私がパンイチ裸族をやめたわけ
●私は部屋ではパンイチ裸族だった。
ひとり暮らしの部屋に帰れば、家にたどり着いた安心感で開放的になるのを止められなかった。
「ただいまー」
ひとりでも部屋に戻ったら、「ただいま」を言う。
「ただいま」も「行ってきます」も気持ちの入れ替えスイッチだ。
靴を脱ぐと同時に靴下を脱いでいることが多い。
子供の頃は裸足で生活をしていた。
足の指でじゃんけん出来るのを皆が驚く。
今は違うが、冬以外は下駄を履いていた時期もあったな。裸足でも歩いている時は暖かいのだ。
職場でも下駄で行ったら、ロビーに音が響いて煩いと言われた。確かに。
まあ、そんな感じで、足先から顔まで「開放!」と叫ぶのだ。
靴下を脱いで服を脱いでブラも外して顔を洗って、やっとホッとする。
そんなパンイチ生活を脅かす存在が在った。
ある日のシャワー上がりに、横になりテレビを見ながらウトウトとしていたかもしれない。
そこに、裸の肩に誰かの手が置かれ、指先で強くつかみながら、ゆさゆさと揺さぶられた。
「っはあっ」
慌てて目覚めた。
背後を見るも誰も居ない。
しかし、具体的に感触が残っている。
親指は後、前に四本の指を喰い込ませるように肩を掴んでゆすられた。
見られた。パンイチを見られた。なのに、私は視えない。
幽霊が有利?
何の勝負だ。とりあえず、Tシャツを着た。
その部屋は事故物件だった。それが理由かな?
◆引っ越した。
私はパンイチ裸族に戻っていた。
ある日、疲れて帰ってきて、さっさとパンイチになり座椅子に座った。
「ヴァーーーン。疲れたよーーーう」
などとほざいては、グダグダしていた。少し眠ってしまったかもしれない。
座椅子の背に頭を乗せて伸びている。
そこをスナップを利かせた手でスパーンとデコをひっぱたかれた。
えーーーーーー⁈
私はもそもそとTシャツを着た。
鏡で見た額は赤くなっていた。
誰も居ないから裸族なんじゃん!誰か居るなら裸族になれないじゃないかーーーっ!
見えないから私に分が悪い。
なのでパンイチ裸族は強制的に卒業する羽目になった。
しかし、今でも真っ先に靴下を脱ぐのはやめられない。
この間、夫の留守にパンイチをしてみた。
秘密は蜜の味。この、解・放・感!&背・徳・感!
猫の女の子と目が合った。結構理知的な瞳をしていると思った。
「良いの?」と猫に諭された気分になった。
私はやっぱりもそもそとTシャツを着た。