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第48話 「二人」

 目を開けると、俺は牢獄の中だった。


「なん、で……」


 王様が俺を捕まえる理由はなんだ? 厄災を討伐できる力が怖かったから? でも、上手く利用できるならした方がいいだろう。

 仮に俺を危険視したとしても、そこまで急いで始末する理由にはならない。全てが急すぎるんだ。


「あ、カイリ起きたんだ」


 声の方向を見ると、アリシアがいた。俺と同じように両手首を手錠で繋がれ、身動きが取れない状態になっていた。


「酷いよね。いきなりこんなことしてくるなんてさ。……あれ、カイリどうしてそんなに私を見つめるの? そんなに見つめられると照れちゃうな」


「……俺が言いたいことは分かってるよな」


「まあ、そうだね。私を疑ってるんでしょ?」


「俺たちが睡眠薬を口にしたとすれば、あの時の菓子が原因だ。しかもアリシアはケーキを食った時になんかに気づいたような感じだしてたよな。美味すぎて言葉が出なかったなんて言ってたけど……アレは中に入ってたものに気づいてたんじゃないのか?」


 それに、俺たちにケーキを食べるよう勧めてきたのもアリシアだ。なにかに気づいたのなら、それを伝えることもできたはず。ナナに言えば治してもらえたのに。


 それでも尚、言わなかったのなら……アリシアは分かってそれを受け入れたということになる。


「今更犯人捜ししても仕方ねえけど……一応聞いとく。俺の意見は当たってるか?」


「うん、正解だよ。私は一口目で異物混入に気づいてた。知ってて、みんなに食べてもらったよ」


 当たってもなに一つ嬉しくない。アリシアが王城で悪さをする可能性はほとんどなかった。


 王様の方からなにかを仕掛けてくるのと合わさって、結果的にアリシアが悪さをする最悪のシナジー。


「しかもこの部屋寒いし……デュランダルでも出して無理やり出てやろうと思ったけど、眠すぎて集中力も出ねえし。力も入んねえ」


 全身に鳥肌が立っている。今の季節はそんなに寒い気候じゃなかったのに、なぜかこの部屋は信じられないくらい寒く感じる。


「カイリ、勘違いしてるみたいなんだけどさ」


「……ああ」


「確かにケーキに異物は混入してた。けどね、入ってたのは睡眠薬なんかじゃないよ」


「どういうことだ」


「間違いなく、毒薬だね。眠気や悪寒はその薬の副作用に過ぎない」


 毒なんて入ってたのか……全く気づかなかった。

 独特な味がしたなとは思ったけど、高級なものだからという思い込みがあった。


 それに、毒の味なんて知らないし。


「なんでアリシアは知ってるんだ。毒を口に入れたことなんて……」


「あるよ。カイリと出会う前の話だけど。私は好きになった人が死ぬところや悲しむところを見たいんだよ? なら、毒薬とか武器とか……そういうものの知識はあった方がいいじゃん」


 自分の趣味に関する熱意は本当にすごい。全くシビれもしないし憧れないけど。


「この毒は多少摂取するくらいじゃ死なない。でも一定の量、口にすると衰弱するように死んでいくの。ナナちゃんやイオリちゃん、他のメンバーはあんまり食べなかったよね。まあ、私が取り分けたから調節しただけなんだけど」


 元々少食だったり、他の菓子も食べて腹が膨れてたりで、パーティーメンバーはそこまでケーキを食べてない。


「食べたのは俺だけ……って、ことか」


 貧乏性を発揮して、残った分をほとんど口にしてしまった。


「カイリはこれから死ぬよ。ナナちゃんが来てくれたら治してもらえるかもしれないけど……この感じだと、ナナちゃんたちは別のところに繋がれてるみたいだし、こっちまでくるには無理かもね」


 薄暗く、寒い部屋の中でアリシアとたった二人きり。


 そこが――俺の墓場になると、そう宣言された。

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