病の奥にひそむもの
夫に聞くと、どこかで拾って来たんじゃないかな?との事。
風邪が簡単に肺炎になり、レントゲンを白くした。
それを見た時の感情は多分恐怖だった。
北の地に来て初めての冬の事。
風邪から肺炎になり、それが長引いている。
朝も晩も喉を削るように出る咳が苦しく、少しは腹の脂肪が引っ込んでくれたのではないだろうか。と思うほど咳き込む日が続いていた。
ある晩、夫が背を向けて咳き込んでいる私の首の後ろを視た。
夫曰く「なんだか気になったから、少し開けて視たんだよね」と言っていた。
「開けた?」
「うん。開けた」
・・・説明になっていない。
視ると、小鬼が巣くっていた。
ああ、これが悪さをして肺炎が治らないんだな。と分かり、小鬼を一匹ずつ引きはがして食べた。
小鬼は全部で5,6匹居たそうで、それを全部摘まんで引きはがしては食べたという。
夢うつつだったが、首の後ろを軽く摘ままれた時に、髪の毛が一本引かれるようなツーッと引っ張られてプチンと切れる感触はあった。
髪の毛を抜かれるほどの痛みではない微かな痛みだった。
その感触がなくなった時に、夫に向き直り
「何かしましたか?」
と聞くと、その様な答えが返ってきた。
「食べても大丈夫なんですか?」
と心配すると
「俺の火で消しちゃうから大丈夫」
「どんな味がするんですか?」
「土みたいな感じかなぁ」
だそう。
そうかぁ。鬼は土の味がするのか。
五行の相克で考えると、土は水を吸う=土は喉の水分を(うるおい)を枯らしてしまい炎症を長引かせる。 それが小鬼だった。
相性で考えると火と土は隣りあわせ。火が燃えて土になる。相性を逆にして土を火で焼いて五行の流れを断ち切った。
という事なのだろうか。
五行の事は簡単な知識しかないから、適当な解釈ではあるが。
病は全てそうなのかとも思ったが、それは違う。
私も夫も病気が盛りだくさんである。
片眼が見えない夫に思う。あやかしのせいであって欲しかった。
そうすれば気付けば、あやかしを消せば視力が戻っただろう。
結局、この世では不自由な身体で生きていくしかないのだ。