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世界  作者: ヰ端
プロローグ
1/3

創成

端書



同志よ、進捗如何だろうか。


この度拙作を執筆するに至り駄文が目立つやも知れないが、どうか海のように広い心を以てご覧になって頂きたい。

親愛なる我が同志、フライブルクへこの解答を贈る。




     

✝️





(※✝️は場面転換の時の記号。

つまり、この記号を打つことで世界は変わるということで御座います。)




~第5戦紀創成年1/5~



これは物語の舞台となる地の現在の年。

ここでの世界における年の数え方を読者諸君に示しておく。




            空前



    第一次王権奪取戦争→  ------



                 第1戦紀



    第二次王権奪取戦争→  ------



                 第2戦紀



    第三次王権奪取戦争→  ------



                 第3戦紀



    第四次王権奪取戦争→  ------



                 第4戦紀



    第五次王権奪取戦争→  ------



           現在→   第5戦紀



(しかし第5戦紀というのは暦法に従った月日の数え方、必ずしも正しいとは限らない。)




✝️




今まで約5回の大規模戦争が地上で行われた。

それに基づいて年を数え、例えば第二次王権奪取戦争が終わって翌日なら第2戦紀創成年1/1となるという算段だ。


因みに、「空前」というのは最も古い史料の第一次王権奪取戦争よりも前の時代、まだ研究が行き届いていない時代のことを指す。

そして、今は第五次王権奪取戦争が終わって間もない頃の「第5戦紀創成年1/5(1月5日)」という訳である。



それでは始めよう。

我が闘争を。



鷹揚の御見物をお願い致します。





✝️





~第5戦紀創成年1/5~


5日前に行われた王朝政府軍と革命軍による大規模戦争。

その傷痕は戦場にありありと残っていた。

赤い草々が指し示す先には屹立と聳え立つ王城。


戦乱の傷痕、焼け野原に反しその城は遠方、毅然と聳え立っていた。


そんな死屍が累積する荒原を、一人の女戦士が王城へ歩いていく。

その女性は、所々赤みを帯びた鎧を纏っており、上腕には革命軍のシンボルマーク、


           ─カップシャッフル─


を携えていた。



(臭いな...革命軍が今後の王権を握るのはめでたい。だがこの風景は、一戦士として素直に喜んでいいのだろうか...)


戦争の孑遺げついがまた一つ、歴史の一頁となった。

人類の負の歴史がまた一つ、この地に刻まれた。


足元に臥す屍は笑っていた。

殉死を美学とする文化の帰結を、自ずから嘲っているのだろうか。


女騎士は、紅い草原を覆う死臭と、立ち昇る葉巻の煙を避けながら歩みを続ける。


(人数多死す中に我生きて在り、か…

私もまた救済を受けた身であると言うのに。)


彼女の脳裏には未だ金色のすすきが揺れていた。





✝️





王城下は5日経った今も勝鬨の宴で賑わっていた。


雑踏から、「あっ!アンジェラさんが帰ってきた!」という声。

ど同時に宴の中の兵士達がさらにどよめき始めた。

そしてあっという間に女戦士は群衆に囲まれる。


「よくぞご無事で!

いかがですか、祝勝の一杯。」


「うへへ、女幹部さんと酒を呑み交わせるとかテンション上がるぜ~」

横に座っていた女の子が発言の主を睨みつけた。


「これで幹部は全員生き残ったってことか?

こりゃあめでたいねえ。」


「いや、まだ一人帰ってきてねえだろ。

ま、今回の戦争を無事に乗り切れただけでも御の字だ。なぁ、アンジェラさん。」



「わ...私は...

