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徒然と  作者: くろたえ
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霊感と幻視


 夫は若年性アルツハイマーだと言われている。


 とりあえずは、絵を描いて日々情報をインプットして脳の細胞の活性化を頑張っている。

アルツハイマーの初期の症状として、幻聴、幻覚、幻視の症状が出るそうだ。


 アルツハイマーの進行を抑えるのは、適切な治療と運動である。


 夫と定期的にジムに行っていた。

施設内でジャージに着替えて、準備運動をする部屋で二人で身体を解していた。

 竹踏みのようなもので、足の裏を伸ばしていた時だ。


なんとなく窓の外を見ていた。

夫が言った。


「ねえ。あそこの建物の屋上にお婆さんが居ない?」


 夕暮れの中に静かに雨が降っている。目の前の建物は通りを挟んですぐ前にある。

こちらはビルの5F。向こうは3Fの建物。屋上もよく見える。屋上にはエアコンの室外機が見えるだけ。


「見えませんよ」


「そうかー。俺にはお婆さんが、ぴょんぴょん跳ねているように見えるんだけれど」


 ゾゾゾ……背筋が冷えた。


 そして、これは霊感なのか、それともアルツハイマーの症状進んでいるのだろうか。


 どちらにしても薄ら寒くなるが、その時だけは怖がりな私であるが幽霊であってほしいと願った。


 霊感のある人間の脳の老衰というものは、いったいどういうものなのだろう。

これから、私は夫から何を見て感じるのだろうか。

その後、夫の脳は多少の機能を落としたが、激しく脳を酷使することで、新しい脳を作っている。

あれから5年は経っているので、進行の早い若年性アルツハイマーではなく薬による副作用で、機能が著しく落ちたのだと考えている。

とはいえ、夫がアルツハイマーを発症しているのは事実なようだ。


砂が崩れるように短期記憶が消えていく恐怖に私は笑顔の裏で慄いている。

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― 新着の感想 ―
[一言] アルツハイマーはご本人にとっても周囲にとっても恐怖ですね。ご心労お察しします。 霊感というのはきっと、ご主人の芸術的才能のあらわれだろうとも思いますが、ともかくも病気のほうは進行しませんよう…
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