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徒然と  作者: くろたえ
11/15

黒い家

結婚と同時に本籍を移した。

その本籍にある家をどうしても思い出せない。

 関東の少し田舎に私の本籍があった。

結婚と同時に本籍から抜いた。

何も思い入れもない。家族の名前に住所だ。


 私は10歳まで祖父母宅で過ごしたが、その間の何か月か、何回も本籍の在った場所で暮らしたという。

両親と兄と姉が住んでいた。

私だけ祖父母の家に住んでいた。


 祖父母の入院などで、あちらこちら親戚の間で暮らした覚えがあるが、この家もその中の一つだろう。

 

 少し離れた場所は一面の田んぼだったので、かなり田舎だろう。

庭などは少し覚えている。大きな敷地に従業員用の小さな建物。明るい庭は半分が駐車場に使われていて、重機などが駐車していた。

反対側には庭木があり下には芝桜があった。パンジーなど色鮮やかな小さな花も咲いていた気がする。


私は今、家を背に庭を思い出している。


 振り返る。

家の外観は覚えていない。ぼんやりとドアを思い出す。木だったと思う。右側に金木犀の木があり、イラガの毛虫の毛が触れて痛い思いをした。


ドアを開ける。


 中は真っ暗だ。

眩しい昼間に急に暗い場所を見たようだ。

家の中が真っ暗だ。

間取りも、ご飯を食べていたのはキッチンかリビングか。

どこで寝ていたのだろう。


私はもともと子供の頃の記憶は少ないが、合わせたら一年くらい居たと聞く、この家が全く思い出せない。


私は闇を心を凍らせて睨んでいる。

中身がそこから出て、何かを思い出そうとするのを止めているのかもしれない。


燦燦と日のさす庭に一軒の家がある。

その輪郭はぼやけている。


ドアが開くと、ただ真っ黒な闇が広がっている。



親戚の家にいた時の家はだいたい覚えている。

寝た場所は縁側の廊下だったり、キッチンだったり、誰かの使わなくなった部屋だったりした。


しかし、「実家」とされる家の間取りや内装、そこでの生活などが、全く思い出せない。


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― 新着の感想 ―
[一言] 思い出せない、それには何か理由があるのかもしれませんね 無理に思い出す必要はないのかもしれません 深い理由があるのかも……
[一言] そういうことって、ありますよね。 無理に思い出そうとしなくてもいいようにも、思います。
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