...これから重要な会議があるのでな、すまない...」

そう言い残すと、後ろで束ねた金色の髪をなびかせ、女戦士アンジェラは城へと歩を進めた。


(王城内の一室に幹部が召集された...まあ何の用かはだいたい見当がつく。)





✝️





「入ります。」


部屋には革命軍のリーダー、デーメーテール・オウラを中心に、幹部三人が鎮座していた。


入ってきたアンジェラをデーメーテールのその端正な顔が見上げる。


「アン、無事だったか。お前があの鬼女にやられたと訊いて心配したぞ。」


「お恥ずかしながら力不足で…」


「無様に敗北しその上情けまで掛けられて…よくもまあ帰ってこれたもんだなァ?」


真紅の目でアンジェラを睨め上げるこの少年の名はアドラメネク。同じく革命軍の幹部である。


アンジェラは言い返す言葉を咄嗟に呑み込んだ。

露骨な生を選択した嘗ての己に愕然としたからだ。


「アドラ、それがお前の本心か?」


「いや、そりゃあ生きてて良かっ…」

そう言い掛けてアドラは必死に手で口を塞いだ。


「そういうことだ。アン、良い経験をしたじゃないか。武士もののふってのは敗北の味を知って漸く己の味に気付くんだからな。」


デーメーテールは尚も玉座に鎮座し、片膝をついている。


「あのぅ、お茶を汲んできましたけどぉ…」


恐る恐る会話に入ってきたのは幹部にして救護班長のヘスティオである。


「どうもありがとう。では私は此方を頂こう。」


黒髪眼鏡の男が、トレーに並んだコップの中から丁度彼女の親指が触れた物を選択する。

幹部にして参謀を務めるサルガタナスだ。

そしてサルガタナスは頬を赤らめ眼鏡ごしにヘスティオを見つめた。



「…皆さんは、やはり万歳気分ではないようですね。」

アンジェラはデーメーテールに話しかける。


「まあ、要件は薄々気づいてるだろう、」

デーメーテール(以下デメテ)はサファイア色の長髪を耳に掛けながら返した。


「ま、まあ皆さん、勝利は掴んだのですからもうちょっと柔らかくなりましょうよぉ~」

ヘスティオ(以下ヘス)は暢気に椅子に腰かけて浮いた足をバタバタさせている。


他三人が苦笑いをする中、サルガタナス(以下サルタ)だけは頬杖をついてその愛らしい少女に見惚れていた。


(今日もヘスティオちゃんは可愛いなぁ...)

この男はこの期に及んで何を考えているのか。


「幹部は7人、あと3人はどこで道草食ってるんだ...」

アドラメネク(以下アドラ)は肺に溜めた空気を一息に放出した。


その時、扉の向こうから、


「アーレス、入ります。」

という凄みのある声が聞こえ、

高身長のスラッとした白髪の男が入ってきた。


「アンジェラ、<無事>だったか。同じ<武士>として喜<ぶし>い。」


大真面目な顔で頓狂なことを唐突に話すこの男は先述の通りアーレス(以下アレス)である。


「韻を踏まないと話せないのかお前は...」

アンジェラは肩を竦めてやれやれといった表情をした。


「うーん、幹部6人いるし、時間も時間だし、会議を始めようかな...あとサルタはいつまでヘスを見ている...」

デメテは待ちくたびれた様子でヘスの煎れた紅茶を飲んだ。


「ハッ...!も、申し訳ありません。いや、しかし私はヘスを見ていたのではなく、空中に浮かぶ興味深い分子の観測を試みていたのです。」

ずれた眼鏡をかけ直しながらサルタは必死に弁解(?)した。



「こいつら...救いようねえな...」

アドラは心の中で思った...と思いきや口に出た。


「......ヤベェ口に出ちまったじゃねぇか。ってこれも口に出ちまった!」


彼には心の声がだだ漏れというかなり難解な癖があるようだ。


「お前が一番救いようないわ。」

アンジェラが睨みつける。


「み、皆さん、始めないのですか...?」


「じゃあ始めるか、

まあ皆も何の会議かは解ってるだろう、」

デメテが切り出す。


「単刀直入に言う、」



空気が突然として詰まる。



「議題は今回の戦争で暗躍していた者についてだ。

持ち得る情報の一切を共有してほしい。」


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