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世界  作者: ヰ端
報告書0 喪われた記憶に関する記述
2/3

回想一話 在るべき物性は在らずして、世界は唯だ一者として在る。

「暗躍者」


この3文字を解き明かすには些か長めの回想に入る必要がある。

史実を示そう。フライブルクよ、これが君が欲していた解答だ。


遡ること約半ヵ月、



~第4戦紀113年3/14~


苛政は虎よりも猛、どれ程勢いのあった王朝も100余年も経てば人民に革命軍を作られる。

デーメーテールを筆頭とした革命軍の尖兵は、スクラムを組み出陣の時を今か今かと待ちわびていた。


王政府軍に動きは見られない。応戦を煽る為何度か牽制の弾を放ったが反応なく、静かにそびえ立っている。


アンジェラ含む幹部は本陣及び数個設けた陣の守りに徹していた。戦争において掴みは尖兵軍団同士のつつき合いと相場が決まっている。


本陣の守りについていたのは、参謀のサルタと戦闘指揮のアンジェラ。


「政府軍は一向に動く気配がない...仮に我々本陣を遠距離攻撃で直接狙おうにも、当然対策されているということは解っているはずだが。」


「受け待ちだろうか?」

アンジェラは戦闘においては天才的な力を発揮するものの、戦略事情にはどうも疎い。


「アンジェラ、ここは尖兵を送り込む前に我々幹部と精鋭軍が一息に突撃した方がいいかも知れんな。」


「え?」



「戦争を仕掛けるのは立場的にこちらになる。革命を起こす側は常にゲームマスターを政府軍に委ねなければならない。そうなると...

革命軍の我々がとるべき手段は敢えて相手の掌に乗り、その上で相手の予想を超えることだ。」


「要するにスパイクを履いて掌の上に乗れと言うことだな!」


「まあそう捉えてくれて構わない。アンジェラ、詰まるところ革命軍で一番鋭いピンはお前だ。じきに精鋭軍も戦線に出す。先に王城を掻き回してくれ。」


「了解した。敵の攻撃と、願わくは『五角天』も引き摺り出すつもりだ。そこからは戦場も泥沼化する。どうだ、これはゲームマスターにとっては酸っぱいだろう?」


「五角天の一角でも君が引き摺り出してくれたなら直ぐ様他の幹部も出撃させる。裏の工作は私に一任してくれ給え。」



「ふふ......しかしサルタはヘスさえ居なければ有能敏腕なのに、」



「一言多い。」


サルタの不機嫌そうな声を尻目に、アンジェラは意気揚々と戦場へとスタートした。




✝️




王城内部。


「下々の兵は戦場へ駆け出たくて仕方のない様子です。大王殿、如何いたしましょうか。」


王の部屋は意外にも1LDKといったところだろうか。他の部屋と相違ない小ぢんまりとした感じだ。


「ふむ、革命軍か...幹部の一人ががもうすぐこちらへ突撃する頃合い。イェルミ、尖兵を5隊程出撃させろ。犠牲は問わない。今回の戦争は消耗戦にするつもりだからな。」


「1~5番隊の隊長5人がかりで革命軍の幹部一人を止めるということですか。」


イェルミは少し驚いた表情をした。


「我々がこの戦争に勝つことは最早天の理地の自明と言っていい。だが、我々にとっての真の勝利とは、未来永劫に渡り反駁の衆を造られないことだ。」


「成程、圧倒的武力を披露することで見せしめとする訳ですか。確かにこれ以降永らく戦争をしないようであれば、徒に予算を食う兵団も不用と。」


「流石は私が見込んだ<五角天>よ。讃えるべき支配者の思考だ。そうさ、何時の世も為政者は狡猾でなければならない。慈悲で国が治まらぬのは歴史が証明している。」



王の座る椅子のテーブルを挟んで向かい側に、クッションの効いた椅子がある。

その座る部分に巧みにうつ伏せで寝転がる少女が一人。

少女は手に何やら液晶を持つ物体を携えていた。


少女は、


「ふふっ♪」


と足をバタバタさせ上擦った声で笑う。

と同時に整った長髪が紺から朱へと色を変えた。どうやら感情の起伏により髪の色が変わる特異体質(?)のようだ。


そして、その手には革製の手袋が嵌められていた。



「どうか致しましたか、フェイ様。」


「あまり騒ぐなフェイ。勝ちは確定しているのだが便宜上は戦争だ。死に行く魂を惟え。楽しみは革命軍が息絶えてからだ。」


「はーい、御父様...」

口を尖らせながらフェイは液晶の光を消した。



「では、戦争を開始しようか。」




✝️




草原。


(本当に守備も何もない...王城付近まで無用心過ぎないか...)

