白い珠
救出に向かったのは、郊外の農家。現在は誰も住んで居らず、畑も放置状態らしい。
現場に到着すると、結界を補助する魔具がいくつも配置されていて、その中の納屋に拘束されているのが直ぐに解った。強力な結界が構築されていたが、魔具を1つ集中砲火で壊すと、連携が崩れ後は障子を破る程度の労力で納屋に到着した。
九璃は先頭を切って扉を開けた。
「結界頼りで鍵は掛けて無かったんだね!」
「ううん、溶かしちゃった。」
よく見ると、床には溶けた金属が固まった跡と焦げた臭いがした。
「アレは任せて!」
聞き出していた罠は情報通りで、八絵が凍らせて無効してしまった。
捕まっていたのは、女性ばかり10人。吐かせた情報では、男性も居るはず、
「他に捕まっている人は居ませんか?」
「男の子は母屋だろう。」
捕まっていた女性が、奥の建物を指差した。数日から十日間も拘束されていたので、かなり衰弱しているので、手持ちの食料を提供、六姫と五姫にヒールを任せて母屋に向かった。
母屋の罠も情報通り、難なく突破して、2階に直行。外から見て、鉄格子が付いている部屋に監禁されていると推測、その通り中から人の気配。鉄製のドアに大振りの南京錠。九璃はICカードをかざした程度の手間で錠を溶断した。
部屋の中は、大部屋の病室の様になっていて左右に3つずつの6人部屋、カーテンで仕切る様になっているが、全部開いて見通し良くなっていた。入院患者のように、グツタリ横になっているのは、四つ角のベッドの4人。頑丈そうな首輪が嵌められ、鎖で繋がれていた。
「助けに来ました。犯人達は拘束済なので安心して下さい。それから、男性5人と聞いていたんですが?」
「多分、一番奥の部屋だと思います。リーダーの部屋の筈です。」
繋がれた鎖は七歌に任せ、リーダーの部屋に向かった。
掛かっていた鍵は、到達前に溶けて、扉は労せず開いた。大きなベッドでいびきをかいていた男性が目を覚ました。
「なんだオマエ等?」
「助けにきました!首謀者は・・・」
「何てことしてくれたんだ!ここじゃ、三食昼寝付きでヤリ放題、極楽ってもんだったんだぜ!余計な事を!」
攫われた被害者には間違いないが、性感覚が逆転した世界から来た人らしく、ハーレム生活をエンジョイしていたようだ。
「えーっとですね、攫われた被害者って事で解放されるのと、ここの一味としてギルドに突き出されるのってどっちが良いです?」
八絵が落ち着いて質問すると、
「ああ、残念だけど元の生活に戻るしか無いか。まあ、よろしく頼む。」
まぁ予想通りの回答、取り敢えず15人を救出した。
いつの間にか別行動だったヨーコは、
「ハイ、これ必要だべさ!」
鍵の束をジャラジャラさせて、捕まっていた皆さんの首輪を外して回った。
ついでにお宝もゲット!の目論見は外れて、価値があるのは回復剤くらい。ヒールでは治らない貧血や栄養失調でスキッとしない皆さんに配って全て消費してしまった。自力で帰れる位にまで回復出来たのでまぁ良しとしておこう。攫われた時の馬車がそのまま保管されていたので、馬車を連ねてギルドに戻った。
ダンジョンの爆弾は、連絡が間に合い、無事に撤去。知らずにいればかなりの犠牲者が出ただろうと、特別表彰の可能性が高いので、しばらく、このギルドを中心に活動することを勧められた。ここからでも攻められる師匠からのミッションもあるので、言われるがままに、勧められた宿に連泊することになった。
ゆったりした宿は、ギルド負担。流石に食費は出ないので、街に繰り出した。爆弾テロを阻止した事が、ダンジョンにいた冒険者達に知れ渡っていたので、アチコチで歓待され、気が付くと居酒屋でご馳走になっていた。僕以外は結構な呑兵衛で、ご機嫌なお姉さん達と夜中まで大騒ぎ。歩行に支障の無いギリギリのところでお暇した。それぞれ個室だったし、皆んな酔っていたので、スキンシップはお預けだった。
翌朝は、ギルドに寄らずダンジョンへ向かう。現地に3泊の予定なのでチェックアウトするつもりだったが、一週間分前払いで支払い済みとのことで、そのまま外出ってカタチで宿を発った。
初日は移動のみ、のんびり出発してダンジョンのキャンプ場で一泊、2日目は最下層まで降りて、3日目は地上に戻ってもう一泊の計画。
予定通りに到着、テントを張って晩ごはん。テントは3張り、2日続けてスキンシップはお預けで、今夜はパスする要素は見当たらない。期待が半分、失敗続きなので不安が半分。いや、七三?八ニ?で不安が強いかな?
