家を建てる・後編
一夜明け、ひとまず住めるようになった家を観察してみた。部屋は2階に作るようで、今あるのは一応キッチンかな?湧き水を水槽に溜めて井戸風に使えるようになっていて、常時湧き出ているので、溢れる分は、外に流れ出て一応水洗トイレっぽくなっていた。竈門が2口、調理台、洗い場?食卓テーブルは置けそうだな、それなりに使えそうだ。あとは玄関とリビング。結構ゆったりしていて、暖炉が付いていた。
「薪は端材と、ワンコ達が薙ぎ倒した木を使かうからね!寒くなるまでには集めて乾かさんばならんよ。」
と、言うことで薪を集めるのがミッションの様だ。食料調達も並行して、3日間で軒下がいっぱいになった。
何度も往復して気付いたのが、家の周辺が平らになっていて、大きな木が生えておらず周囲の林のと境にがあった。かなり時間は経っているが、誰かが均して、木を抜いて、溝を掘ったと思われる。ここを畑にすれば、食料事情が改善できるかもしれない。
「あぁ、それね、次の次のミッション!その前に、扉と窓、開けっ放しじゃ拙いっしょ。」
確かに煉瓦の壁に、玄関、勝手口、窓が1階に4か所、2階に6か所、ただ開いているだけだ。
「今夜のうちに、一つ片付けとこうか?」
まだ陽は落ちきっていない。二葉と三葉に留守番を頼んで、ヨーコと山を下った。少し下りると、普段とは別の獣道に入り、急な坂を登った。直ぐに視界が開け、ゴツゴツの岩場を登って、洞窟の前に到着した。
白骨化した魔物らしき亡骸が数体、戦ったと思われる剣や槍も散乱していた。ヨーコは何事も無かったような振る舞いで、
「灯りの魔法を教えるよ、中は真っ暗だからね!」
意外とあっさりマスターして洞窟に入った。魔法で照らしても薄暗い地面には、外で見たのより数段デカい魔物と、人間と思われる骨。魔物と刺し違えたのだろうか?
肩に乗っていたヨーコは魔物の頭蓋骨を調べ、
「おっ?まだ残ってる、コレ回収!」
魔石を外すと残った骨は粉々になっていた。
「ミッションクリア?」
「コッチはオマケだよ、そこいらの剣とか鎧とか回収してね!」
なんとなく、死人から追い剥ぎするみたいで気が引けたが、冒険者を葬る正しい作法らしい。死しても後進の役に立てるのが冒険者冥利に尽きるとの事。人間と思われる骨は、できる限り一人分にまとめて土に帰した。
剣等を集め浄化してからポーチに収納。すっかり暗くなっていたが、覚えたての灯り魔法でそれ程苦労もせずに帰宅出来た。
そのまま寝床に直行。家具が無いので、テントと時と変わらず、床で毛布に包まっている。強化していても基本的に子供の身体なので、夜更しは難しい。その分快適な睡眠が出来ていて、きっと明日もスッキリ目覚めるだろう。
予想通り、朝日とともにシャキっと起きた。今日は山を下りて少し遠出。一日掛かりなのでヨーコも子守りで留守番、一人で出掛けた。登山口迄駆け下り、その先は目立たないよう、普通の5歳児を装う。街と反対に3時間程歩いて沢を下りた。河原を少し行くと、ヨーコが指定した白い砂があり、麻袋パンパンに3つ、身体強化してポーチに収納した。途中、弁当代わりの保存食を齧って、周りに誰も居ないのを確かめながら、強化した脚を飛ばし、1時間掛らずに登山口に戻った。
スイスイと家まで登ると、ヨーコは魔法陣を13個描き上げていて、
「お帰り!」
その一つに、昨日集めた剣等を積み上げ魔力を注入、黒い玉が12個出来上がった。鉄の塊との事。それぞれを別の魔法陣にセット、運んで来た白砂もセットした。順に魔力を注入していくと、鉄枠にガラスが嵌った窓10個、扉に使う金具が2組出来上がった。
「お疲れ様、取付けるパワーな残ってないしょ?」
