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5年玉

 弟子入りの件は、誘われたのでは無く、決定事項だったらしく『師匠』と呼ぶ事になった。

 翌日から修行が開始された。本格的に剣と魔法の世界に浸る事が出来るとワクワクしていたが、渡されたのは、剣では無く鍬だった。師匠が付いても付かなくても、ミッションな変わらなかった。

 魔法で雑草を絞り出し、鍬を振るった。家庭菜園の域は軽く超えた広さを一人で耕した。師匠は日傘を差して近くで見守り?他愛も無いお喋りで付き合ってくれている。

「アインとは外来の名前か?」

「ええ、ドイツ語の1です。アルベルト アインシュタインって学者さんにあやかったんですよ。」

どんな学者か聞かれたが『特殊相対性理論』ってコトバは知っていても、それが何かは全く解らない。取り敢えず天才って感じでお茶を濁した。

 畑仕事、山で食料調達、偶に薬草を採って干したりして1週間。煮炊きが出来るようになったので、食生活は向上していた。

「薬草と山菜を売って、野菜の種とか苗を買ってきておくれ、赤ん坊は儂が見ておくから安心して行って参れ。」

 ヨーコを肩に乗せて山を下りた。早朝で人目が無いので、身体強化のまま、街まで走って行った。街では流石に目立つので、普通に歩いて開店時間に調整した。

 裏路地のその奥の魔女風のお婆さんの店に到着、ヨーコは嬉しそうに、

「道案内無しで来れたね!」

早速店に入り、薬草を見てもらった。

「こりゃたまげた、先生がいらしてるんだね?」

 希少な薬草な上、下処理の品質が完璧で、単純に量は前回の半分ちょっと位だけど、10万で買取ってくれた。

「5年玉まだ使っていないんだね、こんだけ稼げれば慌てることもないのか?」

「麗先生にお任せです。」

ヨーコとの会話は、いまいち理解出来ない。

「じゃあ、先生にコレ!」

お婆さんは、お菓子と思われる包を渡してくれた。

 野菜の種と苗を買って、登山口に配達してもらう。煮炊きが出来るようになっているので、米も買って一緒に運んで貰う、勿論俺達も込み。


 登山口からは、魔法解禁、身体強化を掛けて、苗をポーチに、と思ったが、

「生きている物は入れられないよ、持てるだけ持って、往復するしかないっしょ。」

カンタンに言うけど、かなりの重労働だよね?まあ頑張るしかないんだけどね。

 師匠が来てから、気のせいか身体強化の掛かりが弱くなった気がする。チカラを測定したりもしていないし、何時も同じ労働って訳でも無いので、飽くまでも感覚的なモノなんだけどね。気にしても仕方がないので両手に苗をぶら下げてみると、5往復位かな?さっさと片付けようと山を登った。


 やっと一回目運んでヨーコは子守りに回って、苗運びは僕だけになった。その間、師匠とお喋り。

「娘達、中身まで赤ん坊とは不思議じゃな、ゾロの魔力なら、とっくに覚醒してる筈じゃろ?」

「何やら、『げえむ』の中の『きゃらくたあ』という人だって言ってましたよ、それが何モノかは聞いたけど解りませんね。」

ヨーコは、理解していないが聞いた事を話してみると、

「将棋の駒みたいなモノか?案内人が人形で眷属が駒とはな、どれだけ人付き合いしないヤツなんだ。」


 5回目でようやく運びきった。身体強化していても疲労は免れない。クタクタで床に転がると、

「だらしないね、そんなんだから、娘達が赤ん坊のままなんだよ、さっさと植えないと暗くなっちまうよ。」

 取り敢えず自分にヒールを掛けて、スコップを振るった。すっかり暮れてから植え終わると、師匠がチェック。

「まぁまぁだね、ちょっと真似してごらん!」

両手の人差し指と親指でマルを作って中空に掲げ、そこに吹き込むように息を吹くと、霧雨の様に畑を潤した。

「雨雲を思い浮かべて魔力を込めるんだよ。」

中々上手くできなかったが、10回位のトライでなんとか成功。ただ、かなりの土砂降りだったので、慌てて止めて苗の流出は免れた。


 翌朝からは、朝起きて水遣り、川に仕掛けたワナを見に行って魚を回収、森で食料調達。昼を食べて午後は薬草採取、ついでに見つけたら食料調達。夕方は畑の草取り。すっかり農家の生活だ。畑の物が食べられるようになったら、食料調達も少しはラクになるかな?薬草売れたら今度は目一杯食料買いたいな、なんて思いつつ数日が経過した。夕食を食べながら、

