全国から注目されてるじゃん!
23:名無しのダンジョン攻略者
わたしもおうえんしてるよ!
24:名無しのダンジョン攻略者
世界中から冒険者集めてアウスト王国に援軍送ってるらしいぞ!
25:名無しのダンジョン攻略者
僕は無能力だけど、応援くらいならできるよ
26:名無しのダンジョン攻略者
エリザベス王女もいるじゃん! ナナリィ王女もいるし、大物が多すぎる
27:名無しのダンジョン攻略者
ここで皆失ったらそれこそ世界の終わりだぞ
28:名無しのダンジョン攻略者
フィオナさんは俺の推しだー!
生きてくれー!
29:名無しのダンジョン攻略者
てか、カイリと戦ってる相手やばくね
30:名無しのダンジョン攻略者
カルード帝国を滅ぼした邪神らしいよ。あの伝承に残っているやつ
31:名無しのダンジョン攻略者
実在したんだ……
32:名無しのダンジョン攻略者
千年前に英雄が封印したとかの話しか!そんな危ない相手なのかよ!
33:名無しのダンジョン攻略者
でも今は英雄なんていなくね?本当にいけんのかな
34:名無しのダンジョン攻略者
カイリが英雄だろ!邪神に負けてないんだから!
35:名無しのダンジョン攻略者
俺たちは今、伝説を見ている……
―――――――――――――――――――――
十分後。
【冒険者応援スレ】part15974
1050:名無しのダンジョン攻略者
スレの勢いがやべえ
1051:名無しのダンジョン攻略者
頑張って!
1052:名無しのダンジョン攻略者
俺の力も使ってくれー!
1053:名無しのダンジョン攻略者
やばい、ナナリィ王女が狙われた!
1054:名無しのダンジョン攻略者
カイリ守って!
1055:名無しのダンジョン攻略者
お願いします……みんなを助けてください……
1056:名無しのダンジョン攻略者
みんな頑張ってくれ!生きて帰ってきてくれ!
1057:名無しのダンジョン攻略者
生き残ってほしい
1058:名無しのダンジョン攻略者
絶対倒せるって!もうちょっとだぞ!
1059:名無しのダンジョン攻略者
カイリならきっと出来るよ!私、信じてるからね!
◇
配信のチャット欄
『頑張って!』
『応援してるよ』
『世界中がカイリの味方だからな!』
『もうちょっと耐えれば援軍が来るぞ!』
『頑張れ!みんな見てるぞ!』
『頑張って!みんなの英雄!』
「――もう十分溜まった頃合いだな」
配信のチャット欄を眺めながら、エリザベスは口角を上げる。
邪神はすぐ目の前。あと数秒でナナもエリザベスも、邪神に殺される。
だけど、エリザベスには恐怖も動揺もなかった。
「――はぁっ!」
邪神とナナの間に割り込む人影があった。盾を構えて、敵を迎え撃とうとする人影。それは、フィオナの姿だった。
エリザベスはスキルを発動する。世界中から、「邪神を倒してほしい」「平和な世界にしてほしい」「世界を、みんなを、守ってほしい」その願いが、力となってカイリたちに降り注ぐ――
――ガキィン! と、甲高い音を立て、フィオナの盾は神器の攻撃を受け止めた。
本来ならばあり得ない光景。エリザベスたちは何度も邪神と戦っては返り討ちにされてきた。
それなのに今は、フィオナの力が邪神と拮抗している。
「……カイリにエネルギーが集まれば十分だと思っておったが、妾たちにも応援の声は届いているらしいな。――これが世界の、そして、人間の力だ。神よ」
「なにが、人間の力だ……この程度……」
邪神の持つ剣は、フィオナの盾を貫けない。今、邪神の目の前に立っているのは、世界数十億人のエネルギーだ。いくら神であろうと、たった一人では押しきれるわけがない。
フィオナが防いでいる間に、カイリが追い付いた。背後から思い切り吹き飛ばし、邪神を遠ざける。
「なんでだよ! なんでなんでなんでなんでなんでボクは、こんなところで――!」
邪神は神器を構えてこちらに向かってくる。それをカイリが迎撃。交差した二本の神器が、シオンの剣と衝突する。
火花を散らしてせめぎあったが、とうとう神器はカイリの力の前に砕け散った。
「これで、トドメだぁ――っ!」
カイリの得物が、邪神の肉体に、突き刺さった。