「あなたと恋愛するにはあなたの背負っていたものが重すぎますから」
アラサー売れ残り男に不快な対応をされたミリアリアは残りの面会を全て拒否した。
あんなことを言われて異性と前向きに話せるような精神状態ではなかったから。
と、そんなミリアリアの元に今回の婚活パーティーで1人目として面会した男性がやってきた。
「いやあ、ミリアリアさん。とんだ災難でしたね」
「フランシスさん。お気をつかっていただきありがとうございます……」
噴水に腰かけているミリアリアの隣にフランシスも腰かける。
「いいんですか? まだパーティーは終わってないでしょう?」
「それはあなたも同じでは?」
「……まあ、そうですけど」
「じゃあ、いいじゃないですか。僕とあなたは一緒です」
不意にミリアリアはドキリとする。
心の奥に浮かぶ悪くない違和感。
脳味噌の表面に浮かぶ悪くない熱感。
ーー、いやいや。
ーー、ダメダメ。
ーー、落ち込んでるときに声をかけられて、よく見えてしまっているだけ。
「で、実際のところどうなんですか?」
「は、はい?」
自分に必死に言い聞かせていたミリアリアはフランシスの問いかけにふと、我にかえる。
見れば、フランシスも"ニヤニヤ"していた。
「実は僕も気になっていたんですよ。どうしてあなたが王子様にフラれてしまったのか」
「ーーっ!!!!」
「世間ではあなたは散々悪行の限りを尽くしていて、悪役令嬢が大好きな有名劇作家も引くほどのお方だったと耳にしますけど」
ーー、どいつもこいつもふざけるなっ!
ーー、私が悪役令嬢にも等しいだって?
ーー、あれは心変わりで私を捨てた王子様を正当化するために王室諜報部が流した嘘なのに。
反射的だった。
反射的にミリアリアはフランシスに平手をかましていた。
「っ痛っ……」
「あ、……」
「ミリアリアさん……?」
「あ、あのいえ、これは……その」
いくら頭に来たとはいえ、手を出してはいけない。
ミリアリアの胸にさらに罪悪感という負の感情が上乗せされていく。
「大丈夫ですよ。僕も悪かった。触れられたくない過去ですよね、婚約破棄なんて」
「…………はい」
「でも、1つだけ僕から教えておいてあげますよ」
「な、なんですか?」
と、すっと無表情になるフランシス。
彼は先ほどまでとは打って変わって冷たい声で言った。
「かつて王子様と婚約していた女性と結婚したいと思う男なんていませんよ。いえ、いないと断言はできませんが、多くはないでしょう。あなたと恋愛するにはあなたの背負っていたものが重すぎますから」
「…………」
「いざあなたと交際すれば、世間は"王子様の元カノ"と"新恋人"として騒ぎ立てるでしょう。それに耐えられる自信がないんですよ。ゴシップネタにされたくない。恋愛よりもそっちの方が大変だと思ってしまうのです」
ーー、なるほど、そういうわけか。
ーー、道理でこれまでの婚活もまるで全然うまくいかなかったわけだ。
「念のために言っておきますが、あなたの内面やあなた自身を否定しているわけではありませんので、そこは勘違いしないでくださいね。あなたが美しく、性格も良い素晴らしい女性であることはみなさん知っていると思いますから」
もはや、ミリアリアにフランシスのフォローは届いていなかった。
「そうですか。教えていただきありがとうございます。今後の参考にさせてもらいますね」
忠告への礼は述べるものの、ミリアリアはフランシスを一瞥もしないで噴水を後にした。
ーー、最悪。
ーー、最低。
ーー、どいつもこいつも私の過去ばっかり見やがって。
ーー、これだから婚活市場の売れ残り男はっ。売れ残り男はっ!
敗北感とはこういうことをいうのかもしれない。
敗走とは今の自分をいうのかもしれない。
ミリアリアはそう呟きを繰り返しながら、家に帰るまで上を向かなかった。
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