第69話 「守るため」
なんで今、ここに……? 国と国を渡るのもそう簡単じゃないはずだ。
そもそも、邪神はカルード帝国で戦闘をしていたはず。なのに、この国に戻ってきているということは――
「不思議そうな顔をしているね、カイリ。ボクがこの場にいるのがそんなに不思議かい?」
「だって、お前は……カルード帝国に……」
「あぁ、あの雑魚どもか。そんなに驚くことでもないよ。神の前に人間の集団が束になったって勝てっこない。それは、ボクの力の断片を使ったカイリには分かってるものだと思ってたんだけどな」
こいつにとっては、もう終わったことでしかない。当たり前のように蹂躙した。ただ、それだけのことだ。
「ボクは最高に気分がいい。だって、必要だった残りの鍵も、もう解放出来たんだから」
「鍵を、解放……それって……」
「うん、殺したよ。カルード帝国の王族全て。どれが鍵なのか分からないし、いちいち身体乗っ取って鍵かどうか確かめるのも面倒だろ? だから全部壊したんだ。元々、ボクはそういう存在なんだから」
一気に情報量が増えすぎて混乱してるけど、俺の口から出たのは、全く関係ないことだった。
「ナナ、は……あいつらも、お前は殺したのか……」
「ボクを邪魔してきてたね、そういえば。確かに、キミにとっては気になることかもね。……さて、彼女らは今、本当に生きているのかな?」
「どういう、意味だ」
「ボクは知らない。興味もない。たかだか羽虫の生死なんて、毛ほどもね。まあでも、ボクの鍵が完全に解放されてないってことはあのエリザベス……だっけ、あの生意気な小娘は生きてるんじゃない? どこか遠くまで吹き飛ばしてやったから、もう長くは生きられないだろうけどね」
とりあえずエリザベスが生き残っていることに関しては良かった。
他のみんなの安否が確認できないから不安なのは変わらないけど。
……人の心配ばっかりしてられない。今は俺たちだって危険な状態なんだ。
「ボクに反抗できる勢力って言ったら、残るはキミたちくらいだ。だから――キミたちもちゃんと殺しておかないとね。それで、ボクの敵はいなくなる」
このまま戦ってても勝てない。俺も多少戦力になれるとはいえ、焼け石に水だ。気休めにすらなっていない。
「神弓、アポロン――起動」
神の手に大弓が現れる。そして、俺たちの手で届かない距離から、光の矢が降り注ぐ。
「ソニア! シャル!」
この場から逃げる方法。唯一の方法を俺は持っている。
二人は俺が手を差し伸べてるのを見て、なにかを察してくれたようだった。
俺たちは手を取り合い、互いの存在を確かめ合う。
「へぇ、なにをするつもりなのかな」
俺は、ようやく手に入れたんだ。誰かを守るための力を。
その使い道は、今しかない!
「転移!」
次の瞬間、俺たち三人の身体は青白い光で包まれ――そして、消えた。




