第45話 「厄災戦」
「魔物の数が、減ってる……。すごいよカイリ!」
褒められてるはずなのに……アリシアだから、素直に喜べない。
「カイリ殿、その力は……?」
「それ、わたしの時と同じですね!」
神の力……のはずなんだけど、やっぱりどうして解放されているか分からない。
「ナナとフィオナ……いや、考えてる暇はないな」
今はとりあえず厄災の討伐だ。周りの魔物はさっきの矢でほとんどいなくなってる。
そして、厄災がいくら空を飛んでるって言っても、弓があるなら大した問題じゃない。
狙いは一点。翼の付け根を狙い――
「行け――っ!」
矢が空中で分散し、幾つもの矢が狙い違わず翼に着弾する。
翼を失った厄災が地上に降りてくる。
「地上に降りてきたなら、いけるぞ! ナナ、フィオナを任せた! それとイオリ、お前は厄災の攻撃を見切ってくれ!」
「らじゃー! イオリちゃんにおまかせを~!」
イオリを抱えるまではしないけど、隣で支えてくれるだけで頼もしい。
厄災がどう攻撃してくるかさえ分かれば、イオリを守りながらでも戦える。
「そんでアリシア……討伐隊の方の様子を見といてくれ! 俺に死んでほしいってのは分かってるけど、俺以外を殺さないために協力しろ! それだったら問題ねえだろ」
「……うん、私が私情を出すのは、まだだしね」
ひとまず、俺を殺しにこないってことで良いのかな。
アリシアは無差別殺人者ではないし、快楽殺人鬼でもない。
殺すというのはあくまで自分が苦痛を覚えるための手段に過ぎない。
神器をデュランダルに入れ替え、厄災に接近する。
厄災の太い腕が襲い掛かる。デュランダルで迎撃するが、威力を殺しきれずに吹き飛ばされる。
「神器でも打ち勝てねえってことかよ……」
そういえば、神様も言っていた。力を使いこなせていない状態では神器でも厄災に勝てないって。
「だから、アレが……」
そのために、俺はアレを取りに行ったんだ。神様曰く、厄災を倒すために必要な武器。
――「魂喰い」。肉体じゃなく、生物の魂そのものにダメージを与える英雄の武器。
「これなら、いける――っ!」
厄災が口を開け、炎のブレスを吐き出す。俺はそれを避けて接近。そして、「魂喰い」を厄災に突きつける。
キィン! という甲高い音を立てて厄災に突き刺さ――らなかった。
「…………なんで?」
厄災の鱗に弾かれた「魂喰い」を見つめながら、俺はつぶやいた。