取付けどころか、開閉するのもムリっぽい。開けっ放しの玄関に転がり込んでそのまま爆睡した。
翌朝、またまたスッキリ目覚め、窓の取付け。壁の開口部に窓を嵌めて、釘に風魔法を纏わせて打込んで行く。2階も含め10カ所打ち付けると、
「仕上げはちょっとコツが要るから、練習しょっか。」
金槌に雷の魔法纏わせる、インパクトの瞬間、炎の魔法を重ね掛けすると釘が窓枠に溶接される。そんな高度なワザ、出来そうも・・・あっ、出来た。全ての窓を溶接して午前中の作業を終えた。
午後は、扉と、2階の建材の伐り出し。量もサイズも、前回程じゃ無いので、運んで加工しても、夕方には玄関と勝手口、2階の内装工事が完了した。
ヨーコは家の四隅に結界の術式を書いて、
「タガネに風魔法乗せて、彫り込んでちょうだい。」
鉛筆の下書きをマーカーてなぞる雰囲気で術式を彫り込んだ。
ヨーコは家中をチェック、一応の棲家を確保出来たことを確認すると、
「よし、家は大丈夫だね、思ったより早かったなぁ、じゃあ次だね。」
「えっ?風呂は?」
「浄化魔法で済むんだから、いらないっしょ。」
「いや、のんびり浸かってリラックスとか必要だよ!」
「うーん、師匠もまだだし、好きにしていいよ。」
家を建てた時に習ったように、魔法陣を離れっぽい感じで描いて魔力を込めた。大浴場とまではいかないが、5、6人は余裕の浴室と脱衣所の基礎を作った。浴室はそのまま水を溜める事が出来、炎魔法で沸かして入る。セメントがもう無いので、壁と屋根は木造にする予定。今日のところは、基礎だけで入ってみよう。家の湧き水のトイレに流している分を、風呂に引いて水を溜めた。半分位の辺りで、炎魔法を試した。加減が判らずに沸騰させてしまった。氷魔法で冷ましても良いが、今度は冷え過ぎになりそうなので、チョロチョロと溜まっていくのを待ってみた。
さて、異世界初の入浴と意気込んで風呂場に行くと、湯けむりの向こうに何か動いていた。猿が温泉に入った映像を見たことあったなぁ。上手く追い払えるかな?近付いて見ると、人の気配らしい。いややっぱり猿?こんな山奥ならそっとの確率が高いかもも知れない。
そっと覗いて見ると、小さな女の子?
「誰だ!?どこから来た!?」
「乙女の入浴を堂々と覗くのは、儂の別荘を勝手に使っている奴かな?」
ん?『儂の別荘』って言った?
「まぁ良い、背中を流せ。」
覗きを咎めた割には、ノーガードで浴槽から出て来た。
絞ったタオルで背中を擦る。垢が出る事は無いが、気持ち良さそうにしていた。
見掛けは10歳位?小学校の高学年?って感じに見えるが、口調はかなり年配の雰囲気、お婆さんと言うよりお爺さんと話している感じだった。
「お主がゾロか、儂は麗という。騎士や冒険者なんかに、魔法や剣を教えておった。隠居してる筈だが、面白い奴が居ると聞いて来たんじゃが、まるっきりガキじゃないか。」
コッチに来た事や、子供になってしまった経緯を話すと、
「実に面白い、中身は大人か、通りで肌を見られても落ち着いておる筈じゃ!よし、弟子にしてやろう!」
コッチの世界のことなんかを面白可笑しく話してくれた。
「案内人が人形とはな、お主、家族や友は居らんのか?」
通常、案内人は、アッチで一番近い存在の人間に良く似た人か、飼っていたペットっぽい人が現れるそうだ。
「お人形遊びなんかしないんですけどね、なんでヨーコなのかな?ん?あっ、ヨーコ!思い出した!小さい頃、お祖母ちゃんに買って貰った人形、文字は怪獣とかで覚えたから、ひらがなよりカタカナを先に覚えたんだった。それでヨーコ、カタカナに拘るんだな。35年の人生でヨーコが1番の仲良しってこと?かなり微妙な感覚だが、ヨーコがより身近に感じられた。