先にテントに入っていると、六姫が入って来た。
「今夜からは、一晩交代無しだからね、ゾロのペースで楽しんでね!」
毛布に入って来た時にはいつの間にか、全裸になっていた。ブリーフの中身は反応していなかったので、密着を楽しんで眠りについた。
翌朝は、早くからダンジョンに潜る。ここは、魔法が使えない特殊なダンジョンで、普段魔法メインで戦っている僕らにはかなり厳しい条件だ。ただ中の魔物も物理攻撃のみなので、ハンデはお互い様。
普段のパターンじゃないので、やや苦労しながら降り続けた。身体強化魔法無しでの戦い方に慣れながら、様子を見ながら、無理せずゆっくり。10階層しかないダンジョンを丸一日掛けてクリアした。
最下層には神棚の様な所に、真っ白な珠があった。クリアのご褒美としてポーチに収めると、抑えされていた魔力が復活したことが体感出来た。
「コレって、最下層に来たら毎回貰えるのかな?」
「そんな訳ないっしょ!次の珠ができるまでは2、30年だべさ。」
「っつう事は、2、30年ぶりに攻略したって事?」
戻った魔力で結果を張ってテント泊。同衾は五姫で、昨日と変わらない夜を過ごした。
翌朝、魔物達も魔力が戻り強くなっていると想定し、覚悟して登り始めた。かなり苦戦した9階層のボスは八絵の放った氷の矢、一撃で沈めた。その後も、あっさりと殲滅。どうやらこのダンジョンの魔物は魔力が無いか、極弱なので、他の魔物等から逃げてここに住み着いたらしい。サクサクと片付け、3時間足らずで地上に戻った。
登りも1日を想定していたので、もう一泊の予定だったが、少し遅くはなるが、宿探しの心配も無いので、街に戻る事にした。順調に馬車を飛ばして夕方には宿に着いた。
外に出掛けて、また宴会が始まっても面倒なので、宿の食堂でディナーにした。結構な価格で見た目は高級感に溢れているが、味はそれ程でもない。元の世界のファミレスが懐かしく思えた。いつものキャンプ飯よりは落ち着いて食べれるので、まあ偶には悪くない。
食後はそれぞれの部屋に散ったが、ヨーコは当たり前のように僕の部屋にいた。昨夜とその前の情報は伝わっていて、
「魔法、試してみる?」
「あ、いや、今日はいいかな?」
「じゃあ、お薬は?」
「えっ?持ってるの?」
「お!乗り気ね!」
「いや、止めておくよ。自然に任せていいかな?」
「したっけ、しょうがないな。でも、コレは無しね!」
と、ブリーフを取り上げた。
舌を絡め、肌を合わせると、固くはならないが、幸せは蓄積しているのようで、その部分に異変を感じると、ヨーコもそれを察し、流出させずに受け止め、ジワジワとした残りも吸い取ってくれた。朝の変化もなく、普通にご飯を食べて、ギルドに向かった。
「いらっしゃいませ!精算済んでますよ。」
受付のお兄さんが楽しそうに迎えてくれた。
事件の解決で30万、不明者救出15人で15万。ギルドの危機を救った特別報奨金が25万。ギルドから支払われるのは大した金額ではない、予測通りって言えばそうなんだが、ちょっぴりガッカリ。ただ用意されていたのは他にも。銀と銅のバッジだった。僕がEランクからCに、ヨーコが見習いからD、九璃たちはAー3に二階級特進。金バッジは一旦預けると、15分程で書き換えが完了した。難易度の高い依頼を請ける時や、宿をとる時に便利になりそうだ。
ここからがお楽しみ。爆弾女は奴隷落ち、全財産没収でその8割と、奴隷として売られた分が僕らの取り分になる。子分達は、人質解放のための情報提供があったので、司法取引的な減刑で、奴隷落ちは免れていた。それでも、財産没収と、冒険者ランクがFから再スタート。
6人とも中堅からベテランって感じでかなり稼いでいて、財産の取り分で1億を少し超えていた。爆弾女は150万で売れたそうだ。こちらは嬉しい誤算。すべて返済に充てて、借金は1億を切る事が出来た。
棚ぼたで借金が半分になった、実入りの良いギルドだが、柳の下にいつも泥鰌はいないし、師匠のミッションがまだまだ残っているので、次のダンジョンを目指す事にして、ギルドの職員さん達に別れをコッソリ告げた。送別会とかの騒ぎになるのは御免なので、外野冒険者にはナイショにしてもらう様に頼み込んでギルドを後にした。
宿に戻って、明日発つ事を話すと、先払いで多く貰っている分を、昨日と今日のディナーに充ててくれるとの事で、遠慮なくご馳走になった。昨日とほぼ同じメニューだが、宿代の差額を埋めたいようで、高級(と思われる)ワインを開けてくれた。皆んなは美味しそうに飲んでいたが、僕はやっぱり舐める程度。しかもどちらかと言うと、普段のお手頃ワインの方が若干飲みやすく感じ、安上がりの舌にちょっとガッカリ。
食後は九璃の部屋。ゲームでの設定が反映した技を駆使して、フニャフニャにパワーを注入してくれたが、全く効果なく、密着を味わいながら眠りについた。