「お主は順調だが、娘達は相変わらずじゃのう。名も与えておるのにのう。」

師匠はレモンを抱きながら溜息をついた。

「名前に由来は有るのか?」

「いえ、ゲームのキャラそのままですからね、原作、えっと、物語みたいのが有ってですね、その登場人物なんですよ。それを操作して魔王を倒す遊びをしてたのが、コッチに来る借金の原因だったんです。」

「ほう、そのせいじゃ!そうだな、ヨーコの事を『人形』と呼ぶようなものじゃ、お主が名付けると良い!」

 そう言われて見れば、二葉と三葉に名前を付けた時、赤いホクロみたいのが光ったよね?うん考えて見よう。朝までの宿題にして毛布に包まった。

 

 いつものように朝日に起こされ、保存食を齧る。赤ちゃん達も、水に浸して柔らかくすると食べられるようになっていた。取り敢えず、胃袋を膨らませて、考えた名前を発表した。


 ココア改め、九璃(くり)

栗色の髪と瞳からの命名。


 ソーダ改め、八絵(やえ)

八重歯がチャームポイント。


 レモン改め、七歌(ななか)


 いちご改め、六姫(むつき)


 みるく改め、五姫(いつき)


二人に数字を使ったので、数字を入れて(アイン)から九璃(くり)まで揃えてみた。取り敢えず納得の様子だった。

 九璃と呼ぶと、ボワッと光る感じがして、表情が引き締まり額に赤いホクロが浮び上がった。順に呼んで行くと皆んな同じ様にゲームキャラの戦士の表情になった。

「魔法は使える?」

九璃は火の玉を空に飛ばし、八絵は氷の刃で木の枝を斬る。七歌も風の刃で枝を落とすと、六姫、五姫は枝を元に戻した。

 会話は理解出来ているが、舌が回らず、発音は上手く出来ない。筋力も無いので、何かが出来るようになったりはしないが、急激は進歩だろう。

「ふむ、これなら、5年玉使えるな。」

師匠は満足そうに、倉庫のような建物に僕等を連れて入った。

「儂等が出たら、コレを床に叩きつけて割りなさい。」

5年玉を渡すと、それ以上の説明は無しでヨーコと二葉、三葉を連れて倉庫から出て行った。扉が閉まるのを確認して、指示どおり、5年玉を叩き割った。


 ガシャンと音がして確かに割れた筈だが、破片は見当たらない。周りに特に変わった様子はなく、外を見てみると、折角建てた家が無くなっていた。畑も無いし、師匠達の姿も見えない。倉庫の中に目を移すと、真っ黒の影のようなモノ近付いて来た。警戒したが、フォルムは師匠?声も口調も師匠だった。『師匠』と呼んだが、ホンモノ(?)と区別するため、自分の中では『影の師匠』と呼ぶことにした。

「先ずは食料調達だね、さっさとしないと飢え死だよ、早く行った行った!」

結構な備蓄だった筈だが家ごと無いので仕方がない。いつものように森を彷徨った。

 午前は食料調達、午後は剣と魔法を習った。夜はコッチの学校で習う事をみっちり座学。毎日毎日、繰り返した。もしかしたら5年玉って、コレ5年間も繰り返すの?3日目に、そんな事を思い何日経過したかチェックを始めた。

 冒険者に必要な魔法を一通りマスター、剣も影の師匠が本気を出す迄に腕を上げた。因みにまだ一本も取れていない。

 やっと立ち上がって、犬に掴まってなんとか歩いていた赤ちゃん達は自力で歩けるようになり、走ることを覚え、一緒に食料調達に出かけるようになり、歯が生えて、普通の食事が出来るようになった。手掴みだったのも、スプーンをマスターし、箸もなんとか使っている。

 身体も成長していて、100センチ位から30センチは伸びたと思う。赤ちゃんだった九璃達も100センチ位かな?

ダブダブの柔道着みたいな服だったのでギリ着ていられるが、九璃達はもっと伸びたので下は穿けなくなり上だけで超ミニ状態で元はオムツだったから、ぱんつも穿いていないので動く度に中身が見えてしまい、いくら幼女でも気になって仕方がなかった。

 時は流れ、5年玉を割ってから1825日目、丸5年経過した日、影の師匠は、

「今日までよう頑張った、これからも精進するが良い。」

と言い残し、ただの影のになって消えてしまった。ギギギと扉が開いて(ホンモノの)師匠が入ってきた。師匠は幼女の見かけのまま。まぁ、元がいくつなのか解らないから、5年位誤差みたいなモノ?全く変わっていない。無くなっていた家は復活していて、ヨーコも二葉も三葉も5年前のまま。人形だから歳をとらないのかな?犬は歳取るよね?良く解らないけど変化は感じなかった。

「うん、その位なら大丈夫じゃろ。」

師匠はそれぞれに洋服を渡してくれた。

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