何もなかったことが反って不気味なのと目の前にそびえ立つ圧倒的なスケールの王城にアンジェラは一瞬気が引けてしまい、無意識に後ろを見てしまった。


(精鋭軍か...そうだ、私は機先を任された。私が逃げ腰になってどうする...)

アンジェラは目を閉じた。


...と同時に、王城の扉が開いた。

侵入する敵を全く拒絶せぬその様子はまるで大口を開ける怪物のようにさえ感ぜられた。


アンジェラは、その番の音を確実に鼓膜と蝸牛で受け取り、目を開く生理的な行動を認識する間もなく、電光石火の如く扉を抜け王城下町へ飛び込んでいった。


精鋭軍は三分の一程平原に残し後に続く。





✝️





王城、兵士の待機所。


「さあ兵達よ、出撃の時間だ。溜めた欲求は敵の血で雪げ!」

五角天序列1[鬼女]、イェルミの激励と共に、1000を超える待機兵達が声をあげる。


そして...すぐさま王城下町へと行軍した。



王城下町は幅60m距離3kmはあるだろうか巨大な一本道、主道が真ん中に突き抜けておりそれに沿って小道や建物が並んでいる。

衚衕には意外にも3回にわたり大戦争が行われたとは思えない程傷痕は残っていなかった。



そんな主道を一陣の黒い風が吹き去る。それは一直線に王城へと向かっていた。




✝️




政府軍1~5番隊は隊列を組み城下町の主道を行軍していた。

先頭は各隊長、そのどれもが戦術では名の通った強者。



「大王殿によると革命軍の幹部一人と精鋭軍が王城下町に入ったらしい。」


「フッ...革命軍とは名ばかりの、ただの衆愚盲信者のお年寄り会だろ。」


「三次王朝の清すぎる河にボケた者共に戦争が出来るか?勝ち目はない。」


「例の幹部ってのが女らしいぜ。お前ら、女は殺すなよ?生捕りにすりゃァ金の成る木だぜ?」


「チッ...仕方ねえな、女幹部はテメエにやるよ。まあ革命軍のリーダーも女らしいから、俺もしっかり使わせてもらうぜェ。見ろ、洗脳ジュースだ。」


2番隊長は何やら怪しげな液体の入ったピンク色のボトルをポケットからチラつかせた。



「じゃあ、トップバッターの4番隊さんよ、お前らは速歩きで...」

3番隊長が振り返るとそこには4番隊長及び5番隊長の姿は無かった。



(ッ!?)



それどころか、縦200人程陳列されたその端2列が、跡形もなく消えていた。

地面からは黒い煙と白い煙が約2:3の割合で絶え間なくあがっている。



(何が起こった...しかも音もなくだと...)

そう考えた矢先、3番隊長は両耳に鈍い痛みを覚えた。


(そうか...鼓膜がやられたのかッ!)


後ろの兵の動きが激しくなってきた。しかし音は聞こえない。どうやら残った各隊長3名全員の鼓膜がイカれたらしい。


後続兵は散り散りになりつつあった。

最早王朝のこと等考えていない。

誰もが自分の命を信念と忠誠の上に置いた。

さすれば、まるでソーセージの上をナイフで飛ばすかのように首が宙を舞う。

信念と自分の命の天秤がずれた者に生きる価値はないといった風であった。


赤い糸を引きながら宙をを舞う無数の首を見、隊長は何者か(革命軍の幹部)が先頭へ向かって来ていること、そして自分の行く末を悟った。


嘗て忠誠を誓った国の街並みが眼前にある。

その景色は、天秤の傾きと相応して傾いていき、やがて落ちるのであった。




(これで政府軍の下の者は恐るるに足りないことが解った。だが、まだ安心するには早い。私の目的は五角天を引き摺り出すことだ。)


アンジェラは刀を素早く振り刀身の血を飛ばした。




✝️




王室。



「あらあら、やられちゃったみたい。」

先程切った液晶を再度作動させたフェイが話す。


「うむ、やはり幹部クラスを侮っていたか。総力戦も選択肢に入れなければならないかも知れぬ。向こうの幹部はリーダー含め8人、対してこちらの幹部格は五角天合わせ7人。」


「大王殿、問題はありません。この私、五角天序列1[鬼女]が敵幹部の首を7つほど獲ってみせましょう。」


「まだお前を出す訳にも行かないだろう?だが準備はしておいた方が良い。」


「御意。」

イェルミはラフな格好のまま、銃剣を取り出した。

そして白く宝石のように輝く髪を頭部右上で結った。



     「頼りにしておるぞ、五角天諸君」


        序列1[鬼女]、イェルミ


        序列2[マカ]、アヴィド


        序列3[ニグレド]、ザギ


      序列4[テッタレス]、アマテュルク


      最終序列[オプタルモス]、○○○


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