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引越し

 隣り街は20キロ位離れているので、長いトンネルを歩くと覚悟していたが、灯りの魔法を用意しなくても、向こうの出口が見えていた。数十秒で通過、トンネル出ると、倉庫のような建物があり、入ると大きな図面が置いてあった。

「今いる建物がコレっしょ?ココに新しく家建てんだべさ。」

 煉瓦に使う粘土は何処で調達するかとか、木材はどの辺の林が良いとか、細かな指示が図面にメモってあった。持ってきた食料で、当面の間食つなぐ事が出来るので、手分けして家を建てることにした。

 僕とヨーコは基礎工事。指定された部分を1メーターほど掘ると平らな岩盤が現れる。頑丈な地盤を確保した。

 九璃、六姫、五姫、二葉は砂利採取と運搬。河原で砂利を集めて馬橇に積み込み、馬サイズの犬になった二葉が牽いて運ぶ。橇の滑る部分に合わせ線路の様に地面を凍らせて居るので、かなり年季の入った橇でもなんとかなっている。

 八絵、七歌、三葉は粘土採取、煉瓦作り、運搬。粘土を掘っては煉瓦にして、馬橇に積み込む。三葉が牽いて建築現場へ。

 岩盤を平らに削り、図面を写す。魔法陣を書いて、それが隠れない様に砂利を積み上げた。魔力を注ぎ込むと、基礎が出来上がった。

 ここまで丸3日、砂利班も煉瓦班に加わり更に3日で煉瓦が必要数出来上がった、その間に僕とヨーコは木こり作業。必要数伐り倒し、その場で加工、凸凹を無理矢理氷魔法で埋めて橇で運び出した。

「セメントとかの指示は書いていないね、買って来いって事?」

作業が行き止まりになった。元の所から街に降りて買ってこようと、トンネルに向かったが、何度トライしても辿り着けなかった。

「ここの街で買って来るしかないっしょ!」

ヨーコが提案すると、馬の嘶きが聞こえた。

「予想より早いな、うん、しっかり出来ておる。」

セメントとかを満載した荷馬車から師匠が降りて来たて、基礎をチェックしていた。重量物で更に過積載と思われるが、魔法で重量を操作しているようで、荷馬車も馬も平気な様子だった。

「荷降ろしもやって貰えるんですよね?」

手綱を持ったお兄さんが遠慮気味に訪ねて聞いた。

「ああ、勿論。」

視線で『降ろせ』と指示。枕投げくらいの感覚で基礎の内側に積み上げた。

 師匠は、『煉瓦積みを完成させる』というミッションを残して、馬車を送りに山を下りた。


 改めて魔法陣を書いて、魔力注入。前回より広いし、3階建てなので、途中で魔力枯渇が起きかけたが、皆んな交代でサポートしてくれたので、なんとかミッションクリア。クタクタでテントに転がり込んだ。


 翌朝、珍しく寝坊していると、また馬の嘶きが聞こえた。また大荷物の荷馬車で師匠が帰ってきた。今度は荷物の他にオジさんが6人。見るからに職人さん、大工さんだといいな。

「では、早速。」

(見掛け)最年長のオジさんがヒラリと荷馬車から飛び降りると、積んでおいた木材をチェック、軽く頷いて、ほかの三人に指示を出していた。

 昼には屋根が、夕方には内装が出来上がった。職人さん達を送って、師匠はまた山を下りた。今日はミッション無しだったので、ポーチから家具や荷物を出して、引越らしいことをして、それぞれの部屋で夜を過ごした。


 新しい部屋は前よりかなり広く、仕切りは無いが、ベッドのスペースと机とか置けるスペースが確保されている、ベッドには当たり前の様にヨーコがいて、スッカリ慣れて緊張もドキドキも無く隣りで眠る。今夜も右手を引っ張られお誘い(・・・)されたが、摘まずに柔らかさを堪能させて貰った。ん?アパートのシングルより広いので余裕の筈が、重さは然程無いが、ヨーコの寝返りじゃない重さを感じた。手探りで確かめようとすると、

「もう朝?」

寝惚けた三葉だった。足元には二葉もいて満員状態。犬の時は床に毛布をしいて寝ていたけど、毛皮が無くなっちゃったたので、布団が必要らしい。僕が街にいた時、このベッド使っていたのかな?三葉もまた眠ったようだし、そのまま絡み合って眠ることにした。


 朝日に起こされて、クリンチを解く。そっと剥がしたが、結果3人とも起こしてしまった。元々あった倉庫風の建物から水を汲んで朝食の仕度。キッチンの裏が掘り起こしたままなので、水を引く予定の筈、師匠が来たらここを優先するよう頼んでみよう。

 朝食が出来る前に皆んな起きて来た。寮でスタンダードだったという長めのTシャツ1枚下はチラっと見えた時、穿いているのが判ったが、上は先端部がクッキリ浮かび上がっていた。恥ずかしそうな様子は無いので、やはりコッチの世界モードの性欲なのかもしれない。なんとなく、アッチの世界モードになりかけた頃、馬の嘶きで正気に戻った。

