家を建てる・前編
煉瓦を作っては、赤ちゃん達の世話。食事は保存食。3日目でミルクが無くなりかけている。不安になってヨーコに相談すると、木の実や山菜、キノコ選び方、採り方を教えてくれた。離乳食に適した木の実もあり、まずはそれ狙いで森を彷徨った。
午前中は食料調達、午後は煉瓦。8日目でノルマの粘土全てが煉瓦になった。
「次は基礎工事、あそこからあそこまで、雑草を抜いて、凸凹を均すんだよ。」
湧き水が出ている所を含め、結構な広さを指定された。手で引っ張っても抜けないヤツと格闘していると、
「土の中から、邪魔なものを絞り出すイメージで魔力を注いで見ぃ!」
良く解らないが、何となくやってみると、ウジャウジャとミミズが這い出てきた。
「まあ、最初にしちゃ、上出来っしょ、もうちょい工夫すればいいっしょ。ミミズは釣りのエサにしたらいい、そこのツボに集めとこ。」
何度か失敗して、草や苗木レベルの小さい木を抜けるようになって、ヨーコが指定した場所はスッキリ。キレイに均すと、ヨーコは自分と同じ位の小枝を担ぐように持って、間取り図を描いた。中心に魔法陣を描くと、
「コッからありったけの魔力を注ぎ込んでね!」
真っ直ぐそこに行こうとすると、
「ソコ、壁だからダメ!ちゃんと玄関から入ってよ!」
グルっと回ってヨーコの指した玄関らしい所から魔法陣に入り、思いっきり魔力を込めた。いつまでやれば良いのかな?ヨーコが黙って見ているので、まぁこのまま継続、初めての魔力枯渇を感じた。目眩と倦怠感で意識が遠退いて来る頃、
「もう、良いんじゃないかい。」
霞んだ視界には、家の基礎が完成していた。その日はそのまま這う様にしてテントにたどり着き、爆睡したようだった。
午前中の食料調達に、釣りが追加。種類は不明だが食べられる。唯一有る調味料の塩を振って焚き火で炙る。なかなか美味しく、身をほぐすと赤ちゃん達も喜んで食べていた。
午後は煉瓦積みかと思ったら、身体強化魔法を習って、山頂付近で薬草採取。帰ってから洗って乾燥させる。1週間繰り返して、集めた薬草を纏めて街に売りに行く。二葉と三葉に任せておけば、半日居なくても問題ないが、一応急いで山を下りる。山道にも慣れたし、身体強化魔法を掛けているので、あっと言う間に馬車が走る道に到達した。乗り合い馬車を待ちつつ、街に向かって歩いていた。
「おい、そこの少年!こんな山奥に一人でどうしたんだ?」
「街に薬草を売りに行くんです。」
「じゃあ、山ん中に住んでんのか?」
「ええ、ソコです。」
下りて来た山を指すと、
「それなら、乗っけてっちゃる、何時も通る道で、坊主が魔物に喰われたって言うのはカンベンだからな!」
街まで馬車に揺られ、商店街で降ろして貰った。ヨーコの案内で薄暗い路地裏を抜けて、訳あり系の人しか居ない様なエリアにやって来た。看板も無い扉を開け、中に入ると、如何にも魔女って感じのおばあさん。
「おや?しばらくだね?」
えっ『はじめまして』じゃないか?
