第36話 「配信、やってみない?」
アルマジール大森林へ向かうカイリたちを見送った後のこと。
「じゃあ買い出ししよっか。武器とか防具はもちろん、回復アイテムもいっぱい買っておきたいよね〜」
「そうだな。私の鎧も新調しておきたい」
「あ、あの……できれば私、もお願いしたい……です……」
「今になっても慣れんな。カナのそういう態度は」
「だ、だだだって……怖いんだもん……嫌われて、一人になるのが……」
もうカナやシャル、ソニアたちにはカイリしかいない。カイリに見放されれば、ほとんど詰みだ。
シャルにもカナの不安は理解できる。だが、副リーダーを務めていた経験からそれを表に出さないだけで。
「あたしもちょっと欲しいものある……かな」
「ソニアか。そういえば今までずっと黙ってたが、どうしたんだ? 前はもっと話したがりだっただろう」
「いやぁ、カイリとどう接して良いのか分かんなくてさぁ。だって気まずいじゃん?」
「今までのパーティーでの行いは許していただいた。ご主人様は心が広いお方だ。ソニアも受け入れてくれると思うが」
「そうかもだけどぉ、うーん……もうちょっと慣れがいるかも」
イオリは前の三人とやらは全く知らない。知っているのは、自分と同じくカイリに救われた女の子ってことだけだった。
「しかし……全員分装備を整えるとすればかなり金銭を消費してしまうな」
「そこはイオリちゃんに任せてよ! 伊達にアイドルやってないっす! お金は腐るほど持ってっから!」
口調がちょくちょく変わるイオリに戸惑いつつも、シャルはなるべく表情に出さず、返答する。
「同じパーティーに所属する仲間に貸し借りを作るのは少々不安だな」
「えー? イオリちゃん全く気にしないよ〜?」
「一方的な関係性はもう作りたくないんだ。前が、そうだったからな……」
ハルト一人が主張し、それ以外が引き立て役。そんな「役割」を押し付けられるのは、もう嫌だった。
「そっか〜。でも、それじゃどうやって買い出しの分のお金を稼ぐつもりなの〜?」
「そこが、問題なのだが……魔物でも狩って……」
「で、でも……お金を稼ぐために、戦って……傷ついて、回復のためにアイテム買ってたら……儲けはないと、思う……」
「むぅ……」
困った。カナの言うことも理解できるし、厄災の前に戦って疲弊するのが良くないのも分かる。
「じゃあ、イオリちゃんから提案しちゃってもいいかな~? いいよね! いいってことにするね。今手っ取り早くお金を稼ぐって言ったら勿論、あれしかないよね」
「あれ、とは?」
「配信だよ! 配信! どう? みんなで配信、やってみない?」