 師匠はまた馬車で登場。別の職人さんと、またまたの大荷物。窓やドア、棚なんかの様だ。サクっとと取付けて昼には終了、師匠と一緒に職人さんを送る事になった。


 凸凹の道は、普通に歩くのも大変な位で、到底馬車なんて通れない筈だが、通る所だけ魔法で埋めて凸凹を軽減している様だ。壊れた橋をその時だけ補強したりして3時間かけて麓に下りた。

 下りた所には小さな家があり、職人さんはそこからは自力で帰っていった。小さな家は師匠のモノらしく、魔法で解錠して中に入った。

「幾ら持ってる?」

「50万です。」

「うん、足りるな。出掛けるぞ。」

古着屋に行って、小綺麗な洋服に着替え、商店街を散策。食料を買い込んで、外れにある石材とかを扱う店で土管を購入。水源から水を引くそうだ。ポーチに入れて徒歩で戻った。

 師匠の家は住宅街の外れからちょっと隔たりがあるけど、まぁ住宅街と言っても良いくらい、思ったより普通に暮らしているようで面白く思えた、笑いを堪えていると、

「儂の家が普通で可笑しいか?」

バレバレだった。


 帰りは歩いて登る。前の山より高さは無いが、途中、自然の障害物で迂回を強いられる所や、壊れたままの橋が1つ、路肩が崩落した道路が2箇所。

「ココに橋をかけて、コッチからトンネルを掘れば、半分も掛からなくなるんじゃ、頼んだぞ。」

少し登ると、一旦橋を渡って対岸に行って直ぐにまた橋で戻って来る所があり、橋は壊れている。

「橋を直すのも良いが、ココを貫通させたほうが、後々便利じゃな。」

登山道の不具合部分を説明するように家まで歩いた。


 さて水回り。システムっていうか仕組みは前と一緒で湧き水を直で使ったのと、土管で引くのの違いだけ。倉庫風の建物迄既に引いてあるので、10メーター程の工事だけで、水汲みから解放される事が叶った。トイレも、元々垂れ流していた沢に土管で流すようにして、引っ越し前の文化的水準を回復出来た。


 普通に歩いて2時間弱、橋とトンネルで半分として1時間。きちんと整備すれば、馬車も登って来られるのでかなり便利になりそうだ。早速計画をメモに書いて、皆んなに相談した。

 これから街に出る事も想定すると上まで馬車で登れるのはありがたい。師匠の魔法のお陰だけど、不可能ではないので試しに橋で迂回する岩壁をブチ抜いてみる事にした。

 身体強化した腕力で、風魔法を纏わせたツルハシを振るう。サクっと掘り進み5メーター程で貫通した。馬車でも通れる様に大きく掘り広げ、出て来た土砂は、路肩の補強に使う。師匠が馬車を通す時に、かなりの魔力を消費したはずの所がすんなり通れる様になった。

 その勢いで飛び出た岩を削って、凹みを埋める。キレイになると楽しくなって、日没迄ツルハシを振るった。

 翌日も朝から道路工事。手分けして整備して橋とトンネルを作る地点迄しっかり整備出来た。橋を架ける高さとトンネルと出入口、その前後の道と高さを調整してトンネルを掘った。昨日の倍位掘らなきゃならないが、昨日は全部が岩だったけど、今日は土の部分もあるので、そんなに苦労せずに貫通した。馬車対応に掘り広げ、土砂は高さ調整に丁度良かった。地面を均したり、トンネルの壁を補強したりして、日没を迎えた。


「ゾロ、お風呂沸いてるよ。先に入ったらいいっしょ。」

ザッと洗って浴槽でノビノビ。大勢なので長湯は迷惑かな?早めに上がるつもりが、六姫と五姫が入ってきた。背中を流し、畑の水遣りで覚えた雨魔法をアレンジしてシャワーにして、シャンプーを手伝った。2人の髪をタオルで包んでいると、八絵が入ってきて、同じように背中と髪。九璃、七歌と続いた。これで皆んなかな?と思ったら二葉と三葉も入って来た。2人を洗い終わるとまた扉が開いた、ヨーコが来て今度こそコンプリートと思ったら、師匠だった。洗い終わって浴槽でノンビリ。

「風呂も良いもんだな、浄化魔法のほうが手っ取り早いが、こうしているのも悪くないのう。娘達も風呂が好きなようじゃのう、お主の郷の人々は皆んなそうなのか?」

「そうですね、好きな人が多いと思いますよ、身体洗うってより、疲れを取ったりするほうを楽しんでいると思います。」

「ウチも、洗ってくれる?」

ヨーコの背中を流していると、

「そう言えば、まだ摘んでないんだって?」

「こ、子供が気にすることじや無いですよ!」

「ふん、お主の何倍も生きておるわ!娘達も、ヨーコに最初を譲ると申しておったぞ、娘達はどうやらアッチの世界の感覚の様でな、コッチの感覚のヨーコの方が最初を喜ぶと考えてるのだろう。ワンコ達は儂の所で預かってやるぞ。」

そう言い残して師匠は、上がっていった。

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