「今度は、随分若い子だね、大丈夫なのかい?」
「色々面倒だけど、何とかなるっしょ、薬草の買い取りと、5年玉を3個、ツケで!」
「まぁ、良いだろう。」
薬草を調べ、頷きながら、
「上モノだね、下処理も良く出来ている。コレならいつでも買い取ってやるよ。」
7万5千ルナで買い取ってくれた。店の奥から小さな包みを3つ、値札をみると1個5百万、また借金が増えてしまった。
「今日は急いでるから、お茶は今度ね!」
「茶なんて淹れないよ、ツケは倍で勘弁してやる、とっとと稼がせるんだよ!」
凄い口調だが、かなりの仲良しに見えた。バタバタと次の目的地に向かいながら、
「薬草はあの婆さんに買って貰ってね、他だったら良くて半値で買い叩かれるからな。」
やはり信頼しているようだ。
次に入ったのは金物屋?ホームセンターの資材コーナーっほいかな?セメントと砂、釘や金具、ペンキを買って、登山口まで配送してもらう。煉瓦を積むのに使うのだろう。10万と言われたが、ヨーコが値切って7万になった。残金5千ルナで食料を買って、セメントとかと一緒に登山口まで送ってもらった。
「煉瓦は魔法で作ったのに、セメントは無理なの?」
「ああ、魔法で接着もできるけどね、魔力が切れたら崩れちゃうの、煉瓦もね、端から魔法で作ったら、魔力が切れたら消えちゃうけど、粘土を魔法で加工したらな、普通に作ったモンと一緒なんだよ。」
荷物を降ろして貰うと、
「この先、どうするんだ?」
馬車のオジさんが心配してくれた。
「こっからは修行だからね、おっちゃん、ありがと!」
馬車を見送ってから、
「身体強化して、荷物をポーチに詰めてね!」
身体強化が出来る事やチートな収納力のポーチは、ナイショにする作戦との事。
ほぼ手ぶらで強化した身体では、お散歩程度の負荷で道場に到着した。
「「ぞー!」」
ココアとソーダが二葉に掴まって、ヨチヨチ寄ってきた。『ゾロ』と認識してもらえたようで、呼ばれると思いっきりデレている気がする。レモン、いちご、みるくは三葉とじゃれあっていたが、俺に気づいてダッシュでハイハイ。皆んなを順に抱き上げてから、セメントとかを基礎だけの家に運び込んだ。これからモルタルにして煉瓦を積んでくのだろう、結構掛かりそうだな、いつまでここに居るのか解らないけど、いつまでもテントって訳にもいかないので、頑張るしか無いかな?ポーチから全て出し終えると、
「じゃ、また、コッから魔力ね。」
基礎を作った時より複雑な魔法陣が描かれていた。また、目一杯の魔力を注ぎ込むと、今度は気を失ったらしい。意識が戻った時には、煉瓦の壁に囲まれていた。あとは屋根と床かな?流石にそれ以上働く元気はなく、テントに転がり込んだ。
朝まで爆睡してスッキリ。ヨーコのリクエストはきっと屋根と床。木材の伐り出しかな?予測は的中して、ヨーコに連れられて来たのは杉林かな?真っ直ぐな木を数本選ぶと、
「短剣を出して!」
マサカリなんて無いから仕方がない?身体強化してたって無理じゃない?と思ったら、風魔法を纏わせる手法を教えてくれた。最初は上手く行かずに地面に穴を開けたりしたが、コツを掴むと羊羹を切る感覚で一抱えもある木を伐り倒した。枝を払って、必要な長さに切って、引き摺り出す。強化した身体でも中々上手くいかない。
「ここで、ある程度加工するか。」
サクサク切り出して、軽くなった部材を現場に運んだ。今日のところは大物を諦めて、テントに帰った。
「棟木は一本まんまで使いたいよね。」
「ムナキ?」
「ああ、屋根のてっぺんって言えばいいかな?こういう感じの・・・」
なるほど、そのほうが強度ありそうだよね。他の魔法を習ってなんとかならないかな?
「したっけ、奥の手使うか!」
奥の手が何かは教えて貰えずに眠りについた。
翌朝、木の実を頬張っていると、
「ゾロは留守番な、二葉と三葉の首輪外してよ!」
2頭とも会話を理解しているようで、スッと首を近付けた。首輪を外すと、ヨーコは二葉に乗って、
「出発!」
一瞬、寒いのか熱いのか解らない不思議な空気に包まれたかと思ったら、2頭は途轍もないサイズ、今建てている二階建位になっていた。地響きをたてて、杉林に向って行った。
程なく、ベリベリと木を薙ぎ倒して2頭が戻って来た。ヨーコが必要だと言っていた棟木を咥えての帰還だった。家の側に木を置くと、スッと元のサイズになつた。毛の中で見えなくなっていたヨーコは、二葉から飛び降りると、魔法陣を書き換え、
「もっかい頼んだよ!」
3度目の魔力注入。気を失う寸前が解る用になったので、調整しながら注入、屋根と1階の床が完成した。天井も2階の床も無いのでやけに天井が高くちょっと落ち着かないが、テントよりは快適だろう。木の香りのする床に転がって朝まで爆睡だった。




